[一話]目覚め
「え~、ですから、この、エンドレスラインの全体使用電力の、六十パーセントを発電しているのが、中央密集地区第一工業区のハル工業地帯にある、反重力発電所で、その次に発電量が多いのは、南密集地区第七工業区ガティノー工業地帯の地熱発電所………」
毎日のどこで役に立つかわからない授業……
大人は、今やっておけば将来、楽が出来るという。
だが、楽しくないものは、楽しくない。
それより、どうなるか分からない将来より、今は、眠い…………。
そんなことを思いながら、俺は、手触りの悪い合成プラでできた机にうつぶせている。
「カンナギ! なんだその姿勢は! しっかり話を聞かんか!」
「…は~い」
それほど広くない教室に、公民兼、地理兼、歴史という社会全般を受け持つ、中年男性教師の怒声と、成績最悪、勉強意欲なしの、俺の気の抜けた返事が交差した。
「そんな奴だから、お前はいつまでも落ちこぼれなんだ! まったく……。続きを話すぞ。最大の発電量を誇る、中央反重力発電所は、最高行政区ができると同時に建設されており………」
一言、悪態をついた中年教師は、また、俺より前に座っている生徒に対して、授業を再開した。
俺の、曾爺ちゃん、曾婆ちゃんの世代ではどうだったか知らないが、今、現在となっては、勉強というものは、政治家、研究者を目指す者にしか必要はなく、常に働き口がある、安定で平凡な、生産者を目指す俺にとって勉強は、ただ形式だけの無用の長物だった。
義務教育じゃなかったら、こんなもの休んでやるのに……。
第一に、なぜ特進クラスに入ったのだろう……?
そう変えられない、変わらない過去を思った。
時計を見た。
授業終了まで、あと、二十分か……。
そう思い、研究者、政治家の卵達に囲まれながら、もう一度、眠りについた。