第二十章 ハッカー達の攻撃に明日香は立ち向かう、
ハッカー達の嵐のような攻撃にさらされる明日香、日本警察の
オペレーター達は全力を挙げて彼らの素性を追う、世界の諜報
機関と民間のハッカー達が先陣争いを競うように次々と参戦し
て来る、
13:00
「それでは、再接続、開始します!」
林田の声に応じて、園山が接続のスイッチを入れた。
「アタックされています、発信、ユタ!」
「アタックされています、発信、カナダ、ケベック!」
「アタックされています、発信、ルクセンブルク!」
次々と報告が入る。
「さっきより、減っていますか?」
平方が聞いてきた。
「回線切断しましたから、もう今日は無いかなと思ったんでしょう、でも、またすぐに集まって来ますよ」
「でしょうね、彼等にとって明日香が一番の関心事なはずですから」
園山が側から心配そうに言葉を添えた。
「先程のアメリカのハッカーグループと思われます、第二ゲートに取りついています!」
林田は顎に手を当て、興味深そうに、
「どれくらい持ちこたえるかな?」
と、半ば楽しそうでさえある。
「再アタックされています、発信、ロシア、モスクワ!」
「再アタックされています、発信、イスラエルグループ!」
「イギリス、ロンドングループ、第一ゲート侵入!」
平方は心配そうにモニターに見入っている。
「あっ!、アメリカ、切り裂きジャックです!」
「なんです、その切り裂きジャックというのは?」
林田がオペレーターに聞く、
「相手のコンピューター破壊を趣味にしている天才ハッカーと言われている奴です」
「いわゆる愉快犯という奴ですか?」
「噂では、まだ少年だという話しですが、詳しい事は分かっておりません」
「そいつが捕まらない理由は分かりますか?」
「はい、盗んだパスワードとIDを使っているんです、それに足跡を書き換えていく手口を使うそうです」
「ふ~ん、」
タバコに火をつけて、少し考えると、
「じゃあ、今、追跡しましょう!」
「はい、もう追跡しています、・・あっ!、消えました!」
残念そうにオペレータが顔を上げた。
「逃げ足が速いな~!」
何をやるつもりなんだ、こいつは?
「イスラエルグループ、第一ゲート侵入!」
「アタックされています、発信、中国、北京!」
「アタックされています、発信、札幌!」
「モスクワグループ、第一ゲート侵入!」
やっぱり、グループは強いな、個人じゃあ無理かな~、
低い雲が動いてきたせいか、窓の外が急に暗くなったのを見ながら、林田は世界中で明日香にアタックをかけているハッカー達の姿を想像した。
「イギリス、ロンドングループ、第二ゲート侵入!」
「回線切断!」
すかさず園山がスイッチを切った。
「報告をお願いします」
「はい、各国の情報機関と思われるグループが健闘してますね、
今第二ゲートに取りついているのは、アメリカのグループ、モスクワグループ、イスラエルルグループ、第三ゲートに取りついているのはイギリスグループですね、」
「アメリカのグループはCIAかな?」
側から平方が口を出す。
「発信地が広範囲なので、民間のハッカーグループと思われますが、確認は取れません」
「CIAが黙っているはずもないんだが・・、後から来るのかな?」
平方はペンをペタペタと頬ぺたにリズミカルに打ちつけながら、考えこんだ。
「それでは、15分間休息を取ります」
16:05
接続を開始すると、すぐにオペレーター達の声が飛び交う。
「アタックされています、発信、インド、デリー!」
「再アタックされています、発信、ルクセンブルク!」
「再アタックされています、発信、ドイツ、ベルリン!」
「再アタックされています、第二ゲート、発信、イスラエル!」
「再アタックされています、第三ゲート、発信、イギリスグループ」
「早速ですね!」
平方に応えて林田が説明するように、
「明日香がインターネットに接続したという情報が、世界中に回っているんです」
「第三ゲートに切り裂きジャックです!」
「なんだって?!」
「第三ゲートに切り裂きジャックが現われました!」
「いつ第一と第二のゲートを通過したんだ?」
「突然第三ゲートの前に現われました!」
「そんな馬鹿な!、第一と第二にアタックをかけた形跡は?」
「ありません、すんなり通過しています!」
「追跡を開始してください、どういう事だ、・・どう思う園山?」
「天才ハッカーの天才たる由縁かな~、あるいはこっちの情報が敵に流れている?」
「おい、チョット来てくれ」
林田は、園山を廊下に呼び出した、当然のように平方も付いてくる。
「オペレーターの誰かが、切り裂きジャックに情報を流しているって言うのか?」
「それは・・日本の警察の選りすぐりの連中だ、そんな事をするような人間はいないはずなんだが?」
平方が側から口を出す。
「あなたは、大丈夫なんでしょうね?」
林田は、半分冗談めかして平方に聞く、
「ふふふ、幸い私にはこっちの方面に関しては、それが出来るほどの知識を持ち合わせていないのでね、
それより、さっきから考えていたんだが、CIAが天才と言われているジャックを手先に使っているんじゃないかとね」
「ふう~む、確かにアメリカ人好みの手ではありますね」
「CIAとM1-6はツーカーの仲ですし、今回は利害が一致していますから、イギリスの開けたゲート情報をCIAに流せば・・ね」
「なるほど、それはありえますね」
そう応える林田の側で、園山はまだ不審そうだ。
部屋に戻ると、
「切り裂きジャックは消えましたが、ニューヨークから発信している事までは追跡しました、あと、ジャックから責任者当てにメールが届いています」
「メールだって?」
林田が彼のモニターを覗くと、
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| これは、罠なんだろう? |
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