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甘い匂いがする。

これは……この匂いは!


「アンゲルス……」


目を開けると3人に覗き込まれていた。

一人目は、おさげのメイドさん。私の顔を見て、おでこに手を当てられた。そして、「目を覚まされました。体調は大丈夫かと」と告げ退出した。

二人目は、エドワード殿下。用事は終わったのだろうか。

三人目は、執事さん……じゃなかった。第二王子だ。そうだ、さっき失礼な態度をしてしまったんだ。謝罪しないと。

起きあがろうとして背中に触れられる。エドワード殿下に支えられて起こされた。


「おはよう。エリスディア嬢、気絶していたのだけれどどこか苦しかったり辛かったりしない?」


「あ、あのっ、その。お、おはよう、ございます。だ、大丈夫です」


気絶……。

そうか、あのとき気絶してしまったのか。

謝罪しようとして迷惑かけるだなんて、なんて恥ずかしい。また意識が……。


「エリスディア嬢、口を開けて」


良い匂い。この匂いはアンゲルスよね。

でも、食べ切ったわよね、私。


言われるまま口を開けると口の中にチョコレートが広がる。


「これは!チョコレートに北方で栽培されるクランベリーのリキュールが混ぜられたムースだわ!!」


気付け薬よろしく、ハキハキ喋り出したのを見られてエドワード殿下に笑われる。


「これは、面白い」


こんなキャラだったかしらこの人。

そうだ!謝らないとなんだった。


「第二王子殿下、この度は大変失礼な態度をとってしまったこと心よりお詫び申し上げます」


「別に、全く気にしていませんよ」


「ですが……」


「そうだな。こいつは自分が第二王子であることを言わなかった。だから、全くもって君は悪くないし、悪いとすれば執事のように振る舞い、俺のお見合いを盗み見しようとするこいつだ」


そういうものなのか?

絶対違うけれど、ここで否定するのも失礼になるのだろう。王族の言葉は絶対で異を唱えないのがマナーだ。


「そんなことより」


そんなことより!?

目を覚ましてから一番気にしてたことも、この方にとっては些事なことのようだ。


「それは、俺に対してだけではないのだな」


それの意味が分からず首を傾げる。


「目が合わないのも、吃るのも」


「そ、それは、ですね」


声が震え始めると、またムースを口に入れられる。


「それは、極度の人見知りだからです。両親も治そうとしたらしいのですが、どうにも難しいようですね」


「だが、お菓子を食べるとしばらくは話せるようになると」


「そのようですね。先ほど気づいたので、もしかするとアンゲルスのお菓子限定の効果かもしれません」


「ほう?」


「先ほど第二王子殿下といたときも、アンゲルスのお菓子を食べた途端に興奮したのか普通に話せるようになったのです」


他のお菓子を食べたときは人見知りの症状が治ったことはないので、やはりアンゲルス限定なのだろう。だって、そうでなければ夜会やお茶会でもお菓子を食べているのだから気づけたはずだ。アンゲルスのお菓子は貴重すぎて、公爵家で一度食べたきりなので気づけなかった。


「そう言えば、こいつと二人でいてなぜ気絶することになった?」


「それは……」


思い出すのは、顔についたクリームを第二王子殿下が見つけて、指が……。


「ゆ、ゆ指が……」


また、ムースを口に入れられる。


「第二王子殿下が近かったからです」


「お前、人の婚約者に何をしている?」


血を這うように低い声。いや待て私は婚約者ではない。しっかり(?)丁重にお断りをしたはずだ。


「エリスディア嬢にクリームが付いていたから綺麗にしてあげようとしただけですよ。ね?」


どういう意図があるのか、肩に腕を載せて後ろから体重をかけられる。緊張で反射的に身体に力が入る。

エドワード殿下が第二王子を睨め付けながらムースを食べさせてきた。おかげでまたしても気絶は回避することができた。


「はい!そうです」


何故か吃ってもいないのにムースを入れられる。うん、美味しい。


「離れろ」


大きめの声と同時に部屋が冷えた気がした。気がしたのではなく、冷えている。氷の結晶みたいなのがチラつきだした。

それを見た第二王子は「怖いですよ」と慌てて肩から離れた。


「兄上、冗談ですから落ち着いて下さい」


「……」


無言でムースを口に入れられる。


「そもそも、断られていたので婚約者ではないですよね。だから、エリスディア嬢が誰と仲良くしようが距離が近かろうが、全くもって口を出せるはずがないのでは?」


「そうです。私はまともに社交界に出ることができないほど、酷い人見知りです。王族の一員として、あり得ません」


その言葉に、言うチャンスは今しかないと思い発言する。


「エリスディア嬢、聞きたいことがある」


けれど、エドワード殿下は発言に対しての返答をくれるわけではなく尋ねてきた。


「もしかして、君は俺だから挙動不審になるのではなく、他の人に対しても同じようになるのか?」


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