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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり〜悲恋の掌握者、ディシアは自分の足で歩いていく〜スピンオフ短編

作者: 雪白ましろ
掲載日:2026/07/26

この作品は『亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~』の作中に登場する、ディシア・オルテンシアの幼少期に起こった短編になります。

どうぞお楽しみ下さい。

「夢じゃ、ないんだ……」


 最悪の気分で目を覚ます。

 私、ディシア・オルテンシアは何でもできる天才児だ――そのはずだった。

 それなのに私は今、世界が終わる寸前にいるような、ぐるぐると散らかった思考をまとめられない朝を迎えていた。


「……はぁ」


 視線の先には愛しの人からの、大切な手紙が机の上に無造作に置かれている。目に涙が滲み、大粒の涙が思い出したように溢れた。


「どうして、私の思いは届かなかったのでしょうか? どうして……どうして、どうして! どうしてぇええ!!! うっ、あぁぁぁあああ……!!!」


 思い出すのは大切なあの人、ライル家次期当主――ライル・ライゼンバッハと過ごした大切な日々。その色褪せない鮮明な記憶が、逆に私の胸を締め付けた。


『また次がある。あなたは秀でた加護を持っているのだから。気持ちを切り替えるべきです』


 家庭教師からの言葉は、まるで切り裂き魔のような鋭い刃物でズタズタに私の心を切り刻んだ。


「そんなの、できるならやってますよ……!! やり方を知っているなら教えて下さいよ!! お願い、お願いだから……!」


 ベッドから鉛のように重い身体を無理矢理に動かすが、何日も飲まず食わずで限界を迎えていた。


 ――行かなければ……こんなところで引きこもっていては、私は本当の意味で終わってしまうから。


 ◇◇◇◇


 ――研究国家ヨルダルク。

 この国が腐っているのは、口にしなくても全ての民が知っている。


 そんな腐っている中でも、一つだけ私の心を落ち着けてくれる場所があった。

 家の中にある中庭だ。

 この中庭には様々な花が庭師によって丁寧に手入れがされ、鼻を抜けてくる仄かな花の香りは、強張った身体を緩めてくれる。


 そんな中、私に声をかけてきた少年が一人、一輪の花を持って現れた。

 大方、中庭に咲いていた花を摘んできたのだろう。見つかれば間違いなく叱られる。それでも、心配して持ってきてくれたこの少年の気遣いを、私は無下にできなかった。


「シアちゃん! ずっと部屋から出てこなかったって父様が言ってたけど、もう大丈夫なの?」


「……お気遣いありがとうございます。いえ、私は少しだけ外の空気が吸いたくなったので、ここに来ただけです」


「そっか……!」


 それからは声をかけてきた少年レクトは、私がしゃがんで虚空を見つめている中でも、ただずっと傍にいて離れなかった。


「どうして、何も聞かないんですか……?」


「だってシアちゃん、とっても辛そうな顔をしていたから……こういう時、なんて声をかけていいか、わからなくて」


「そうですか。ですが、そろそろ私も行かなければなりません。このお礼はいつか」


「ううん、お礼を言われるようなことはしていないよ。でもね、ちゃんとご飯を食べて、ちゃんと寝て、そしたら元気になるって父様が言ってたよ!! だからシアちゃん、早く元気になってね!!」


「……」


 無邪気な笑みを向けられても返答すらせず、困ったような表情しか返せなかった私には、今は眩しすぎた。


 私はこの時まだ知らなかった。

 既に運命の歯車が動き始めていたことに。


 ◇◇◇◇


「レクトさん、今日もいらしたのですね」


「うん、ここに来ればシアちゃんと会えると思って!」


 前に会ってから私はしばらくこの中庭には足を運んでいなかった。それなのに、今日また会うということは、レクトはあれから毎日ここへ通っていたのだろうか。


「何か用ですか?」


「ううん。特に用はないかな。でも、シアちゃんが元気になれるかもしれないお話を持ってきたんだ!」


「……なんですか、それは」


「魔力揮発剤っていう、魔力がかくさん? するやつだって、父様は言ってたよ! 僕もよくわからないけど、これを使えば魔物が出てこなくなるんだって!」


「……魔力揮発剤! そんな代物、研究施設から持って来たのが見つかったら、あなたの父君はタダではすみません……! すぐに隠して下さい!」


「えっ……? そんな大事なものなの?」


「大事なんてものではありません。国の領土を広げるために必要不可欠な品です!」


 大きな声で捲し立ててしまった。

 我ながら取り乱していたかもしれない。

 レクトはそんな私の顔を覗き込みながらも、少しだけ手が震えていた。

 無理もない、そんな大事なものを今自分が持っていると思えば、自然な反応だ。


 だが、レクトの手の震えが止まったと思いきや、私の手を両手で力強く握り、言葉を探すように口を開いた。


「僕、僕はね、これでシアちゃんと少し遠くに行ければと思ってたんだ。だから、喜んでくれると思ったんだけど、ごめんね」


「いえ、私も感情的になってしまいました。こちらこそすみません」


 少しの沈黙が流れる。

 いたたまれなくなった私は、レクトの持ってきた魔力揮発剤の入った瓶を見つめながら口を開いた。


「その揮発剤、どうするつもりですか?」


「うん……とっても大事なものだし、これは父様に返すよ」


 それがいい。

 もとより一回で数時間は、魔物が大量にいる深域ですら魔物が寄り付かなくなる。

 だから、これは返した方が……いいに決まっている。


「……もし、その揮発剤を使ったとしても、あなたは口を固く結んでずっと秘密にしておくことはできますか?」


 我ながら無茶な提案だとは思った。

 宮廷魔術師の一人が魔力揮発剤の増産研究をしていると耳にはしていたが、まだまだ実現には程遠いはず。

 だが、滅多に手に入らないこの薬液を簡単に手放すのは惜しいと、私の中の好奇心が少しだけ勝り、袋にしまいかけたレクトの手を取り、咄嗟に念じてしまった。


 ――その揮発剤を使って、冒険に出てみましょう。


 ◇◇◇◇


 私は世界に愛されていた。

 国中探しても他にいない『人心掌握の加護』の持ち主として、このヨルダルクに留まり、度々力を貸すことを条件に、破格の待遇を約束されていた。


 発動条件は相手の身体のどこかに触れながら、どうして欲しいか念じるだけ。


 気軽に人の心を操れるはずの力を持った私は、それゆえに常に人に対して疑心暗鬼な生活を余儀なくされる。

 私の支配下に置いていなければ不安で仕方ない。人を無条件で信じるなんて、頭のおかしい人がする楽観的な思考だと決めつけて。


 初めは私を育てた両親に、この加護を使った。

 いや、もはやこの加護は呪いと形容してもいいかもしれないが、とにかく思い通りにならない人間の考えを歪め、従わせるために振るった。


 ――案の定、両親は強すぎる命令を受けて簡単に壊れてしまった。

 それからは無闇に加護を使うことはせず、一種の封印をしていたが、私は初めての恋を経験し、この封印を解いた。

 恋は盲目と耳にすることはあった。

 けれど、人を信じられない私には全くの無縁な知識だと蓋をしていた。


 だが実際はどうだろうか。

 赤くしなやかに伸びる髪は、風に優しくなびき、整った顔立ちから見せる優しい笑みは、人を信じられなかったはずの私の心を簡単に溶かしてしまった。


 凛と佇む立ち振る舞い、意志の込められた吸い込まれるような瞳に、私は何か他の人にはない特別なえんを感じ取った気がした。


「ラ、ライル様!」


「なんでしょうか? ディシア様」


「こ、今度お茶会でも……! と思いまして!」


「ええ、とても光栄です」


 私はこの時、ついライルの手に触れながら人心掌握の加護を使ってしまった。

 それにより、ライルは私のものになった――はずだった。

 お茶会の時に、私はライルとの時間を楽しんだ後、もう一度だけ手に触れて、そして念じた。


 ――私だけのものになって下さい。


 この時私は幸せの頂点に達していたのだと思う。だが、返ってきた答えは、容易にその幻想を打ち壊した。


「申し訳ございません、ディシア様――私は既に心に決めた相手がおります。その方を裏切ることはできません、ご容赦ください」


 これまで一度たりとも失敗したことはなかったはずなのに、返ってきた言葉は私に取って死刑宣告に等しい内容だった。


「……えっ??」


 放心状態の私を置いて、ライルは席から立ち上がり、扉を開いてその場を後にした。

 少しの時間が経過しても、私はまだ現実を飲み込むことができなかった。


「どうして、加護が効いていないのですか……!」


 私はその場で崩れ落ち、嗚咽を我慢できずに大声で泣いた。文字通り涙が枯れるまで泣き続け、そのままテーブルの上にあった食器を薙ぎ倒し、自室に戻り泥のように眠り、今に至る。


 ◇◇◇◇


 ともあれ、私はレクトという少年に少し救われているのかもしれない。

 一度ならず二度までも、私を気遣ってくれているのだろう。でも、心を痛めている時に、優しくしないで欲しかった。


 ――私はこれ以上、私を嫌いになりたくない。


 それでも、私は何か気晴らしをしたかったかと聞かれれば、その通りだっただろう。


「その揮発剤を使って、冒険に出てみましょう」


「冒険ッ!?」


 レクトの表情がパァっと輝く。

 お互い十三の歳の割には、レクトは少し幼い気がしたが、無邪気に喜んでいる姿を見るのは心地がよかった。


「どこに行くの!?」


「それはまだ考えていますが、揮発剤が使えるところに行かなければ意味がありませんし、ここから近くの森林に行ってみましょう」


「でもあそこは怖いエルフが住んでて、危なくないかな?」


「そんな噂を信じていては何もできないではないですか。それに、あなたは私を護ってくれないのですか?」


「シ、シアちゃんは僕が護るよ……!」


「ありがとう」


 ◇◇◇◇


 私とレクトは早速遠出の準備を済ませ、森の入り口に立っていた。鬱蒼と乱立する木々の数々――鞄には魔力揮発剤と携行食を一日分だけ。

 泊まりをしてまで探索するつもりはなかった。


 圧倒的なスケールを誇る大木を前にして、レクトは少しだけ尻込みをしていた。

 それを見て、私はわざとらしく表情を曇らせる。


「怖いのですか?」


「こ、怖くない! 約束したからね!」


「……そうですか」


 森へとゆっくりと侵入する。

 私はおろか、レクトも同様に魔力感知はできない。けれど、森の境界線を跨いだ瞬間――確かに背筋が凍るような悪寒が、私の鼓動を早めた。


 土の香り、木々の隙間から僅かに差し込む陽光の柱たち。

 私は魔術も、ましてや剣すらまともに握ったことすらない。

 この森の中では人心掌握の加護など何の役にも立たないと、この時初めて実感した。


 思わず生唾を飲み込む。

 ここから先は魔物とエルフが棲家にしている深い森。環境的には深域に近いはずだ。


 枯葉や枝が地面に転がっており、歩みを進める度にパキパキと乾いた音が鳴り響いた。

 踏みしめる音だけが嫌に響くほど、森の中は静かだった。それが常に誰かに、何かに監視されているのではないかという嫌なイメージが、脳裏にこびりついて離れなかった。


「レクトさん、その短剣で戦うつもりですか? そんなものでは、すぐエルフに負けてしまいそうです」


「この短剣は、あまり強くはないけどちゃんと魔剣なんだよ!」


「その短剣が……?」


 特別な力が宿る剣、通称――魔剣。

 その効果は様々だが、この柄が若干錆びている古びた剣が、本当に魔剣なのだろうかと疑いたくなる。

 レクトが得意気に魔剣を鞘から引き抜き、空へと掲げながら振り回す。


 あまりの子供らしさに、私は思う。

 この人は、私の力には興味がないのではないだろうかと。


「これはね――今心こんしんの剣って銘だと父様から教えられたんだけど、能力の説明を聞いてもよくわからなかったんだ」


「魔剣の意味がないじゃないですか……」


「ごめん……シアちゃん」


「気にしないで下さい――そろそろ森も深くなってきます。魔力揮発剤を使いましょう」


「そ、そうだね!」


 レクトが鞄から魔力揮発剤の入った瓶を取り出そうと、手を突っ込んだ瞬間――その腕に一本の矢が音もなく飛来し、貫いてから途中で止まる。


「……え?」


 レクトが矢の刺さった腕を見つめ、徐々に現実を理解し始めて感覚がクリアになっていき、そして思い出すように叫ぶ。


「……う、うあぁぁぁぁああああ!!!」


 レクトは驚きと痛みで派手に転び、魔力揮発剤が入った瓶が地面に落ち、盛大に割れて中身が溢れ出た。


「レクト……さん?」


 一瞬、何が起きたかわからなかった。

 だが、レクトに刺さったのは間違いなくエルフが使う矢だとわかる――文献で見たことのあるエルフ特有の矢羽があしらわれていた。

 すぐに私は辺りを見回して、敵の位置を探ろうと視線を動かしかけた時。


 違う、それよりも……!


「レクトさん! すぐに矢を引き抜いてはなりません!」


「て、手がぁああああ!!!」


 慌ててレクトの手を握り人心掌握の加護をかける。だが、念じても念じても、レクトが反射的に矢を握り引き抜く手を止められなかった。


 ――地面に転がる矢、手のひらに開いた細い穴、止めどなく溢れる血。

 そして何より、レクトの傷口から腕の上部に細長く走る、血管にも似た網目状の痣。


「こんな、出血……! 私では、止めることが……!」


 私のせいだ、私のせいだ……! 浅はかだった、もう私が全部悪いでいいから!! 彼を、誰か!!


 その時、私の腹部に鈍痛が響いた。


「隠蔽、魔術……!」


 口から血を吐きながら、痛みに耐えられずうずくまる。地面についた額が冷えた土の感触に当てられて、強制的に現実へ引き戻される。


 激しく咳き込んでいると、隠蔽魔術を解除したエルフの民族衣装に身を包んだ男が、私の首根っこの服を力任せに鷲掴みにして持ち上げる。


「おい、お前ら、まだ生きてるか?」


「……」


「ここはエルフ領だと知ってて入ったのか? いや、まぁそこら辺の細かいことはいいか――どうせ殺すんだからな」


 レクト、さん……すみません。暗い冥界には私一人で行きますから……どうか、ここから逃げて下さいっ……!!


 瞬間――私の足が白く光り輝き、緑の民族衣装を着たエルフの頬へ吸い込まれるように命中する。男は口から小さく血を吐き、二歩だけ後退した。


「この女……今の光は見間違うことはない。その歳で世界の核心に触れるとはなんと罪深いのか……危険だ。お前はそのガキよりも早く命を終えるべきだ」


 あぁ……ここで、私の心はようやく解放されるのですね。長かった、殺すならできるだけ嬲らないでほしいものです。

 一度だけ通った攻撃。

 それだけで、私の役割は……ここで、終わり。


 エルフの男が腰に刺している片手直剣を引き抜き、引き絞るように私の胸元へ狙いが定められた。

 瞼を閉じる。

 だが、私が剣に貫かれることはなかった。


 何もかも諦めた時、一本の魔剣が白い輝きを放ちながらエルフの左肩に深々と突き刺さり、短いうめき声を上げている。


「ぐっ……! この、魔剣は……! だが、なぜこの剣をお前たち人間が持っているのかは最早どうでもいい!! お前ら人間のクソはさっさと冥界に落とすに限る」


 エルフが持っている片手直剣を地面に放り投げ、今心の剣を掴むと白い光はすぐに消えた。

 今度は私へ友人が持っていた魔剣を突き立てるようにして構えられる。


「光栄だろ――すぐにアイツも送ってやるよ」


 再び抵抗する力が残っていない、私の首を絞めるようにして掴み上げられる。

 もう、奇跡は起きない。

 ありがとう、レクト――最後まで私を好いていてくれて。


 掴まれた腕に抵抗しようと、一瞬だけ空気が回らない身体に命令を出そうとするが、すぐに上げかけた腕が力なく落ちた。


 さようなら、愛しかったライル

 ありがとう、愛してくれたレクト


 私が脱力すると、満足したようにエルフの男が呟いた。


「じゃあな」


 ――ギィィイインン!!


 刹那、甲高い金属音と共に火花が激しく散った。

 掠れた視界。

 何が起きたかはわからない。

 だが、私の首を絞めるように掴んでいた手が離される。

 エルフの握っていた魔剣は宙を舞っていた。


「ご無事ですか? ディシア様」


「げほっ! げほっ!! ライル……さ、ま?」


「はい、ヨルダルク近衛騎士団、副団長のライゼンバッハが御身を保護しに参りました」


「私は、大丈夫です。それよりもレクトを……!」


 ライルは私からレクトに鋭い視線を向けたが、すぐに表情を緩めた。


「傷は深いようですが、魔力の流れは問題ありません。致命傷ではありませんよ」


「そうですか……」


 思わず表情が和らいだ。

 しかし、自ら放り投げた片手直剣を握り直したエルフの男は、悪態を吐きながらライルへ侮蔑を込めた表情を向けた。


「また一匹、醜い蛆が湧いたようだな。お前たち人間はいつもそうだ! 排除しても排除しても、我らエルフの棲家を奪う! 絶対に許されん所業だ……!! 絶対にッ!!」


「お喋りが過ぎますよ、高潔だったエルフの民よ」


 いつ剣を抜いたかわからない速度で振るわれ、刀身には返り血すらついていない。

 鞘へと剣が納められた瞬間、エルフの男は首を滑らせるように地へ落とした。


「立てますか? ディシア様」


 ライルから甘い言葉が囁かれる。

 私はこの時、不思議な気分だった。

 もう私は、この清廉なる騎士が伸ばしてくる手を取ろうとは思えなかったから。

 瞳の奥に宿るえんは変わらない。


 一度だけレクトを目線で追ってから、その差し出された手は掴まず、よろける足に鞭打ちながら立ち上がる。

 この森に入る前には早鐘を打っていたはずの心臓は、規則正しいリズムを刻んでいるのみだった。


「その伸ばされた手は、私には必要ありません。もう私は、自らの足で歩いていきますから」


 ◇◇◇◇


 中央王国――ガラスのドームで囲まれている薬学研究所の白い椅子と机に、カノンは紅茶が入ったカップを傾けながら、少しだけ顔をしかめた。


「ちょっと苦いね。もう少し砂糖が欲しいくらいだ」


「お砂糖ならこちらにありますよ。それにしても、今でこそ心念という全ての力の根源だと知ってからでは、私の体験は意味合いが変わってきますね」


「そうだねぇ――心念は自分の中の心による世界の上書きだ。念動魔術と近しいものはあるけれど、ディシア君は既に幼少期で心念の発動を無意識とはいえ発動していたんだ。さすがは神童だね」


「からかわないで下さい。人心掌握の加護は、自分か相手に好意が存在すると効力を失うと、最近わかったばかりなのですから」


「まったく……助手君は罪作りな男だよ。ディシア君はもういいのかい?」


「さぁ、どうでしょうね」


 ディシアが適当に流しながら紅茶の入ったカップを傾けると、カノンは意味ありげに微笑むのだった。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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本編の『亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~』も、この短編が気に入って下さったら覗いてみて下さい!

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