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4.見知らぬ男
母が亡くなった。原因不明の重度の貧血で。あまりの衝撃に倒れてしまった可愛い妹が担架で運ばれていった後、僕は立ち尽くしていた。一人で僕たち三人を育ててくれた病弱で大好きな母が突然亡くなった。もう人生でこれほどショックなことは起きないだろう。
「両親がどちらもいなくなった僕たちは、どうやって生きていけばいいんだ…」
雅琵は隣でひたすら母に縋り付いて泣いている。
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葬式も終わり、片付けも終わって帰ろうとしていたその時。母のかかりつけだった医者と誰なのか、母の昔の知り合いなのだろう、スーツにサングラス、濡烏の髪の只者ではないオーラを出している男に呼び止められた。
「田村韻さん、雅琵さん、少しよろしいでしょうか」
「何のご用で?」
僕は怪しく思いながら聞いた。
「僕は、このようなものです」
男は僕に名刺を渡してからサングラスを外した。
彩華昤玖
ピアニスト・彩華不動産、彩華建設グループ代表取締役社長
そしてその瞳は、常人離れした美しい菫色だった。




