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4、武器ってちょっと憧れるよね

いよいよ旅をスタート!するための準備開始です(笑)

村や街で装備を揃えたり、アイテムを揃えたりって楽しいですよね。



翌朝、またしても素材の味しかしない朝食を食べ、朝からテンションを下げまくりながら、村をトボトボと歩いて散策する。

その辺の村人を捕まえて、大魔王討伐の仲間探しのことを聞こうと思ったのだが、なんて尋ねたらいいのかがわからず悩む。

これから大魔王討伐の旅に出るんですが、一緒に討伐してくれる仲間を探しています、どうやったら仲間を見つけられますか?・・・とか。

いや無理だろ。

そもそも赤ちゃん以下のレベルゼロの俺が勇者とか、誰が信じるって話だ。

現状世界最弱ステータスの勇者だぞ。

生まれたての赤ん坊以下の俺が世界を救うとか、誰に何を言おうと絵空事にしかならない。

とりあえず、一緒に旅してくれそうな仲間を探しています~、くらいで聞いてみるか。

畔道のような通路を荷物を抱えて歩く男に声を掛け、先ほどの質問をしてみる。

「え?旅仲間を探してる?う~ん・・・そういう話なら冒険者ギルドがある街に行った方がいいんじゃないか?こんな田舎の小さな村にギルドは無いからなぁ。それに旅仲間って言っても、ずっとではなく、何かの目的がある旅なら、ギルドに護衛依頼って形で一定の区間か、一定の期間同行してくれる仲間を募集するって手もあるぞ。」

「なるほど・・・お金はかかるけど手っ取り早く仲間を見つけられるわけですね。」

「そうそう。まぁ、後は同じ目的がある者同士や、同じ目的地を目指す者同士で協力しあって旅をする場合もある。」

「そうですね~、俺としてはどちらかというと後者の方なんですが。」

「何か目的や目標があるのかい?」

「えぇ、まぁ。」

大魔王討伐です!とか言っても鼻で笑われるだろうから言わないけど。

「それなら、その目的内容や目的地、同行条件なんかを詳しくギルドに伝えて、旅仲間や同行者求むって募集チラシを、掲示板に貼り出してもらう事も出来るぞ。ギルドでの手続きに多少お金はかかるが、応募者が現れたらそれ以降は本人同士で話し合って決めることになる。ギルドはチラシを出すだけで、それ以降は関与しない。」

「そんな方法もあるんですね。色々教えて下さってありがとうございます。」

男に礼を述べて、俺はこの村を離れる準備をしなくてはと、村の中央広場へ向かう。

今の状態で旅は無理だ。

装備がリーマンスーツとビシネスバックのみ。

魔物が出る世界で、しかも世界最弱ステータスで、死にに行くようなものだ。

「装備を整えないと、あと旅が徒歩なら何日かかるか情報集めて、日数分の食糧とか日用品とか用意しないとだよな。金・・・足りるかな。」

いくら60万円相当の金を持っているとはいえ、この世界の装備品や日用品の相場はまだ良く知らない。

早速装備品を探そうと、武器や防具を売っている店の扉を潜る。

「いらっしゃい・・・見ない顔だな。」

「えぇ、昨日この村に来たばかりでして・・・。」

「そうかい。こんな田舎に来るなんて珍しいな。ここは見ての通り武器や防具を売ってる。どんな物が欲しいんだ?見た所丸腰のようだが。」

「はい、この村に来るまでに魔物に襲われて、お金も武具も荷物も全部落としてきちゃって。」

「え、防具も落としたのか?」

「いえ、防具はダメになってしまったので、捨てて来たんです。」

適当な嘘で話を取り繕いながら、店の商品に目を向ける。

「そうかい。そりゃ災難だったな。じゃあ武器も防具も新調するってわけだ。」

「はい。」

「武器は何を使うんだ?剣か?斧か?弓か?杖か?」

「えっと、剣を見せてもらっても良いですか?」

「剣ならそっちの壁際にあるから、好きに見てくれ。」

店主が指さす左側の壁に、飾りが入った剣が壁に掛けられていて、その下に剣を立てて置けるスタンドのような物があり、20本くらいの剣が立てて並べられている。

「あの壁に掛けられている剣も売っているんですか?」

「いや、あの剣は飾りだよ。剣として使えなくも無いが、強度も粘りも無いからすぐに折れちまう。」

なるほど、店の飾りなのか。

立ててある剣の中から、一番オーソドックスな外観の物を一つ手にしたが、重い。

「お・・・重い・・・。」

「重い?アンタ剣士じゃないのか。それなら普段何を使ってるんだよ。」

これまで武器なんて手にした事が無いからな・・・唯一あるのはカッターナイフとか包丁とか?

「えっと、小さなナイフ・・・とか?」

「それならこっちの棚に並んでるナイフやショートソードが良いんじゃないのか?」

「そうですね。剣も使ってみたかったんですけど・・・やっぱり扱いなれた物がいいですよね。」

「やめときな。たまにいるんだよ、使えもしないのに見栄張って長剣や大剣や斧を買って、武器に振り回されてて使いものにならないバカな奴が。」

店主は呆れ顔でそう言った。

俺はおススメされた棚にある、適度に装飾が付いたナイフを手にした。

うん、それほど重くないし、これなら使えそうだ。

「これが良さそうですね。」

隣に置いてあった長めのナイフ、おそらくショートソードと呼ばれる物だろう、それは剣程ではないが俺には重かった。

「あとは防具・・・。」

「兄ちゃんどこへ向かうんだ?」

「えっとここから一番近い街ってどこでしょう?冒険者ギルドに行きたいんです。」

「ここから一番近い冒険者ギルドがある街か。それならここから東北東にあるカナンだな。」

「そこには歩きでどのくらいかかります?」

「徒歩なら10日ほど、馬車が使えるなら持ち運ぶ荷物の量にもよるが3日半~4日ってところだ。」

「馬車もあるんですか?」

「兄ちゃんが馬車を持ってるならって話だ。」

「無いので徒歩ですね。」

「それならあまり重い装備は止めた方が良いな。兄ちゃん体力無さそうだし、すぐに疲れちまって移動日数が延びちまう。この辺の皮鎧とかが良いんじゃないのか?獣の皮を鞣して作られているから軽いがかなり頑丈だ。重たい物は持てないみたいだし、盾なんかは無い方がいいだろう。」

「ほうほう、なるほどなるほど。わかりました、ではこのナイフとその皮鎧を下さい。あと旅で準備しておいた方が良い物ってありますか?食料以外で。」

この人親切そうだし色々聞いてみよう、そう思って武具に関係ないことも尋ねてみた。

「あん?この村までとうやって来たんだよ。」

確かに。

普通に考えたらそこを知らないのはおかしいな。

「いや、ここに来るまでに色々失敗しているので。」

「あぁ、魔物に襲われて、荷物の殆ど置いて来ちまったんだったな。ここまでの道中野営する時はどうしてたんだ?」

「えっと、適当に原っぱとかで寝そべってました。」

「アンタ・・・無防備通り越して無謀過ぎるだろ。」

店主は目を剥いて驚く。

うん、俺も自分が魔物がいるかもしれない草原で、何もせずに寝そべってる自分を想像して身震いした。

「故郷を出るのが初めてで、何をどうしたらいいのか全然わからなくって。」

「どこの貴族様だよ。」

「いやぁ・・・親が物凄く過保護で、これまで故郷から出してもらえなかったんです。どうしても外の世界を知りたくて、何度も親を説得してやっと故郷を出て来たもので。」

昨日の村人との話を思い出しつつ、適当な過去話をでっちあげる。

「そいつぁ、なんていうか、アンタも大変だったんだな。」

ずっと親にガミガミ言われている様子でも想像したのか、店主は眉尻を下げて同情してくれた。

ゴメン、嘘なんだ。

でも説明のしようがない。

異世界から突然この世界に召喚されてきちゃって、気が付いたらここから徒歩3時間程先にある大平原に居たんです~・・・。

うん、完全に頭イッちゃってる人だと思われる。

別の意味で同情されそうだ。

旅・・・旅かぁ。

自分で思いつく旅の持ち物、キャンプとかなら着替えや日用品の他、折り畳みテント、灯り(LEDランプとか)、寝袋、食料、食器、簡易調理器具などだろうか。

しかしこの世界に折り畳みテントなんて無いだろうし、寝袋もあるかどうか怪しい。

灯りは普通にオイルランプなどはあると思うが、ランプ本体に加え、オイルも買わないといけないはず。

食料も生ものは冷却バッグがあるわけじゃないから、干し肉などの保存食だろうし、食器も紙皿や紙コップは無いと思うから木製の物になるのか?・・・重たそう。

調理器具・・・は、まぁナイフとまな板と鍋があればなんとかなるか。

後は野宿する日数分で考える・・・えっ、ちょっと荷物量エグくないか?

バックパックみたいに背中に背負える物はあるようだけど、それに全部詰め込むとしたら、相当大きな袋(?)でないとダメだろうし、入ったとしてそれを背負って徒歩で歩き続けるとか地獄じゃねぇか。

レベルゼロで体力2しかないんだぞ?赤ん坊より低いんだぞ?

死ぬ。

確実に死ぬ。

何とか馬車で運んでもらいたいところ・・・。

たしか行商人って人たちが、商売のために村や街を訪れて荷物運んでるんだよな。

徒歩ってことはないだろうし、その馬車の片隅にでも乗せてもらえないかな。

「あの、この村に行商人の方は来ますか?」

「あぁ、勿論来るぞ。この村は大麦・小麦・黒小麦を主産品目として、他の街に売っているし、こんな田舎だからなぁ、行商人が定期的に持って来る道具や日用品が無いと、生活出来ないんだ。」

「じゃあ、その行商人の方にお願いして、カナンまで馬車に乗せてもらうというのは可能でしょうか。もちろんタダでとは考えていません。行商人の方と相談し、それなりの謝礼はお支払いするつもりです。」

「護衛の冒険者も一緒に馬車に乗って来ることが多いし、大丈夫だと思うぞ。」

なるほど、正直こんな田舎の割に、妙に宿屋がデカくて立派だったことが腑に落ちた。

行商人だけでなく、恐らく複数人の冒険者がちょくちょく一緒に来て泊って行くのだろう。

行商人だって一人とは限らず、馬車も一台とも限らない。

そうなれば、この村を訪れる客人は一定数居るということになる。

当然、彼らを迎え入れられるだけの宿は必要になるし、ある程度待遇を良くしておいた方が何かと良いだろう。

宿が狭く汚い村に長居はしたくないだろうし、立ち寄りたくはないものだ。

だが、宿が綺麗で過ごしやすいなら、数日ここでのんびり商売や休養してから、次の村や街に向かってもいいと考えるかもしれない。

「そうですか!行商人の方はいつもどのくらいの頻度でこの村にいらっしゃるのでしょう?」

「そうだな。正確にはわからないが、数日後には来る頃だと思うぞ。」

ナイスタイミング!

「本当ですか!じゃあ早速お願いしてみようかな。あ、あと先ほどもお聞きしましたけど、食料以外で準備しておいた方が良い物ってありますか?」

「あぁそういえばそんな話だったな。まずは防寒具だな、夜はかなり冷え込む。今の時期は良いが秋口過ぎたあたりから夜間の冷え込みはバカに出来ない。下手したら凍死するぞ。毛布でも良いし厚手の服でもいい。それ以外だとランプとランプオイル、手袋、ロープ、食器や鍋、あとはそれらを入れるための大袋と背負子だな。雑貨屋で全部売っているはずだ。」

「食料はやっぱり日持ちする物でないとダメですよね。」

「当たり前だろ。野菜だろうが肉だろうが、そんなに日持ちしなんだ。腐った物食ったら死んじまうよ。」

「この村だと何が買えますか?」

我ながら良い問いかけだ。

どんな物が旅の食事として売られているか知れる。

「まぁ定番は干し肉と黒パンだな。後はちょっと高くても良いなら塩も買うといい。水に塩と干し肉を少し入れて煮れば、あまり美味しくは無いが温かいスープが作れる。さっきも言ったが夜は冷えるからな。温かい物が欲しくなるんだ。もし川で魚を獲ることが出来れば、少しだけ塩を振って焼けばかなり美味い物が食えるぞ!ただ、毒を持つ魚が多いから、ちゃんと魚の種類を見極めねぇと、あっという間にあの世行きだかよ!ガハハハハハハハ!!」

怖い事いうなよ・・・。

干し肉は肉屋の店頭に吊るされていた、アレのことか?あれを切り分けて売ってるんだろうな。

黒パンは夕べ食べたあの硬いやつのことだな、確かにあの硬さは保存が効きそうだ。

「他には何かありますか?」

「そうとう高値だが干し野菜や干しキノコなんかもあるぞ。どれも加工に手間と時間がかかるから値段が高いんだ。魚の干物なんかもあるが、この辺の川じゃ魚が獲れなくてな、滅多に持ち込まれないんだよ。」

「因みに干し野菜や干しキノコはおいくらほど・・・。」

「干し野菜や干しキノコは種類にもよるが縦横がナイフくらいの大きさの袋1つで500~1000コールはする。大きな街に行くと、ドライフルーツなんて物もあるが、あれは殆どが貴族向けに作られている物だな。掌サイズの小袋1つで1000~1500コールはするぞ。」

「高っ!!」

「まぁ、果物自体が贅沢品で、俺達平民の口に入る事は滅多にない。」

日本ならコンビニの果物を使ったスイーツが、安い物なら400円代から買えるってのに、高額過ぎるだろ!!

農業の一環として果樹園とかやってないのか??

「あの、果樹園とかは無いんですか?」

「カジュエン?ってなんだ?」

「果物を育てる農園といいますか・・・。」

「あぁ、そんなのは高位貴族が自分達用に持ってるくらいで、平民の農業ではやってねぇよ。なんでも果物育てるってのは、とにかく金がかかるらしいからな。」

「なるほど・・・そういうことですか。」

そうだ、保存食といえば、もう一つあるじゃないか!発酵品!!

「あの、チーズとかは売ってませんか?」

「ちーず・・・?なんだそりゃ。」

「えっ」

「聞いた事がないが、それはどんな物なんだ?」

「チーズは動物の乳を発酵させて作る物です。」

「動物のチチをハッコウ?意味が分からねぇ。」

なんと・・・この世界には発酵技術が存在していない??

いや、ここが田舎過ぎて、この店主が知らないだけかもしれない。

「じゃあ醤油とかソースとかケチャップとかマヨネーズとかの調味料も、バターも無いです・・・よね。」

「そーゆ?そ―す?・・・なんだそりゃ。ばたーとか、どれも聞いた事が無いな。チョーなんとかって言うのが何か知らないが、アンタの故郷にはあったのか?」

店主は顔を顰めて首を傾げる。

「調味料は味付けに使う物です。塩も調味料ですよ。ソウウデスカ・・・シラナイデスカ。」

思わずガックリと項垂れる。

「へぇ~。そうなのかい。塩だって貴重品だぞ。何しろ海の水を加工して作られる物だからな。たま~に料理に入れることはあるが、村を上げての祭りの時に出す料理で少し使われる程度だ。海の近くではない土地じゃ、贅沢品だからな。行商人が時々運んでくれてはいるが、高値だし滅多に使わねぇよ。」

通りで素材の味しかしない料理ばかりだと思った、そういう事か。

果物が高級品である以上、当然ジャムも一般的ではないだろうしなぁ。

この先の食事事情が本気で心配だ。

「麺というものはありますか?」

「めん?知らねぇな。アンタ変な物はいっぱい知ってるんだな。」

麺すら無いのか。

じゃ小麦は何に使ってるんだよ?パンか?パンを作るだけに存在してるのか?

あぁ、ラーメンが食いたい、うどんが食いたい、パスタが食いたい!!

この様子だと蕎麦粉とかは無いだろうから、蕎麦は絶対食べられないんだろうなぁ・・・食べられないとなると無性に食べたくなる人間の欲深さ・・・。

色々と教えてくれた店主にナイフと革鎧の代金(2200コール)を支払い、礼を言い店を出た足でそのまま雑貨屋へと向かった。



最後までお読みいただきありがとうございます。

まだまだお買い物(笑)は続きます。

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