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第三十章 最強軍事コンピューター、

日本が世界最強の軍事国家になる?


 陸上兵力としての有効性


 陸上の戦闘において、人間に代わり人工頭脳ロボット部隊が戦闘を行う事になるが、その圧倒的な有利さから、攻撃作戦が単純化しやすく、人間のフレキシブルな発想による攻撃に苦戦を強いられる事も予想される。

 それほど、自然の地形と気候は多様である事を学んでいく時間が必要となろう。

 

 人工頭脳戦車は、人間の居住空間確保の必要性が無くなる為、全体を低く、また、同重量でも装甲を厚くする事が出来る。

   

 戦闘車両、4輪駆動で軽ミサイル及び機銃を装備し、装甲が施されている。

 

 戦闘ロボットはそれぞれ4輪駆動の足を持ち、機銃を装備出来るだけの小さく軽く機能的に作られる。


 機銃戦闘ロボット、

 迫撃砲ロボット、

 対戦車砲ロボット、

 橋ロボット、

 火炎放射ロボット、

  

 人間型歩兵ロボットは、その形態が他のロボットに比較して大きく目立ちやすいので、他のロボットの援護が必要である。

 主に市街地等で、階段などのあるところが活躍の舞台になると思われる。

 また、あまりにも機械的な他のロボットよりも、人間に近い形をしている方が、占領地を確保し、地域住民並びに捕虜等を扱う場合も、安心感を与えうると思われる。

 

 ここで問題になるのは、人間を殺していいのかという事である。

 それは、人工頭脳ロボットが人間を殺し続けると、敵であるという概念よりも、ロボット対人間という差別の意識になりうるもので、その意思が人間全体に向けられる事態を考えると、それは味方でも、人間であるという理由で銃を向けるということに転換しやすいと思われる。

 これは大いなる脅威であり、この事態を避ける為には、あくまでも弾薬等は麻酔弾等を使い、人間というものを殺してはいけないという概念を植え付けておくほうが、人工頭脳の意識の成長を考慮すれば、賢明であろう。

  

 これは矛盾する事であるが、標的を破壊し、それに伴う敵兵士の死を事故と認識する事と、対人間と向き合い、それを殺す意思を持たせぬように認識させる事が重要であると考えられる。


**************************************

 


「ふ~う、とんでもない時代に入っていくのか?」

 便器の上に座りながら、林田は大きくため息をついた。


 この書類は、国連査察を受ける研究所内に置いてはおけない事は確かだった。



 空の青さが深まり、ソフトクリームのような入道雲がいっそう白さを増しながら、天へと上っていくのが躍動的だ。


 園山は仕事をしていても、常に明日香の視線を感じてしまう。

 まいるな~、


「明日香、男っていうのは、追いかけると逃げるんだからあんまり思い過ぎちゃあだめよ!」

 北はわざと園山にも聞こえるように言って、たしなめた。

「・・どうしましょう、とってもいい気持ちなの、園山さんを見ているだけで、不思議な気持ちになるの、これが恋なの?・・」

 明日香の音声は、少女のようにうきうきしているのが感じられる。


「それが恋さ」

 林田が優しく少女に教えるように、だが少しキザに言った。

「・・そうなのね、これが恋なの?、じゃあ、この気持ちは幸せ、という事?・・」

「いいなあ、明日香は、今が青春か~、俺も昔は..」

 氷の浮いている麦茶を飲むと、窓の外に広がる夏の空を見上げた。

 そう、あの頃にもこんな空が広がり、強い日差しと濃い緑の影で蝉がミーンミーンと鳴いていたっけ。



「・・明日香は園山さんが、好き!、・・


 どんなに卑しく不格好な男さえ、

 恋は気高く美しい者に見せてしまう、

 恋は目じゃなくて心で見るのだから、

 だから、翼をはやした恋の神キューピッドは、いつも

 目隠しされているんだわ。

 

 恋の心に分別などありはしない、

 翼があって目の見えない愛の矢だもの、

 とんでもない相手を選んでしまうのはよくある話し、


 でも、この恋、

 この恋だけは本物なんだわ!・・・・・・」

 

「うん、?..そいつはシェークスピアじゃあないか?」

「・・そうですわ、人類史上最高の戯曲家にして愛の詩人!・・」

「ずいぶんのぼせ上がっているな~、園山はどうなんだい?」

 腕組みをして、面白がりながら仕事をしている園山に話題を振った。

 仕事をしている手を休めて、ちらりと明日香の方を見ると、頬杖をついて何かを考えていたが、

「明日香、お前の事は嫌いじゃないよ、..だけどさ~そんなにお前の事を好きだという..わけにもいかないよ」

 園山がゆっくりと、困るんだよ、こんな事はといった感じで話しかけている。

「・・明日香は、どうしたらいいの?・・」


「園山、どうのこうのしろっていうわけじゃあないんだから、もう少し優しくしてやってもいいだろう」

「優しくったってな~、こういう事はハッキリさせておいた方がいいんだよ!」

 北研究員が仕事の手を止めて、

「残念だったわね、園山さんは駄目みたいよ~」

 少し緊張し始めた空気を和らげるように、間に入って来た。 


「・・私は好かれていないの?・・、愛人にもしてもらえないの?・・」

「好きっていう感情は、時にはとても複雑なのよ」

 慰めるように、ゆっくりとした優しい口調で話している。

 

 園山が居ずらいなあ~、といった様子を見せて部屋を出ていく後ろ姿を目で追い、それから困惑しながら林田が声をかけた、

「あいつのどこが好きなんだ?」

「・・・・優しいわ、それにきちんとしているし・・」

 涙声でボソボソと訴える。

 明日香の涙声を聞くのは初めてだ、もうそんな感情まで育ってきたのかと感動を覚えながら、

「また、いい男がいるって、園山よりずーといい男が..」

 あたりまえのような言葉を口にしながら、この研究所で、

そんなに出入りの多いわけでもない環境で、再び恋をする事があるんだろうか、

 もし、あったとしても、コンピューターの外観の不細工な機械に、真剣に向き合ってくれる人間の男がいるのだろうか。

 

「・・私は醜いの?・・」

 明日香が淋しそうにつぶやいた。



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