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けっこう息合ってきたかも?ツンデレ吸血姫と突撃・地下4層!

──ロザリオの地下墓標・第4層《失われた聖域》。


空気は冷たいのに、どこか粘りつくような気配が肌にまとわりつく。

……いや、気のせいじゃない。これ、“霊気”だ。


 


「霧と共に凍てよ──《アイス・ミスト》!」


 


俺の氷魔法が静かに広がり、視界を覆う白い霧となる。

前方を制圧しつつ、俺とクロエはそろりそろりと進んでいった。


 


「……まさか、本当に役立つとはね。あんたの氷魔法」


「へっへ~、こう見えて俺、戦術家ですから!」


「でも、さっきも言ったけど“調子に乗った瞬間に死ぬ”から気をつけなさいよ」


「わかってるって……できればその注意、毎回ボイス付きで流して?」


「甘えるな、下僕」


 


そんなやりとりを交わしつつ、霧の向こうに見えた扉付きの小部屋へと足を踏み入れる。


 


 


室内には朽ちかけた書棚、ボロボロの机、そして──


 


「……うわ、アレ、絶対“動く系”のやつじゃん……」


 


床に横たわる“何か”。

分厚い魔導書がいくつも束ねられ、異形の生き物のように変形している。


 


──《怨念の書架》。

呪われた魔導書の怨念が具現化した、4層でも屈指のトラブル枠である。


 


ガサ……ッ。


 


まるでフラグを回収するように、軋む音を立ててそれが起き上がった。


裂けたページの隙間から、腐った魔素が噴き出す。


 


「行くわよ、下僕! 正面はあたしが引きつけるから、援護しなさい!」


「任されたっ!」


 


「白骨の魂よ、跳ねよ──《スケルタル・ファングラビット》!」


 


牙のついた骨ウサギが、霧の中からピョコッと飛び出し──

そのまま猛ダッシュで怨念の書架の側面に体当たりッ!


怨霊モンスターが注意を向けた瞬間──上から、闇を切り裂いて舞い降りた影がひとつ!


 


「《ラルジュ・ルージュ》!」


 


クロエの一閃が、書架の“表紙”を真っ二つに切り裂いた!


ドス黒い魔素が吹き出す!


 


「いいぞ……今だ! この魂に印を刻まん──死の名のもとに!《デスブランド》!」


 


書架の表面に、死の刻印がジリジリと焼き付いていく。

呪いと共に、防御力がズタボロになったその瞬間──


 


「《ヴァーミリオン・ブレイズ》!」


 


クロエの魔刃が赤く燃え上がり、全力の踏み込みから一撃必殺!


 


ドギャアアアァァァン!!!


 


爆音と共に《怨念の書架》は崩れ、魔素の煙が室内に拡散する。


 


「……ふっ、あたしたち、けっこうやるじゃない?」


「いやマジで息ぴったりすぎて、自分が怖いわ!」


「べ、別にあんたのこと、信頼してるとかじゃないんだからね!? 下僕として当然の働きをしてるだけ!」


(うん、ツン→チョロ→ツンの高速コンボ。もう慣れた)


 


 


部屋の奥にあったのは、鍵付きの石箱。


クロエが封印魔法であっさりと解除する──のだが。


 


「……うわ、なにこれ。つけ鼻?」


「……って、マジでゴミじゃねーか!!なんでクロエが開けるとこれなの!?」


「う、うるさいっ! あたしが開けたからって関係ないでしょ!」


「あるある大アリ! これもう“レアドロップ運は俺が持ってる”ってことじゃん!」


『ふふ、ちゃんと確率設定しておいた甲斐があったね~☆』


「黙ってろ、適当女神!!」


 


(でも……クロエ、なんかちょっと嬉しそうに笑ってる)


(エレンの声、聞こえてないはずだよな……? ま、まあいいか)


 


 


さらに少し奥へ進むと──空気が変わった。


ゾクリ、と背中を撫でるような、異質な寒気。


 


「……気をつけなさい。奥に、何かいる」


「うん……これは、“質”が違う。今までとはまったく別の……何か」


 


開かない封印扉の向こう側から、プレッシャーのような存在感がじわじわと漏れ出ていた。


魔力じゃない。これは“意志”だ。


こっちを見てる──そんな気がする。


 


『あ~……ユウくん、たぶんそこボス部屋だね☆ がんばってね~』


「お前はもうちょい危機感もってくれ神ィ!!」


 


クロエが、扉に手をかざして静かに言う。


 


「……結構やばい奴かもしれないわね」


 


さっきまでのツンデレ吸血姫じゃない。

今のクロエは、鋭い目をした剣士の顔だった。


 


「とりあえず、いったん戻って準備を整えるべきね。無策で突っ込むのは、バカのやることよ」


「賛成! 全力で賛成!」


 


──こうして俺たちは、最奥の“気配”を背に、聖域を後にした。


次こそ、あの扉の先へ。


そしてたぶん──

これまでで一番ヤバいやつと、向き合うことになる。


 


 


【ステータス:ユウ・サカイ】

職業: 死霊術師ネクロマンサー

種族: 人族(転生者)

レベル: 4


スキル:

《死霊魔法(第2階層)》

 ├《スケルタル・ファングラビット》

 ├《デスブランド》

 ├《レイス・リーチ》

《氷魔法(第1階層)》

 ├《アイス・スパイク》

 ├《アイス・ミスト》


称号:

女神のお気に入り

異世界転生者

触手系に反応が良い男

爆裂スクロール浪費者

ラッキースケベ

吸血姫の下僕


装備:

折れかけの小剣

魔導杖《魔力制御入門くん》

《エレン印の冒険セット》

《女神エレンより愛をこめて♡マフラー》

《クロエの手作り指輪》

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