○遅れた腕時計○
〇舞夏side〇
5時間目はなんだったっけ。と考えつつ教室へ向かう。
皆でバタバタと屋上から4階に繋がる階段を降りて3階まで降りてきた。
被服室、調理室と続く長い廊下を見据えて走る。
カツカツ....バタバタ....
騒がしい私たちの足音が廊下に響く。
皆以外に居ない制で声が木霊しやすい。
私は喉が乾燥しててうまく声が今は出ないけど....!
「ほら、舞夏!前向....!」
という、愛沙の声と共に、『ドン』と言った重い音がして立ち止まる。
目の前には....学校にこんな体付きのいい人居たっけ?と聴きたくなるような大柄な人がいた。
「す、すいませんでしたー!!」
グキッと90度....直角に曲げられた。
あ....頭ァァァァァァァァァァア!!いたっ!痛いィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!!
なんて、思いながらも、
「あ、えっとごめんなさい!」
釣られ謝る。
その人はニコッと一度笑い目的の場へ歩いていった。
「あー、あぶねぇ....」と声がして、ふと見たら....そこには。
「んと!お前ら、遅刻だぞ!何考えてんだよ!!」
ちょっと口調が見た目と合わない、美久先生。理科担当の人。
ガミガミと怒鳴る美久先生....その後ろには美久先生の弟で国語担当の衣久先生。
「とりあえず、入りましょうか。あと5分あります」
「ちょっと!!衣久!優しすぎよ!ちょっとはきび....」
「すいません。でもね、姉さん。早く教科書取りに行ったほうがいいですよ」
と、衣久先生が美久先生の手元をさした。
そこには、名簿すらなかった。
「あの、衣久先生....?」
飛悟が口を開く。その指は衣久先生の腕時計を指していた。
1:25。教室のまえの壁掛け時計は1:30....
それは、かなり遅れていることは確かだった。
また、皆で走る事にした。