第一話
どうも、初めして。今回初めて投稿させていただきます、フェリと申します。正直言ってど素人なので、基礎的なことからなんでもアドバイスをもらえるとうれしいです!
「やぁっと見つけた。あんたらだな?アデラ商店の荷馬車を襲って、荷を奪ったやつらは?」
「あ?なんだてめぇは…」
逆立った赤髪に赤い瞳を持つ少年は、ようやくという表情で、荷物の整理をしている大人3人のもとへと歩み寄る。
「俺は名前はガイナール。おめぇらに奪われた荷物をとりかえしてくれって依頼でここにきた」
「ほぉ?当然俺らは返すつもりなんてないわけだが…そんな依頼を受けちまったあんたぁどうすんだ?」
「いい話がある。荷物を置いてさっさとうちへ帰りな、そしたら手は出さねぇでやるよ」
3人の大人の前に物怖じせず、挑発してくるガイナールにリーダーらしき人物がニヤニヤしながら近づく。
「なんつった?ガキ。俺にはボコボコに殴ってくださいって聞こえたんだが間違いはねぇよな?」
「リーダー、あんま遊んでないで急いでくださいよ?さっさとこれ運んじまわないと」
「わぁってるよ、5分もかかんねぇさ」
大人たちの話を聞きガイナールはつぶやく。
「交渉決裂か、じゃあしょうがねぇな…」
「お主、もとより交渉する気などなかったろうに、何を言っておるか」
少年のつぶやきに、楽しそうな女の声で返事が返る。
ただし周囲に他の人影はない。
強盗のリーダーは、聞こえていなかったようで気にする様子もなくガイナールの目の前に立つ。
「分相応な依頼なんてうけっからこうなる、これからは反省するんだな」
強盗のリーダーは下卑た笑みを浮かべ、そして思いっきりガイナールの顔面に殴りかかる。
そのまま顔面を砕かれ吹き飛ぶことを、ここにいるすべての者が確信していた。
ただ1人、ガイナールを除いて。
「分相応なことをしましたって反省すんのはお前らだろう?」
「なっ!?」
ガイナールは大人の本気の拳を、手首をつかむことで止めていた。
「こいつ…魔法使いか!」
魔法。そうこの世界には、魔法というものがある。
誰でも使えるものだが、日常生活がほんの少し便利になるかならないか、その程度のものだ。
だが一部の適正があるものは、大規模な魔法を使うことができる。
それが魔法使いと呼ばれる存在。
突然火柱を起こしたり、魔物を召喚したり、肉体を強化したり、できることは千差万別だ。
「そういうこった、お前らもこんなことするからには使えんだろ?ほら、始めようぜ。魔法使い同士の戦いを!」
今までで一番楽しそうな笑みを張り付けながら、ガイナールは叫ぶ。
「くそ!このガキ…!おい、お前らも加勢しろ!!」
「了解!」
下っ端二人も荷物の整理を放り投げ、加勢に加わる。
「くそっ!ガキのくせして…!!」
リーダーは魔法で肉体を強化し、掴まれていた腕を払うと同時に後ろに跳び距離をとる。
「おら!くらえ!!」
リーダーが離れたのを確認し、両手をガイナールに向けてかざす。
そして下っ端二人が手のひらに魔法陣が展開されると同時に、電撃が放たれる。
が、直撃する瞬間ガイナールは跳躍してこれをかわす。
「ほら、しっかり狙わねぇとあたんねぇぞ!」
「ちょこまかとぉ!」
下っ端二人は、再び交互に電撃を放ち空中に弾幕をはる。
空中での回避行動は不可能…今度こそ直撃を確信した下っ端二人の考えを、ガイナールは再び裏切る。
「こんなゴミみたいな威力じゃとおらねぇぜ?」
電撃はガイナールの周囲の見えない壁にはじかれるように、ガイナールを避けていく。
「魔力障壁!?」
「リーダー、これはやべぇですぜ!魔力障壁なんか使えるってこたぁこのガキ相当高位の魔法使い…」
電撃の嵐をはじきながら、ガイナールは着地する。
「ほれ、主よ!遊んでないでさっさと終わらせぬか!」
再びさっきの女の声。
今度は強盗達にも聞こえたのか、突然の声に不審がる。
「なんだ!?もう一人いんのか!?」
「ははっその答えは今見せてやるよ!!」
ガイナールはそう叫ぶと同時に、右手首を左手で抑え真上に掲げる。
「魔装起動!!」
「精霊武器サラマンド、相わかった。主の言葉にこたえよう!」
言い終わると同時に、ガイナールの両手両足が炎に包まれる。
爆発するように炎が霧散すると、そこには両手両足を装甲に包まれたガイナールが立っていた。
「あいつ今…精霊武器って…」
「精霊武器…だと…」
この世界には、精霊という魔力の集合体のような生き物がいる。
強力な力を持ってはいるが、人間に敵意がなくコミュニケーションもとることができる。
もとより個体数が極端に少ないのだが、その中でもさらに稀な存在として人間の使う武器の形状に変化できる精霊がいる。
それが精霊武器、もしくは武器精霊と呼ばれる存在。
20年前の大陸戦争で、圧倒的な力を見せた武器。
その戦争の影響で精霊にとっての魔力環境が大きく変わり、今はある程度力を弱めてはいるが強盗達をを恐怖させるには十分すぎる代物だった。
「あ、あんなガキがそんなもんを持ってるはずがねぁ!」
「で、でもリーダー!確かにさっきあいつ一人しかいないのに女の声が!!あれは精霊の声なんじゃ…」
「相手はガキ一人だぞ!それにこの荷をどうするつもりだ!!大人しく牢屋にいけってのか!?俺はそんなのは死んでもゴメンだぜ!」
半ば逆上しながら、リーダーが叫ぶ。
「おらガキがぁぁ!!さっさとそこをどきやがれぇぇ!!」
魔力によって圧縮していた大剣を復元し、ガイナールに向かって一直線に突っ込
む。
「やれやれ…大の大人がこんなことで取り乱しちゃってさ…」
つぶやくと同時に、両足の装甲が激しい炎を噴射する。
ローラースケート…というにはあまりにも粗々しく、尖った軌道。
強盗のリーダーの何倍もの速度で、ガイナールは懐に入り込む。
「死んでもゴメンだったか?ほんとに死んじまうかもしんねぇぜ…。しっかり受け止めろよ」
ガイナールの拳の動きに合わせて、拳の装甲からもブースターのように炎が噴射される。
あまりの火力にガイナールの拳は炎に包まれる、まるで火山弾のような一撃。
本当にそれに匹敵する可能性すらある速度から繰り出される拳。
「っ!?」
声を上げる暇すらない。
それも当然だ。
これはガイナールが動きを見せてから、2秒程度の出来事なのだから。
そのままガイナールは、相手の腹に拳を叩きこむ…瞬間に軌道をそらし、リーダーの腹部すれすれに外す。
その風圧だけでリーダーは、下っ端のいる位置の後方まで吹き飛ばされる。
「おら、そこの二人ももう抵抗すんなよ。盗んだ荷物とそこに転がってるリーダー持って、俺についてこい」
目の前で、あれだけのことを見せられたのだ。
脅しとしては十分以上。強盗達に従わないという選択肢は与えられなかった。
「おい我が主!無茶はするなと言っておろう!」
依頼主に荷を届け、強盗達も役所に引き渡し、やれやれと思っていると隣から怒声がとんできた。
「あ?なんも無茶なんてしてなかったろうだろうがよぉ」
そもそも、今回の仕事はかなり楽な仕事だ。
ガイナールからすれば、無理しなければいけない事態がまず起こっていない。
「強盗達のリーダーに、一瞬本気で殴り掛かったろうが!殺してしまったらどうするつもりじゃ!」
隣で口うるさく説教をしているのは、ガイナールの武器精霊サラマンド。
今は武器の姿から、人に似た精霊の姿に戻っている。
人と違うところは、薄い羽が生えていることと耳が少し長いことくらいだろうか?
髪はガイナールと同じ燃えるような赤、とても長く腰のあたりまである。
「うるせぇなサラ。ちゃんと外したろうがよぉ、あぁしたほうが連中も言うこと聞くんだって」
「だからと言って限度があろう!」
「解決したんだからいいだろ?いつまでも怒鳴ってっと小じわができるぞ」
「精霊の私にそんな心配は不要じゃな、まぁ今回はよしとしよう。だが次回からは慎め」
どうにか気は収まったらしい。
サラマンドの精霊としての力にはまったく不満はないし、信頼もしているが変なところでまじめなところは、ガイナールの悩みの種だ。
「ほら、んなことよりギルドに着いたぜ」
「ふむ。なんだかんだで疲れたからの。早く部屋に戻って休むとしよう。」
ガイナールが帰っていた先は、自分の家ではない。
ギルド"キャッツハウス"。
ガイナールはここの一室に住み、そして働いている。
高度な魔法を使える者と使えぬ者。
その格差は、どうしても力ずくの犯罪を生んでしまう。
その結果作られたのが、対魔法使い犯罪組織ギルド"キャッツハウス"。
正確に言えば、もともと私営でやっていたここを、困りはてた警察が頼ったのが始まりらしい。
その犯罪解決ぶりを評価され、私営から公営に。
警察と俺たちギルドの二柱で、犯罪に対抗することになったのだ。
ガイナールがここに住んでいる理由は簡単。
本当はどこかで下宿するつもりだったが、マスターにギルドでも部屋を貸しているので、こっちを使えばいいと言われたからだ。
「帰ったぞ」
ガイナールが扉を開け、中に入ると受付のメイシェンが迎え入れてくれた。
「お疲れ様、ガイナール。早かったのね。報告書はいつものとこに出しておいてね」
「おう、わかった」
最低限の挨拶をすませ、予め書き終えていた報告書を提出する。
ベッドで休むため部屋に戻ろうとすると、後ろから声をかけられる。
「ちょっとガイ!待ちなさいよ!!」
「あ?なんだ?リーシャか」
声をかけてきたのは、緑色の髪をポニーテールにまとめた少女。
同じチームのリーシャだった。
ギルドでは、複数の人手が必要な任務もある。
そんな依頼に、毎回急造のメンバーで挑むのは効率的にもよくない。
そこで3人以上のギルド内メンバーで、実力がある程度同じもの同士で組まれているのがチームと呼ばれるものだ。
もちろん、今回のように1人でも達成可能な任務も多くいつでも同じ任務をというわけではないが、当然一緒に仕事をする機会は多い。
「なんだって失礼ね。一昨日も言ったでしょ、明日チームのほうに申請があった任務があるから説明だけさせてって」
「あー言われたような気もすんなぁ…。わかった、さっさと済ませちまおうや。こちとら疲れてんだ」
「こっちは散々待たされたってのにあんたはねぇ…」
仕事自体は簡単だったが、移動距離が結構のものだったのでガイナールも明日に備えて早く休んでおきたかった。
「まぁいいわ、今回の任務は最近活動が活発になってる闇商会の一部への突入捜査よ」
「捜査ったってどうせ法に触れてることはもうわかってて、相手の魔法使いが身
構えてんのもわかってんだろ?いつも通り歯向かってくるくるやつ全部ブッ飛ばしちまえば任務達成だ」
「そりゃそうだけど、正義の味方の私たちが今から市民をブッ飛ばしに行きますなんて言えないでしょ?まぁそうね、いつも通りよ」
「んで相手の規模は?何人いようが構いはしねぇが…チームで行くほどなのか?」
規模というのは、魔法使いの総力量のことだ。
何人いようが魔法使いがいなければ、1人で制圧可能だしさっきの強盗程度ならチームでわざわざ出向く必要はない。
「そうね、憶測の域を出ないけれど人数は10人いるかいないかってとこね」
「なんだ?よほどの手だれでも混ざってんのか?そのくらいなら別チームに回せよ」
衰えてなお強大な力を持つ精霊武器。
それを持つガイナールの所属するチームは、当然他のメンバーも相当の実力者だ。
ギルド内でも上から三本の指に入ると言われているチームだ。
ちなみにガイナールのチームは、全員で4人。
平均的な魔法使い10人なら、一瞬で制圧してしまうが…。
「そうね、その辺は少し事情があってね。この任務が正式に受理される直前にとある情報が入ってね。」
「情報?」
「そう。噂程度の信憑性しかないんだけど、今回狙うアジトに高値の荷が運び込まれるらしくてね。その荷物と一緒に手練の用心棒も来ている可能性がでてきたのよ」
「へぇ用心棒ねぇ…」
実際、よくある話ではある。
小規模のアジトだとたかをくくって突入したら裏のお偉いさんが来ている日で、そのお偉いさんの連れてきた用心棒にやられてギルドメンバーが命を落としかけたなんて話も聞いたことがある。
「ハズレを引いたらつまんねぇ仕事になるってことだな。で、ほかにもなんかあんのか?」
「こんなものかしらね、もっと詳しいことは移動中に話せばいいし…。よろしい、行ってよし!」
「へいへい、どうも我がリーダーさん」
ちなみにリーシャは、ガイナールのチームのリーダーだ。
一番強い…というよりは他の面子では性格的にリーダーが務まらなかったというのが大きい。
部屋に戻り、明日の任務のことを考える。
「正直つまんなくなりそうだな…」
最近地味な任務が多い。
ガイナールは、正義のためというよりは戦うためにこの仕事をしている節があるため、不満気味である。
「まぁまぁ我が主よ。リーシャも言っていたではないか。場合によっては激しい戦闘になるぞ」
「可能性的には五分五分だろ?そう信じるしかねぇか」
「私としては主とは違う可能性を願うがね。」
「へいへい、ほら疲れたんだろ?さっさと休めよ」
「言われるまでもないわ、ではおやすみ我が主」
姿の見えないサラマンドとの会話を終え、ガイナールは電気を消す。
武器精霊は計3種の姿をとれる。
1つは武器の姿、もう1つは精霊の姿、そして最後に契約者の周りに滞空しているらしい不可視の姿。
不可視状態の時は、基本的に契約者の近くを離れられないらしい。
「明日は早いかんな、俺ももう寝ちまうか」
そう言い、ガイナールは目をつぶりベッドに身を任せた。
どうでしたでしょうか?第六話までは書き溜めてあるものがあるので、連続投稿するつもりです。なのでしっかりしたあとがきの方はそちらでさせていただきます(書くことないとかじゃないよ^q^)。