二十一章 明日香の前に、天才ハッカーが現れた、
日本が誇る人工頭脳は、ネット上で世界中のハッカー達の攻撃を受け、
ゲートを無理矢理こじ開けられようとしている、大丈夫か明日香!
「フフン、クソッ!、返信は出来ますか?」
「仮りのアドでしょうけど、出来るみたいですよ」
林田はキーを叩いた。
┌──────────┐
なぜ、そう思う?
└──────────┘
そう書いて、送信した。
「このメールアドレスは一応アメリカの警察に通報しておきましょう」
部屋の中では、オペレーター達の声が相変わらず忙しく飛び交っている。
「第二ゲート、ロシア、モスクワグループ侵入!」
「続いて第二ゲート、アメリカグループ侵入!」
「大阪の発信者、第一ゲート侵入!」
「うん、日本人も頑張ってるな」
侵入されているのに、変なところで感心したりしている。
「ルクセンブルク、第一ゲート侵入しました!」
「うーむ、正義の破壊屋か」
「スエーデン、第一ゲート侵入しました!」
「続いてカナダグループも第一ゲート、侵入!」
「中国はどうしている?」
「まだ、第一ゲートをアタックしています、苦労しているみたいです」
クフフフッとオペレーター達から失笑が漏れた。
「第三ゲート、イギリスグループが侵入!」
「第三ゲート前、ジャックが現われました!、追跡開始します、」
「ジャックよりメールが届きました!」
「あっ!、ジャック消えました!」
「回線切断!」
林田の声が響いた。
「お疲れさまでした、20分休息を取ります」
林田が切り裂きジャックのメールを表示してあるモニターを覗くと、警視庁のオペレーター達も興味津々で集まってきた。
┌──────────┐
ASUKAのゲートなら、
当然ASUKAを使って
ゲートを作るだろう、
だけどこのゲートはど
うみても馬鹿な人間が
作ったレベルだ。
罠でもなければ、こん
な幼稚なゲートを使っ
たりはしないだろう?
└──────────┘
「クソッ、言いたい事言いやがって!」
「なるほどな、一理ある!」
オペレーター達もうなずいたりして、納得している。
一人が遠慮がちに、
「このゲートは明日香が作った物ではないですよね、どうしてですか?」
「もちろん、明日香が作ればもっと完璧な物が作れますが、現時点では、複雑すぎて、外からアクセスする時に問題が生じます、で、このゲートは馬鹿な人間の私が作りました」
と、ペコリと頭を下げた。
「これからどうするんですか?」
「はい、・・ちょっと待ってください」
胸からタバコを取りだし火をつけ、コーヒーをゴクゴクと勢いよく飲み込んだ。
机に座り直して、しばらくの沈黙の後、
「確かに、ジャックの言う通り、これは罠のプロジェクトです、詳しい事は言えませんが、これから不自然な指令を出す事もありますが、了解をお願いします」
オペレーター達はザワザワとしたが、そのうちの一人が、
「了解しました、いつかは詳しく話していただけるんでしょうね?」
「はい、そのつもりです」
┌───────────┐
もし、罠だと思うんだっ
たら、さっさと帰った方
が身のためだぜ。 │
ここはお前のような
馬鹿ガキが来るような所
じゃあないんだ。
└───────────┘
林田はジャックに返信メールを書いて返送したが、今度のメールアドレスは前回と違い、ミシガンになっていた。
19:00
明日香の回線の接続開始、夕食を終わったオペレーター達の元気な声が飛ぶ。
「再アタックされています、第三ゲート、アメリカグループ!」
「再アタックされています、ルクセンブルク!第二ゲート侵入!」
「再アタックされています、第四ゲート、イギリスグループ!」
「再アタックされています、第三ゲート、ロシア、モスクワグループ!」
ハッカーグループによるアタックの報告が飛び交う。
「アメリカBグループとカナダグループが合体した模様?!」
「奴等は一番乗りは誰か、競っているみたいだな」
林田がアタックされているモニター画面を見ながらつぶやくと、
「ハッカーの連中は、それが誇りらしいからね」
園山がそれに応えて言うと、平方が、
「でも、情報局の連中は必死に仕事をしているんですよ、国の命運をかけて」
としみじみと言った。
「再アタックされています、第二ゲート、カナダグループ!」
「第二ゲート、イスラエルグループ侵入!」
「第三ゲート、ロシア、モスクワグループ、侵入!」
「切り裂きジャックより、メールが届きました」
「なんだい、今度は?」
林田がモニターを見ると。
┌───────────┐
イエローモンキーの日本
人は、優秀だから尊敬し
ているんだけど、どうも
その薄っぺらな顔が気に
入らないのさ、
この程度のゲートで
ASUKAを守るなんて、
たとえ罠だとしても、
知れたもんだね、
どんな罠か見てやるよ。
└───────────┘
「ふう~、まだやるつもりだな」
顎を指で撫でながら、なにやら考えている。
「秋葉原も第一ゲート侵入!」
「台湾の発信者も、第一ゲート侵入!」
「続いて、ドイツ、ベルリンも、第一ゲート侵入!」
う~ん、忙しくなってきたぞ、
「第四ゲート、ロシア、モスクワグループ侵入!」
「回線切断!」
林田の声が響いたが、それに反して、
「ちょっと待って!」
園山が押し止どめた、
「なんだい?」
「確かめたい事があるんだ」
「何を?」
「まだ、確信は無いんだけどね」
園山は何かを待っているらしい。
「第五ゲート前に、切り裂きジャックが現われました!」
それを聞いて、園山は回線を切断した。