ばばんばばんばんばん
数ある作品の中から拙作をお選びくださり、ありがとうございますo(*⌒―⌒*)o
「マリナちゃん。特別風呂を用意してあげる。どんなお風呂に入りたい?」
一年の始まりの月は、親神の月と呼ぶ。
親神が夫婦に分裂する為に苦しみ、世は雪に閉ざされる寒さで包まれた。
一般に大地の月とも云う。
親神の次は、夫婦神の月。
分裂した為に喧嘩するようになり、しかし歩み寄りの心も互いにあり、春の兆しと寒の戻りが忙しい季節である。立春もこの月に訪れる。
三番目の月は、親女神の月である。
女神が花のために雪を溶かし水へと変える月。
雪を水に戻す仕事が忙しいので月の始まりに咲く花はほんの少し。月が下る程に百花繚乱と咲き乱れていく。
この後四番目から十一番目までは子供の神々が並び、最後の月で親神の男神が締める。
さて、ここまで横道に反れまくったが、親女神の月に戻りたい。
本格的に春が目に見えてくる──花が咲き始める時期でもあるので、女性を讃える祭日もある。日本で云うところの雛祭り的な乗りで、意味合いとしてはイタリアのバレンタインに近い祭日だ。この日ばかりは母親や彼女が大切に労ってもらえる。花束を貰い、美味しい食べ物で舌鼓を打ち、家庭内の仕事も免除される日。
この日ばかりは世の男共も何気にはしゃぎ張り切る。
女性に優しくし、男を見せる大切な日でもあるからだ。
特に独身の男は母や姉を喜ばせようとする。家族への扱いで恋人──延いては嫁が見つかるか否かにかかってくるからだ。
だが、まあ多くの男は単純に浮かれているというのもあるだろう。
世はお祭り。地球で言うところのバレンタイン的な乗りで、意味もなく心に花が咲き易い。
そしてここに一人の若い青年が居る。
恋人未満、友人以上の部下が居る。
青年の希望としては嫁として娶りたい。
婚前旅行に誘い、乗って来たら一線を超えてしまおう。そして求婚だ!
下心満載で彼女に訊ねた。彼女がお風呂大好き女子であるのは調査済みである。
「マリナちゃん。特別風呂を用意してあげる。どんなお風呂に入りたい?」
「檜風呂」
まさか即答が返って来るとは思わなかった。しかも異国の高級風呂。何でも材料も職人も絶滅が危惧されているという。実行不能。……認めたくはないが、これは遠回りなお断りであるのだろうか?
「言ってはみても、実行は不可能ですからね。んー──」
あれ? 彼女が会話を継続させようとしている……?
青年の希望としては薔薇風呂とかミルク風呂。愛やその先を暗喩する。
次点で愛の伝説が残る温泉地。実は隣村で日帰りも可能。
「女神様の湯」
「予約が取れません」
「百年先まで予約が埋まってるって本当なんですか?」
「本当です」
「………調べたんですね」
「……一年前に調べました」
「では五右衛門風呂を希望します」
「ゴエモン風呂って何ですか」
「人間が入れる大きな釜です……分かります?」
「……お断りなら、はっきり仰ってください」
「伝わらなかったんですね」
「あの、どうぞ一思いにお願いします!」
「断りたくないので捻り出してます」
「………え?」
「大きな観光地や有名な観光地は嫌です。でも温泉には入りたいかもです。あ、海とか良いですね。泊まり掛けになりますけれど、海辺の温泉、連れて行ってくださいますか?」
「喜んで!!」
青年の下心が達成されたかどうかは………ね。
お風呂に浸かっていて思い付いた話。
勢いだけで書き上げました( ≧∀≦)ノ