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魔女の継承
この学舎にはひとりの魔女がいた。
七つの呪いを統べる力。その根源たるタリスマンを、魔女はとある書物の1ページに隠した。
そうそう人も立ち寄らない、なかなか大きな第二図書室。仄暗い牢獄を形成するような、数千冊を誇る書群の、たった1冊の中の、たった1ページ。
それは魔女にとって分の悪くない賭けだったが、かくも彼女はそれを見つけ出してしまった。
彼女の一番の武器を取り上げられたにも関わらずこの結果。その力を明け渡すには十分な理由だった。
彼女が新たにつくるセカイは、彼女らしく、優しくも退屈なものになるかもしれない。それが崩れることがあるとすれば。誰かが彼女に気付き、対立し、彼女が敗れる時だろう。
その時もきっと、あの日と同じ、あまりにも虚空で絶麗な、薄明の空の下になる筈だ。