第2話:初登校
今は昔の小説の手直しだから更新早いなぁ
次の日の朝。
PiPiPiPi・・・PiPiPiPi・・・PiPiPiPi・・・PiPiPガチャ!!
「・・・ふああぁぁぁぁ」
目覚ましが鳴る音で目を覚ました響は欠伸を一つして布団から出た。結局あれから簡単な料理を作り二人で食べ、届いた荷物を少し片付けてから寝たのは日付が変わった頃だった。
彼、神楽坂 響の朝は早い。
現在朝の5時。普通の高校生ならまだ寝ている時間帯である。しかし、彼にはこれから重要な任務が待っている。
それは・・・
「今日の朝飯は何作ろう・・・」
そう、朝食作りである。
まだ眠い目を擦りながら布団から起きだす。全身で伸びをし、体を動かし眠気を取ろうとするが、睡眠時間が足りないのか一向に眠気は覚めなかった。
しょうがなくそのまま、まだダンボールに入りっぱなしの新品の制服を取り出し着替えることにした。まだ誰も袖を通したことのない制服は生地が硬く着づらい。
ようやく着替え終わった響は軽く洗面した後、キッチンに向かい冷蔵庫の中を確認した。
「卵にチーズ、ケチャップとバターっと。あとはパンがあったかな?」
昨日、ここに来る前に買い込んだ食材を思い出しながら言い、冷蔵庫から取り出す。
そこからの行動は早かった。手早く卵をボールに割り、砂糖と塩で味付けし、暖めておいたフライパンで焼いていく。焦げ目がついたところで裏返し火を止めて余熱で焼いていく。その手際からは慣れが窺える。
さらに、パンの上にバターをぬり、その上にケチャップをぬる。そこにチーズを載せてトースターで焼こうとした時、
「おはよぅ、兄さん」
パジャマ姿の妹が声をかけてきた。
「相変わらず、ちょうどよく起きてくるな。もうすぐで飯できるから、さっさと顔洗ってこい。」
妹の心は朝が苦手なのだ。しかし、毎朝起こさなくても朝食ができそうになると勝手に起きてくるから不思議である。「ふぁ~い」というまだ半分寝ているような緩い声を背中で聞きながら、先ほどのパンをトースターで焼いた。
「ごっちそうさまでしたぁ~、兄さん早く学校行こーよー」
えらく上機嫌な心が言う。先ほどまでの眠気はどこへいったやら。はしゃぐその姿はいつもの心からは予想できないであろう。
「なんでそんなに楽しそうなんだ?」
「だってだって、学校だよ~?私たち勉強は昔からお姉ちゃんと修行ばっかりだったし、勉強はお父さんに教わってたから必要なかったし。学校なんて行ったことなかったじゃん」
「だから一回学校行ってみたかったんだよ」っと言う妹を見て響は考えていた。
(姉さんはそのことも考えて俺たちにこの任務を与えてくれたのかもな)
普段はあまりやさしい一面を見せない姉を思い浮かべながら苦笑する。彼らの姉は厳しさはあるものの、それはすべてが彼らを思ってのことである。それを分かっているからこそ、2人も今まで文句を言いながらも修行や勉強を続けてきたのだ。
「どうしたの兄さん?」
「なんでもねぇよ。そんじゃ行くか! 忘れ物するんじゃねぇぞ」
「そんなに子供扱いしないでよ!大丈夫。持ち物は昨日のうちに確認したから」
っと頬を膨らませながら言う妹を見ながら、ニヤニヤする兄響。
「な、なによぅ」
そんな兄の様子を怪訝に思った妹は兄を睨む。響がこんな笑みを浮かべるときは大抵が自分に損な結果に繋がってくるのだ。心にとっては警戒しておくべきである。
しかし、そんな妹の考えを分かっているのか、いつも通りの表情に戻り、警戒の視線をスルーしつつ
「そんじゃ行くぞ~」
と言い玄関に向かう響。内心では悪魔のような笑みを浮かべながら。
「ま、待ってよ、兄さん」
そこで、あわててついてくる心。置いて行かれるのではと表情にこそ出さないが内心では焦っている。しかし、彼女が気にするのはもっと別のことだった。
響は玄関で靴を履いたところで、再び悪戯をする前のような笑みを浮かべ振り返る。今度はもう隠す気がないらしい。心は怪訝に思うが、今気づいたとしてももう遅い。
妹のリアクションを楽しみにしながら彼は、
「ところでよ~、我が妹よ。その格好で学園に行くつもりか~?ニヤニヤ」
「・・・ッツ!?」
爆弾を投下した。
「いい加減、機嫌直せよ、心。俺はちゃんと指摘してやっただけだろ」
「いやです。兄さんは最初から気づいていました。何であのタイミングで指摘するんですか?」
「そりゃお前。その方が面白いからだろう♪」
すがすがしい位の笑顔を浮かべて言う。
「やっぱり・・・はぁ」
諦めた表情で溜息をつく心。兄の悪戯は今に始まったことではない。長年の経験から心は兄がドSであることを確信していた。
まぁ、これを響に言ったものなら、さらに弄られるだろうが。そんな兄を今まで嫌いになれない自分は実はMなのではないか。そんな疑問まで浮かんでしまう。
そんな考えを心がしてるうちに二人はあるドアの前に着いていた。
ここは藤歌学園の学園長室に続く廊下である。豪華な造りの校舎に驚いた二人だが、中は意外にも普通の学校という感じだ。
これから彼らは学園長であり、元七聖「斬鉄」であり、彼らの義理の父親である黒金 一心に挨拶に行くところである。
コンコン
「入りなさい」
響がノックすると中から威厳を漂わせる声で入室を許可された。
「「失礼します」」
そう言って中に入った二人の前には、大柄でがたいのよい60歳くらいの男性が机をはさんで反対側の椅子に腰かけている。頭は丸坊主で、お寺の住職のような格好をしている。首からは大きな数珠をぶら下げており、それが余計に威圧感を増しているようだ。
「久しいの、二人とも」
「親父も久しぶりだな。元気そうで残念だ」
「こらっ、兄さん」
「ほぉっほぉっほぉ、そういうお前も元気そうだな、馬鹿息子よ。」
「おかげさまで」
お互いに家族に向けるものとは思えない皮肉を言う。心にとっては心労が増えたような気がする。子は親に似ると言うが、それは義理の親子の関係でも成り立つのだろうか。
一通り挨拶? を済ませたのか、さっそく本題に移る。
「本日付けでお前たちを我が藤歌学園の生徒として編入する。任務内容は聞いておろう?」
「「はい」」
先ほどとはうって変って、お互い真剣な表情で話し始める。気を引き締める時は締める。それは姉の教えであり、魔導士として任務につくからには最低限必要なことである。
「相手の動きは全く掴めておらん。相変わらず訳の分らん奴らじゃ。お前たちにはその調査も含めて今回の任務に当たって欲しい」
「「了解しました」」
「うむ、さっそくだが、お前さんらのクラスを言っておく。響は2-A、心は1-Aじゃ。さらに2人には学園の風紀委員に参加してもらう」
「風紀委員ですか?」
委員会に入ってどうするのか、心の疑問は当然のものだ。自分たちの行動の幅を狭められれば、それだけ任務の邪魔になる。
「そうだ。風紀委員は学園内での魔法使用が認められておるし、ある程度の学校の権限も使える」
「任務の遂行がしやすくなるわけか」
「そうじゃ。風紀委員内では基本5人1組で班を作っているから、お前さんらの他にあと3人組んでもらうことになる。3人とも我が学園を代表する実力者じゃ」
「わかりました」
一心の説明に納得した2人は頷き、了解を示す。
「その他にも、その5人で学外の依頼もこなすことになると思うから、仲良くするのじゃぞ」
「はい」
続いて心が答える。この藤歌学園は魔導協会に集まる一般の依頼の中でも難易度が低いものを生徒に経験を積ませる名目で、生徒が依頼をこなすことがあるのだ。
「その3人には事前に伝えてある。2人は響と同じクラスで、1人は心と同じクラスじゃ。まぁ、クラスに行けば分かるじゃろ。放課後には訓練場に集まるように。それでは各々健闘祈る」
「「了解」」
二人同時に頷き退出した。
退出した2人はそのまま職員室に行き、担任の先生に挨拶をして、職員室を出るところだ。初めての職員室だが、自分たちの立場上、今までにも目上の人たちに接する機会が多くあった二人は、さほど緊張することのなく挨拶することができた。
「いよいよですね、兄さん。」
「ああ、そうだな。なるようになるさ。じゃ、また放課後にな」
「はい、それでは」
2人はそれぞれ自分の担任に連れられて教室に向かった。