8、馬車の揺れが最大の敵
乗り物酔いする人にとって、ファンタジー世界の馬車ってヤバイですよね。
かくいう私もすぐに乗り物酔いする方なので、馬車とか乗ったらずっと寝てると思います(苦笑)
今回はちょっとグロい表現もあるので、お気をつけ下さい・・・。
ガタゴトと揺れる馬車、尻が痛くなってきたので毛布を尻の下に敷いて痛みを軽減するものの、この揺れだけはどうにもならず俺は乗り物酔いに苦しんでいた。
「大丈夫かよ、タロー。」
女剣士のアイナさんが、俺の背中を擦ってくれている。
もうさっきから何度もリバースしていて、もはや胃から出る物は無いが、それでも気持ち悪さは無くならない。
「こんなに揺れるとは・・・思っていなくて・・・ウプッ」
車酔いを避けるために、車中でおしゃべりをすると良い、なんてことを聞いたこともあるが、口を開いた途端胃液まで出てきそうになるので無理。
「馬車に乗ったことが無かったとはなぁ。」
斥候のガンボさんも、心配げに俺のことを見つめながらポツリと零す。
道は舗装されているわけではないから、そりゃもう揺れる。
下手に口明けてしゃべってると、舌を噛むんじゃないかと思うくらいだ。
日本という国が、どれだけ人が住みやすいよう工夫がされているのか、本当に嫌というほど思い知った。
街はゴミなど殆ど落ちていないし、トイレは大抵どこも綺麗だし、あちこちに24時間のコンビニがあって、欲しい物はいつでも買えるし。
ドラッグストアだって夜遅くまで店を開けててくれるところがあるし、医療機関だって24時間体制で対応してくれるところがある。
公共交通機関の電車やバスが揺れると言っても、この馬車ほど揺れないし座席だってふかふかだ。
うぅ、日本に早く帰りたい・・・。
襲い来る吐き気と戦いながら、俺はそんなことばかり考えていた。
と、いきなり馬車が止まる。
「魔物です!」
商隊の先頭を進んでいた馬車から、ダナンさんの大きあ声が響く。
その声を受けて、すぐにサージェスさん達が馬車から飛び出していった。
当然俺も戦いに参加すべく馬車から降りたが、降りた直後に胃液をリバース。
「おえぇぇ・・・・。」
隊の前方で金属音や、魔術だろうか、何かの爆発するような轟音が聞こえてくる。
早く、早くそっちへ行かないと。
俺はやっとの思いで立ち上がり、フラフラしつつも戦闘が繰り広げられている隊の前方へ、可能な限り急いで向かった。
「す、すみません・・・ウグッ・・・」
吐きそうになりながらも、ナイフを取り出し準備する。
「タロー!アタイの足元に転がってるウルフはもう虫の息だ、こいつにトドメを刺しな!」
「はい、ありがと、うっ」
片手で口元を押さえつつ、人ほど大きな姿をした狼(毛色が白銀だから、これがシルバーウルフだろう)に近づき、喉元めがけてナイフを突き刺す。
もう殆ど転んで倒れこむような感じになったけれど、刺さればこの際なんでもOKだ。
手にはナイフが肉を割いてズブリと沈む、嫌な感触が伝わってくる。
ウルフは暫く身体をビクビクと震わせていたが、その内全く動かなくなった。
ぴろーん
『レベルが上がりました。』
間の抜けた音と共に、呼び出してもいないのに情報ボードが表示された。
やった、レベルアップだ。
まだ戦闘は続いているので、詳細は後で見るとして、次に刺して良さげな魔物を目で探す。
「タロー、こっちのウルフも刺していいぞ!」
今度はガンボさんからそう言われ、ガンボさんの足元に転がっているウルフへ向けて歩き出す。
走るとか無理。
マジ吐きそう。
よろよろと近づき、さっきと同じように倒れこむようにして、ウルフの喉元にナイフを突き刺す。
こちらも暫くするとウルフは全く動かなくなった。
ぴろーん
『レベルが上がりました。』
どうやらまたレベルが上がったらしい。
何しろ俺は元々レベルがゼロだ。
最初のうちはそれほど多くの経験値が無くてもレベルが上がるというのは、ゲームでもリアルでも同じのようだ。
「タロー、こっちもOKだぞ。」
今度はサージェスさんからだ。
彼の方に視線を向けると、ウルフと一緒に、どう見てもただの巨木としか思えない物が倒れている。
「これも・・・ですか?」
ウルフにトドメを刺しながら、隣に転がっている巨木を指さすと、サージェスさんは頷きながら言った。
「その木の魔物は顔みたいになってる所の下に、赤い石が付いてる。それを砕けば倒せる。」
「わかりました。」
俺は教えてもらった赤い石の部分にナイフを突き立てるも、カキンという金属音がして跳ね返されてしまった。
「く、砕けない。」
何か鈍器は無いかと、自分の手持ちの物を見るも、これといった物が無い。
すると、サージェスさんが見かねてか「ナイフの柄で叩き割れ!」と教えてくれた。
なるほど、そういう使い方も出来るわけだ。
慌ててナイフを逆さに握り、柄の部分で思いっきり赤い石を叩くと、バリンという音がして石が割れ、巨木は急にしおしおと萎み始め、こげ茶色に変色して直径10センチほどの太さになてしまった。
ぴろーん
『レベルが上がりました。』
おぉ、3回もレベルアップのお知らせ。
これで最低でも俺の今のレベルは3ということだ。
ようやく脱・赤子!!
サージェスさん達は手際よく倒したウルフを集め、毛皮は素材として売れるため綺麗に剥がし、皮無し状態の身体から首を切り落し、、木に逆さにして吊るして血抜きをし始める。
因みに切り落とした首も牙が素材として使えるそうで、そっちもナイフで切り取られているのを見てしまった。
どの場面も絵面的にはとてもグロテスクで、思わずまた胃液を吐いてしまった。
萎んでしまった木は、一番太い幹以外は剣やナイフで削ぎ落し、一番太い幹の部分だけ2mくらいの長さに切り分けている。(ようするに4m近くある大きな木の魔物だったってことだな。)
木の魔物、スモールトレントと言うらしい。
あれでスモールなら、もっとデカい奴がいるってことだよな・・・、怖い。
トレントの幹はかなり硬いため、建築資材としても使われるし、武器や防具の材料としても使われるので、一年中需要がありそれなりに高値で売れる良い素材なんだそうだ。
今は魔物達の処理が完了するまで、束の間の休息となったので、俺は地面に転がり休んでいる。
「初っ端からこんな調子で大丈夫かよ?」
女剣士のアイナさんが、寝ころんでいる俺を覗き込みながら睨んでくる。
胸の谷間がくっきり見えて、ナイスアングル!
ご褒美ありがとうございます!!
「だ、ダイジョウぶ、です。」
やれやれと呆れ顔をしてアイナさんが去って行ったので、俺はすぐに情報ボードを表示して自分のステータスを確認する。
『ステータス
名前:山田 太郎
メイン職業:勇者
サブ職業:無し
年齢:22歳
性別:男
種族:人族
出身地:異世界・日本
LV:7 (レベル)
HP:34 (生命力)
MP:0 (魔力量)
STR:2 (筋力)
ATK:1 (攻撃力)
VIT:2 (体力)
DEF:1 (防御力)
INT:1 (知力)
WIS:1 (知恵)
MGR:0 (魔防力)
LER:1 (学習力)
SPD:1 (俊敏性)
DEX:1 (器用さ)
HIT:0 (命中力)
MA:0 (魔素力)
SPI:1 (精神力)
WIL:1 (気力・意志力)
LUK:2 (幸運)
MRL:2 (道徳)
PIE:0 (信仰心)
KRM:87 (カルマ・業)
AP:0 (容姿)
BE:0 (美貌)
CHA:0 (魅力・カリスマ性)
固有スキル:無し
特殊スキル:無し
通常スキル:無し
隠しスキル:言語理解(ポルタ語)、勇者専用アイテムBOX
備考:異世界から召喚されし者、女好き、エロい、ものぐさ
経験値:22,100
獲得SP:235
ステータスP:21
所持金:45,800コール 』
「は?」
レベルこそ3どころか倍以上の7になっているが、ステータス自体殆ど変わっていない。
(ちょ、ちょちょ、ちょっと待て!HP(生命力)とあとKRM(カルマ·業)っての以外、なんでステータス全然変わってないんだよ!!おかしいだろ!)
俺が声に出さないよう、心で情報ボードにツッコミを入れると、それに情報ボードが答えて来た。
『普通、レベルが上がった時は、その行動及び
経験に基づき、自動的にステータスにポイント
が割り振りされます。
スキルポイントも同様で、その時の行動及び
経験に基づき、メイン職業もしくはサブ職業の
スキルに自動的にポイントが割り振りされます。
レベルUPごとに付与されるポイント数は、
職業に関係なく、
ステータスポイント 3
スキルポイント 5
と決まっています。
勇者はこのステータスポイントとスキルポイント
を、自分で選んで任意の項目に割り振りし、
自分の強さをを決め、スキルを選択することが
可能です。
表示項目の一番下あたりに【ステータスP】と
いう項目が追加されています。
ここに記載されているポイントが、ステータスに
割り振りできるポイントです。
但し、一度割り振ったポイントは、他の項目に
振りなおすことは出来ませんので、よく考えて
割り振りをして下さい。
また、現在あなたはサブ職業が決まっていません。
通常サブ職業を決める時は、例えば黒魔術師になる
ことを決め、術の訓練を行う事で自動的に黒魔術へ
スキルポイントが付与されて行き、黒魔術スキルを
獲得できるポイントまで貯まると、黒魔術を覚え、
同時にサブ職業が黒魔術師に決まります。
勇者はスキルを任意で選べるため、サブ職業も
ポイントさえあれば訓練を行わずとも、必要スキル
ポイントを消費することで、任意で決めることが
可能です。』
なるほど。
自分で好きなように強さを決めて、好きなポイントを消費して好きなスキルを獲得さえすれば、サブ職業を決めれるのか。
訓練要らずっていうのはありがたい。
でもサブ職業はどれか1つに絞っておかないと、中途半端な技や術しか使えなくて、長い目で見ると「色々出来るけど使えない奴」になっちまう可能性があるよな。
勇者といったら剣で格好良く戦っているイメージだし、個人的には剣術スキルを取りたいんだよな~。
そうなると、ステータスとしてはSTR(筋力)やATK(攻撃力)は上げておきたいな。
よし!剣術士系勇者で行こう!!
俺はそう決めて、ステータスポイントをSTRに4、ATKに4、VIT(体力)に4、DEF(防御力)に4、SPD(俊敏性)に4、LUK(幸運)に1割り振った。
(あとは、この馬車酔いなんとかしたいんだけど・・・)
『馬車酔いを軽減したい場合は、振動耐性のスキルを
獲得し、そのスキルのレベルを上げていくと酔いが
軽減されて行きます。スキルレベルは最高で10まで
あり、馬車の揺れ程度であれば、レベル5を超えると
酔わなくなります。
振動耐性スキル獲得に必要なスキルポイントは50です。
スキルポイントを消費して、振動耐性スキルを獲得され
ますか?』
(マジか!そんな凄いスキルがあるのか!ちなみにスキルのレベルアップてどうやるんだよ?)
『スキルのレベルを上げるのも、スキルポイントを消費
することで上げられます。
高いレベルになるほと、消費ポイントが多くなります。
レベル2で10ポイント、レベル3で20ポイント、
レベル4で35ポイント、レベル5で50ポイント必要
となります。
あなたはスキル獲得からレベルを5まで上げまでに
必要となるスキルポイントを所持しています。
スキルを獲得しレベルを5まで上げますか?』
現在のスキルポイントが235、スキル獲得で50消費して、レベル5まで上げると115を消費することになるのか。
そうなると残りのスキルポイントは70・・・。
レベルが上がるごとに付与されるスキルポイントが5だから、100ポイント貯めるにはレベルUPを20回しないといけないわけだ・・・。
この先も馬車には乗らないといけないし、えぇい!仕方ない、やるか!!
(スキルポイントを消費して、振動耐性スキルを獲得、レベルを5まで上げる!)
『振動耐性スキルを獲得しました。
続けて、スキルポイントを115消費して振動耐性
スキルをレベルを5までアップしました。』
(因みに・・・剣術スキルも欲しいんだけど、必要なポイントっていくつだ?)
『剣術の初期スキル、パリィを獲得に必要なポイントは
30です。』
(ぱ・・・パリィ・・・まぁ、それを覚えてからでないと、他の剣術スキルも覚えられない・・・ってことなんだよな?)
『その通りです。』
(じゃあ、30を消費してパリィを獲得。)
『スキルポイント30を消費して剣術の初期スキル、
パリィを獲得しました。』
(パリィの次のスキルはスキルポイントいくつ必要なんだ?)
『パリィの次のスキルは剛剣で、必要スキルポイント
は30です。』
(お、マジか。それも覚えられるな!じゃあ剛剣も獲得!)
『スキルポイント30を消費して、剣術スキル剛剣
を獲得しました。』
(なぁ、この獲得した剣術スキルのパリィとか剛剣も、やっぱりレベル10まで上げれるのか?)
『上げられます。』
(レベルを上げるのに必要なポイントはいくつだ?)
『パリィと剛剣は初期段階のスキルであるため、
レベルアップに必要なスキルポイントは下記の
通りとなります。
レベル2 10ポイント
レベル3 20ポイント
レベル4 35ポイント
レベル5 50ポイント
レベル6 75ポイント
レベル7 100ポイント
レベル8 130ポイント
レベル9 165ポイント
レベル10 200ポイント
これは先ほどの振動耐性も同様です。
一般スキルは全て上記の消費ポイントでレベルが
上がります。』
(な、なるほど・・・。残りのスキルポイントは10か・・・。う~ん・・・剛剣にスキルポイント10を割り振りして、レベル2にしておくよ。)
『スキルポイント10を消費して、剛剣のレベル
を2にアップしました。』
これで、少なくとも馬車酔いは無くなるし、戦闘でも多少は戦えるはず。
『現在勇者が所持している装備はナイフですが、
ナイフでは剣術スキルは使えません。
次の街でショートソード、もしくは長剣を購入
することをおすすめします。』
(は?・・・はぁ~~~???!・・・だ・か・ら!!そういう大切なことは先に言えよ!!)
俺は頭を抱えて、地面を転がりのたうち回る。
(俺はショートソードも長剣も装備出来ないのに!)
『STRやVITを上げていくと、装備できる
ようになります。』
(え?そうなの?)
『装備出来ない理由は、それを扱うのに必要な
ステータス数値になっていないからです。
ショートソードならSTRが5、VITが5あれば
装備できます。
長剣はSTRが10、VITが10必要です。』
と、言う事は・・・さっきSTRとVITを4ずつ上げたから、どっちもステータスポイントは6!ショートソードなら装備できるようになったのか!!良かった~・・・。カナンに到着しらギルドに行く前に武器を買おう。
そしてまたレベルが上がったら優先的にSTRやVITを上げて、長剣が持てるようにしよう。
やっぱり勇者は剣で戦わないとだよな!
振動耐性スキルを獲得しレベルを5まで上げたおかげで、先ほどまで死にそうに気持ち悪かったのに、吐き気は全く無くなっていた。
俺は勢いよく身体を起こし立ち上がる。
VITを上げているからなのか、身体が動かしやすく軽い気がする。
「あら、もう起きて大丈夫なの?」
黒魔術師のスーミさんが妖艶な笑みを浮かべながら、俺に声を掛けて来た。
スーミさんが身に着けている黒いローブは、身体にピッタリフィットしていて、裾から太腿までスリットが入っているので、スーミさんのナイスバディっぷりが伺え、スラリと伸びた綺麗な足がローブの隙間からチラチラ見える。
堪りませんな!!完全にご褒美です!ありがとうございます!!
「はい、もう大丈夫です。」
俺はハキハキと答えながら、ガッツポーズをして見せる。
あ、この世界でこのポーズって、元気ですアピールとして通用するのか?・・・まぁいいか。
「そう、無理はしないでね。血抜きにもう少し時間がかかるみたいだから、まだ少し休んでいられるわよ。」
「ありがとうございます。」
俺は返事をしながらその場に座りなおした。
振動耐性があるから酔いは治まったけど、グロテスクな景色に対しては耐性が無いので、出来るだけ血抜き現場へ視線を向けないよう、スーミさんへ視線を移動する。
「・・・あれ?」
スーミさんをじっくり見ていて、気になるものを見つけてしまった。
「あの・・・」
「なぁに?」
「スーミさんの腕・・・何か模様があるように見えるんですけど・・・。」
「あぁ、これ?これは魔術強化の刻印を刻んであるの。これを身体に刻むことによって、使う魔術の威力をアップできるのよ。」
「へぇ~・・・そんなことも出来るんですね。」
「そんなことって・・・結構一般的に誰でもやっていることよ?」
「あの、俺物凄い田舎育ちで、両親が過保護だったせいで、かなりの世間知らずなんです。」
「あら、そうなの?」
「なので色々教えてもらえると嬉しいなぁ~・・・なんて。」
そう言いつつも、スーミさんの見事なパイオツの谷間に視線が吸い寄せられていく。
アイナさんといい、スーミさんといい、この世界の女性は皆、立派なモノをお持ちですな。
眼福、眼福。
「よし、そろそろ出発するぞ!」
血抜き作業が終わったのか、サージェスさんとアイナさん、ガンボさんで大袋にウルフの胴体を詰め、それを他の素材と一緒に馬車へと乗せはじめる。
俺も急いで立ち上がり、素材運びを手伝った。
これこそ俺が同行する時に決めた役割だ。
「運びます!」
「大丈夫か?結構重いぞ。」
ウルフが入った大袋は、確かに重たくて俺では持ちあがらなかった。
「一緒に運んであげる。」
そう言っていつの間にか俺と一緒に来ていたスーミさんが、俺の持つ大袋の端を持ってくれた。
二人でならなんとか持ち上げられそうだ。
よいしょ!と一緒に掛け声をかけて馬車に乗せる。
他の素材も率先して運び、どんどん馬車へ積み込んで行った。
「ありがとうタロー。これで全部だ。出発するから馬車に乗ってくれ。」
「はい、わかりました!」
俺は返事をするとすぐに馬車の荷台に乗り込み、置いて行かれないようにする。
皆が馬車に乗ったのをダナンさんが確認した後、再び商隊の馬車は走り出す。
ガタゴトと揺れる馬車、でもさっきと違い全然気分が悪くならない。
スキルって凄いな、と独りで感動している。
「お?タロー、もう気分悪くないのか?」
アイナさんがちょっと揶揄うような表情で尋ねて来た。
「はい。休んだら楽になりましたし、少し慣れたのか今は気持ち悪く無いです。」
「そっか。なら良かった。また吐きたくなったら、馬車の外へ吐いてくれよな。」
ケタケタ笑いながらそういうアイナさんに、俺は苦笑いで返す。
「ハハハハ、すみません。気を付けます。」
ここに来る途中、1度だけ馬車の内側で吐いてしまったのだ。
吐き気が酷くて動けなかった俺に変わり、新緑の癒しの皆で俺の吐しゃ物を片付けてくれて、大変申し訳ないことをしてしまった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
次もまだまだカナンまでの道途中。
勇者らしく、少しは戦っている姿を見せたいところですね。