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第九章 三次元の認識

明日香にとって立体とは、平面図形に時間を持ち込む事だった、

   

 昼食の後は、英語の勉強だったので、子供の英語学習のソフトを入れてみた。

 うまくいけば、明日香が学習している間のんびり出来るかなという思惑もあって。

 林田が入れたのは、イラストの説明が多いものだったので、人形劇はしないですむかなと期待したのだが、それはかえって質問責めに会うことになった。 

「・・このcatと一緒に描いてあるデーターは、何ですか?・・」  

「ええ?、分からんか~!」 

 まだ、平面の図形と立体との関係が良く分からないらしい。 

「ええい、英語の授業は中止じゃあ~!、

 お絵描きタイムだぞ~!」

 林田は、どうやって絵を描かせるか、考え始めた。 

  

「どうだ、明日香、俺が分かるな?」 

「・・もちろん分かります、林田さん・・」 

 二つのカメラで林田を捕えて、ゆっくり動いている。片方のカメラをハンカチで隠して、 

「さあ、今度はどうだ、分かるかな?」 

「・・????分かりません、どこですか?・・」 

 どうやら、明日香は3D認識だけをやってきたらしい、 

林田はピョンピョンと小さく跳ねて見せる。 

「・・ああ!、分かります!・・」

 動きを止めると、 

「・・ああ!、分かりません?・・」 

「ふう~、そうか、・・どうしようか~?」

 止まっていると、ただの光と色のデーターの連なりに過ぎないが、動くことによって、変動するデーターの部分と時間経過による認識が出来るらしい。 

  

「いいか、俺のデーターの輪郭、動いている部分のエッジを認識するんだ」 

 また、明日香の片方のカメラの前で、ピョンピョンと小さく跳ねて見せる。 

「・・・はい、認識しました!・・」 

「そのデーターを記憶」 

「・・はい、記憶しました!・・」

 今度は止まって、 

「今見ているデーターの中に同じ部分があるだろう、それが俺だ」 

「・・はい、分かりました!・・」 

「いいか、少しづつ動くぞ、」 

 林田は、ゆっくりと回転していく、 

「・・少しづつ形が変わっていきます?・・」 

「そうだ、でも、俺なんだぞ、よく見てろよ」

 ようやく一回転すると、

「・・あ、また同じ形ですね・・」

「これが、俺だ、分かったかな?」

「・・???色々な形をしているのですか?・・」 

「ふう~、そうか、・・・今の記憶した形の中心を軸にして、今の時間で回転させてみな」 

「・・・アッ!、林田さんだ!・・」 

 どうやら、3Dで立体視して見ていた林田の形に合致したようだ。

「やったぜ明日香!、お前は賢い、いいか色々なポーズを見せてやろう」 

 と、カメラの前で躍るように体を動かしているのを見ながら、遠くで園山が必死で笑いをこらえていた。

  

「いいか、手はこれだ、こうやると握る、物を持ってこうやると持ち上げる・・持ち上げるには、腕の筋肉を縮める、分からないか?」 

 やおら林田は服をスルスルと脱いで、素裸になると、

「どうだ、これが男の体だ!、腕を曲げるとほら、ここの筋肉が縮んでふくらむだろう、

 こうやって人間は運動するんだ、ほらほら、」 

 とクルクル動く明日香のカメラの前で軽く走って見せたり、屈伸運動などをして見せる。 

「うーん、典型的な日本人の体型だな~!」

 園山が笑いながら、林田の体型を評した。 

「そうともさ!、立派な日本人の体がこれだ、明日香、よく見てろよ、これが男だ!」 と、関節と骨の関係を説明し、人間の体について教えていく、

明日香も忙しくカメラを上下左右に動かして、一生懸命学習しているようだ。 

  

「あなた達は、何をしているんですか?!」 

 丁度、林田がヘラクレスのポーズをとっているところを、遅番で出てきた北が見たのだ、なにやら怒っている。 

「アッ!」 

 あわてて服を着る林田に、

「まったくもう、明日香は女の子なんですよ!」

 腕組みをしたまま、プリプリしている。 

「いやいや、人間の体をね~!!」 

 服を着ながら説明するのだが、言いわけがましくなってしまうのは、北の迫力に押されているせいかもしれない。 

「ふう~ん、人間の体をね?」

  

  

「今動いているのは、何ですか?」 

「今動いているのは景色だ、あまり動いていないのは車」 

 明日香と一緒にテレビを見ている林田は、質問攻めに合っているのだ。

 画面上のデーターの動きを考えながら説明しなければならないので、人に説明するのとは違っている。 

「今動いているのは、何ですか?」 

「猫だよ、敏捷な動きで、ペットとしても人気がある、十二支には入っていない」 

 質問に答えながら、プリントアウトされた図形を見て、明日香がどんなふうに認識しているか確認していく。 

「今動いているのは、何ですか?」 

「象だよ、陸上動物で一番大きい、鼻を手のように器用に使っておもに植物を食べる、

 昔は戦車のように軍事に使われていて、活躍したものだ」

「今動いているのは、何ですか?」 

「鮭だよ、川で産卵して、生まれた子は海に出て回遊して、大人の鮭になると再び生まれた川に帰って産卵する、卵はイクラと呼ばれ、すこぶるおいしい」 

「今動いているのは、人間ですね?」

「そう、野球というスポーツをやっているところだ、敵味方に分かれて90cmほどの木の棒で、直径10cmほどの丸いボールを打って遊んでいるんだ、ふう~!」 

  

 明日香はコンピューターらしく、次々と新しい知識を飲み込んでいく日々が続いた。 

「そろそろ、大丈夫かな?」 

 林田は初級用の英語のCD.ROMを入れてやる。

「うん!、順調々」

 なんとか英語を勉強し、理解しているようだ。

「Hi, How are you?」 

「ヒー、アイーフィンタンキュー!」 

「ああっ!、発音か~!!」 

 林田は大きく伸びをして頭を抱えた、どうやら、手抜きが出来る英語の勉強の予定はフイになったようだ。 


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