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空に在った「あたし」
あたし、まちを見おろすのがすきなの。
まちって何か知ってる? ヒトというものがたくさんいるところなのよ。
よくわからないけれど、かたそうな四角いはこがならんでいて、ヒトがそこに入ったり出たりするの。
そのうごきをながめるのが、あたし、本当にすきなのよ。
小さいころは、空を上手にとべなかったの。
あたしったら、羽のうごかし方がよくわからなかったのよ。
どうしてか、足を交ごに前に出してみたり、羽をばらばらにぐるぐる回してみたりしていたわ。
そうしたら、どこかへ行けると思っていたのかしら。
ふしぎなことって、あるものね。
だから、とぶのより、えだなんかにとまって、まちを見おろしている方がよかったの。
しっかりつかんでいれば、おちたりしないでしょう?
とぶのにしっぱいして、おちてしまったら、とってもとってもいたいもの。
なんだか、あなたからはなつかしいかんじがするわ。
どうしてかしら。
あなたの声を聞いたのははじめてなのに…。
ねえ、あなたはなにがすき?