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雷の覇者  作者: 悠奏多
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第7話:響VS理沙

響VS理沙です。冬休みも終わり、学校が始まりました。作者は就職活動などで、今年は忙しく、執筆の時間が取れなくなりそうで嫌です。なんとか時間を確保しなくては

「そろそろいいかの? 2人とも」


 タイミングを見計らった一心が、若干冷や汗をかきつつ声をかける。よほど理沙のプレッシャーが凄いのだろう。元七聖なのに学生に冷や汗をかかせられるとは……


「はい、こちらは準備完了です」


 涼しげに響は答える。その顔からはまだ余裕が窺える。


「望むところよ」


 気合い十分にこたえる理沙。背後に修羅が見えるのは気のせいだろう。


 響は右手を前に出し、理沙は胸の前で左手の甲に右の掌を合わせる。そして同時に自らの相棒の名を呼ぶ。


はしれ、『やなぎ』!」

たけれ、『竜麟りゅうりん』!」


 右手の指輪からまたは、両手のブレスレットがそれぞれ輝く。治まったときには、右手に鞘に入った刀を持った響と、両手両足を赤と黒の手甲、脚甲で覆った理沙が立っていた。


 鞘に入った右手の刀を左手に持ち替え、右手で柄を握り、刀を引き抜く。その刀身は澄みわたった色をしており、手入れがいきとどいていることがうかがえる。


 だがしかし、理沙の魔導媒体を見た響は背中に悪寒を感じていた。


 彼の師であり姉である七聖「獄炎」は手甲の使い手であり、幼いころから修行という名の調教を受けていた響は本能的に一瞬その光景を思い出してしまった。

 くしくもその時、見学席にいた心もまた過去を思い出し身震いして棗に心配されていたが、そんなこと響が気づいているわけがない。


「両者、準備はいいみたいだな?」


 一心のその声で平静さを取り戻した響は「はい」と返事をし、理沙もまたそれに続いた。お互いに腰を落とし睨み合う。響もこれまでの余計な感情を捨て、気持を切り換えていた。戦闘前独特の空気が漂う。


「うむ。それではこれより模擬戦を始める。・・・開始!!」


 その言葉を合図に二人は同時に動き出した。





 開始の合図とともに二人は距離を詰める。


「はぁっ!」

「ふっ」


 理沙は自分の顔の脇から少し下へと叩きつけるように右手を振るう。

 対する響は下段に構えた刀を左足を踏み込むと同時に振り上げる。


 ギィィィン


 甲高い音が訓練場に響く。お互いの攻撃は一瞬拮抗するも、上から叩きつけたからだろう、理沙が押し勝った。


 反動で後退する響を追うように、右手を振った勢いをそのままに体を捩り回転、右足を軸に回し蹴りを放つ。


 その蹴りを見切って回避した響は、回避しながら右手の刀を逆手に持ちかえる。そして、足首、膝、足の付け根、腰、肩、肘、手首の順に体の関節を目一杯使って回転エネルギーを刀に乗せ、理沙へと放つ。


如月流刀術きさらぎりゅうとうじゅつ 流円閃りゅうえんせん


 それに気づいた理沙はとっさに両腕を交差させ、防御する。


 ズガンッ


 およそ刀での攻撃とは思えない音を立て、理沙の手甲に当たった斬撃は、そのまま理沙の体を10mほど後退させて効力を失った。


「……いっつ~~、なんつう威力の攻撃よ! 今の音ってどう考えても刀じゃ出ないでしょうが」


 まだ痺れの残る両手を振りながら響を睨む。


「如月流刀術 流円閃。全身の関節を円のように流れるように順序良く回転させて、すべての運動エネルギーを刀に乗せる技だ。今のでケリをつけるつもりだったんだがな」


「ああ!もういいわよ!出し惜しみは一切なし。全力で叩き潰す!」


 響のその言葉にカチンときた理沙は魔力を両手へと集中する。目で見てわかる程の濃密な魔力が集まっていく。


 ゴウッ


 突如音を立てて手脚甲「竜麟」炎が上がる。真っ赤な炎は理沙の周囲を包みこむように広がる。その熱気は響にまで届くほどであった。


(オイオイ、炎まで姉さんとおなじかよ……)


 内心結構参っている響。またも幼い日のトラウマを刺激されたのである。背中には冷や汗が垂れる。


「ふぅ~、しょうがない」


 そう言うと響は体全体に魔力を纏う。薄い魔力の膜。それに意識を向け、自分の色に染めていく。


 バチッ バチッ


 すると体がかすかに帯電する。


 それを今度は「柳」に集め、帯電させる。「柳」は小さな稲妻を迸らせながら白く輝いていく。


白雷びゃくらい


 響の固有術式であり、圧縮された雷が白く輝く様から名づけられた。体や刀などに纏わせることができる。また響が使う雷系統の魔法は白雷がすべて基になる。



「それがあんたの本気?」


「さぁな?」


 理沙の問いに笑いながら答える。響の本気としては程遠いが、本当のことも言えない。だが、響にしてみれば白雷は本来出すつもりなどなく終えるはずだった。理沙の予想以上の実力、それから心のトラウマが酷かったということだろう。


理沙「フンッ、まぁいいわ。やることに変化はないし。覚悟はいいわね?」


「ご自由っに!!」


 そう言いながら柳を振るう。そこから魔法陣が展開され、白い稲妻が発生し理沙を襲う。

 初級魔法である「ライトニング」である。初級魔法とはいえ、何の予備動作も感じさせず展開から発動までをこなす響は相当な実力者である。


「っ!?」


 一瞬、魔導媒体で防御使用とした理沙だが、瞬時に攻撃の性質を見切り防御壁を展開し防ぐ。


「咄嗟に防御壁を展開したのは正解だな。さっきと同じように手甲で防いでたら感電していた」


 理沙の行動を褒める響。相変わらず挑発することを忘れない。まるで稽古をつけているような響の物言いと不意打ちにイラつきが増していく理沙。事実、響は理沙を稽古しているのだが、理沙がそれを知ることはないだろう。


「相変わらず、いい性格っね!!」


 そう言いながら頭上に両手を掲げ、炎を収束、それを響に向って放つ。


「フレイムウェーブ」


 解放された炎が波になって響に襲い掛かる。それを響は左手を前に出し防御壁を展開し防ぐがそこで気づく。


(やるな!? 目くらましか!)


 押し寄せた炎に周りを囲まれ、視界が遮られる。理沙の狙いは攻撃ではなく目くらましだった。

 理沙の姿を見失った響は慌てず意識を集中する。戦闘中で研ぎ澄まされていた感覚が、さらに鋭敏になる。


 突然、響の左後方の炎が動く。


「バーンフィスト!!」


 そこから理沙が現れ、紅蓮の拳を突き出す。そのまま炎を纏った拳が響に迫る。


 ガキィィィン


 だがそこは場数を踏んでいる響だけある。空気の流れ、炎の動きを読み、それを察知し白雷を纏った柳でそれを受け止る。普通ならそこで感電するのだが。


「器用なことを……」


 拳に魔力の膜をかぶせ、感電を防いだ理沙を称賛する。


 それでも余裕そうな表情の響を見て、なおも理沙は攻撃の手を緩めない。


「もらったーー」


 自身の切り札である、右手と同じ術式を展開する左拳を突き出す。それまでは理沙の体に隠れ響からは見えなかった左腕。普段なら魔力反応で感知できた響だが、現在は周りを魔力でできた炎が覆っているため気づくのが遅れた。その結果まで理沙が予測していたのかは不明だが、響を驚かせるには十分だった。


(術式の同時展開!? 高校生の技術じゃねぇだろ)


 自分の予想の上を行った理沙。それを見て珍しく驚いた顔を見せる響。理沙は内心で勝利を確信する。普通の学生レベルなら、ここで勝負がついただろう。


 しかし、響は普通の学生ではない。


「っ!?」


 突然右手とせめぎ合っていたはずの力が消失した。理沙は拮抗していたはずの力が消え、前のめりにバランスを崩す。見ると目の前には「柳」だけが存在する。響の姿が見当たらなかった。


「忠告だ。勝利を確信しても油断はするな。それが隙になる」

「!? しまっ」


 理沙は、いきなり自分の懐近くから聞こえてきた声に驚く。それが響であると認識した瞬間、咄嗟に距離を取ろうとするが既に遅い。理沙が次の行動に移すより早く、響は行動に出ていた。


「それから、刀を持ってるからといって刀で攻撃するとは限らん」


 そう言いながら自身の右手に白雷を集中させ理沙の鳩尾あたりに掌を当てる。理沙はその行動を見るしかできない。突然の力の消失でバランスを崩し、さらに無防備な懐に入られているのだ、響の行動を認識しているだけ優秀だろう。


 ズガンッ


 瞬間、理沙の体を白雷が通り抜け背中から抜けて行った。背中から空中に白い稲妻が奔る。


「嵐山流格闘術一の型 浸透頸しんとうけいの変化 白雷掌びゃくらいしょう


 浸透頸とは魔力を使い打撃点を基点とし体内部へ攻撃する技で、白雷掌はそれを白雷で行った響のオリジナル技である。魔力による体内ダメージ、感電による外的ダメージ及び麻痺効果。この技は、それらを同時に行うことで、本来なら一瞬で対象の意識を奪うだけの威力がある。


「術式の同時展開は焦ったが、最後の詰めが甘かったな」


 理沙は薄れていく意識の中で最後に響の言葉を聞いていた。


(最後まで偉そうに……)


 自分の敗北を感じつつ、最後まで稽古をつけるような響の態度に悪態を吐きながら意識を手放した。




 突然響と理沙を囲んでいた炎がなくなり、その中から理沙をお姫様抱っこした響が姿を現す。理沙が気を失ったため魔力の供給がなくなり、魔導が消失したのだ。


「なんだ? いったいどうなってたんだぁ~~~!?」


 観客席では、今まで炎のせいで模擬戦がどうなっていたのか、どう決着がついたのか見えていなかった努の叫びが聞こえてくる。どことなく棗も響の模擬戦が見れなくて残念そうである。ただ一人、心だけは顔を笑顔で覆い、やっぱりと頷いている様であった。


「それまで! 勝者、響!!」


 姿を現した2人の姿を見た一心が試合の結果を告げ、模擬戦は幕を閉じた。



模擬戦第二試合 響VS理沙

勝者 響


次の更新は少し間が空きます。まだ修正が終わっていないので……

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