おバカな婚約者さん、さようなら。純粋すぎる聖女様とお幸せに!~悪役令嬢…?ヒロイン…?私は一体どんな立場なの!?~
簡単に冤罪が晴れる婚約破棄物です。
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「アメリア!
今日限りで君との婚約を破棄する!」
夜会特有の賑やかさがその一言で一気に消えた。
学友達と歓談していた私こと、公爵令嬢アメリア=オクティスは、お喋りをやめて婚約者であるライオネル=フィオレント公爵令息を見た。
ライオネル様の隣には水色のまっすぐな髪に銀色の瞳の美しい女性、聖女アンネ様がいた。
アメリアはゆっくりとライオネル様のほうに向かっていく。
そして、あと1歩で到着というところで立ち止まり、ゆっくりとした仕草で扇で口元を隠しつつ目を伏せて尋ねた。
「婚約を破棄、ですか…?」
このとき、もし誰か1人でもアメリアの口元を見た者がいれば気付いていただろう…。
アメリアが隠した扇の中で嬉しそうにしているのを。
アメリアの悲しそうな声を聞いたライオネルは一瞬言葉に詰まったが、横にいるアンネを見て再び発言を始めた。
「そうだ!
お前はたかが一公爵令嬢にも関わらず、俺と仲がいいという理由だけでここにいるアンネを虐めた!」
「アメリア様…。私は聖女です。
一言謝罪して頂ければ何も言いません。
罪を認めてくださいっ…」
「アンネ…!
君は何て心の優しい人なんだ…!
こんなアンネを虐めるなんてお前はどうかしている!
すぐに謝るんだ!」
次第にまわりがざわついてきた。
最初は皆何を言ってるんだろう?みたいな雰囲気だったにも関わらず、アンネの発言あたりからアメリアに対して冷たい目線が混ざり始めた。
それはそうだろう…。
見た目も心も美しい聖女だ。
そちらを信じるのは当たり前なのかもしれない。
…………。えぇー…。
婚約破棄出来るのは嬉しいけど、これはちょっとなぁ。冤罪とか絶対嫌だし。
え?これ認めないと駄目な空気になってない!?やっばぁ。私、冤罪で謝罪とか絶対嫌なんだけどぉ!?
この世界って乙女ゲームだったりするの!?私こんな物語知らないよ!?
まさかの悪役令嬢的なポジション!?
実は、アメリアには前世日本というところで過ごしていた記憶があった。
ただ、記憶はあるものの、この世界に似たようなゲームや小説などは全く記憶になかったため、普通に令嬢として過ごしてきたのだ。
「アメリア!
何とか言ったらどうなのだ!」
「申し訳ございません。
あまりにも驚いてしまって…」
「そうだろう。
まさか、俺達がいじめを把握しているとは思わなかったであろう」
「あ、いえ。
いじめは全くしていないので冤罪なのですが…それを当たり前のように私がしたとおっしゃるので、つい驚いてしまって…」
ここで、またまわりが少しざわついた。
虐めただろうと決めつける者、やはり虐めてはいないだろうと言う者。
「そんなっ…。
私、確かにアメリア様に虐めるよう依頼されたと聞きましたっ…!」
「あの、それはどちらの方でしょう…?
私全く存じ上げないのですが…。
それに、そもそも私ライオネル様のことお慕いしておりませんよ?
この婚約は親同士が勝手に決めたもの。
ですので、お二人の仲がよくても全く構いませんの。
それで、どちらの方がおっしゃったのでしょうか?」
まわりは、もはやどちらの言い分が正しいのかわからなくなっている。
アンネはアメリアに虐められたと思っているし、アメリアは虐めていないし、そもそもライオネルのことを好きではないので嫉妬なんかしないと言っているようなものだし、ライオネルもだんだんわからなくなってきた。
「え、あの…。
あちらとあちらの方達です…」
言われたほうに目を向けると、おどおどしている女性2人がいた。
あれは確か…ライオネル様とアンネ様を見てはしゃいでいるお二人では…?
あぁっ!もしかして、お二人の中ではライオネル様とアンネ様の仲を引き裂く私は邪魔者。つまり排除されるべきだと思われていたのでは…?
声をかけられた令嬢達は顔を青くしながらも、
「ライオネル様とアンネ様のほうがお似合いです!」
「アメリア様はお二人の邪魔にしかなりません!」
などと、勝手なことを言ってくれている。
「なっ、君達の勝手な思い込みで俺達にこんなことをさせたのかっ!?」
「あなた方が私に色々して、アメリア様のせいにしたの…?
アメリア様は本当は何もしていなかったということ…?」
アンネは事実を知って顔を青くさせながら、
「アメリア様、申し訳ございません。
私がきちんと調べもせずに、彼女達の言うことを鵜呑みにしてしまい、結果このようなことを起こしてしまいました。
聖女としてあってはならないことです…」
「アンネ様。
誤解が解けてよかったですわ」
アンネ様同様、顔色を悪くしたライオネル様がこちらを見て、
「アメリア、申し訳なかった。
アンネの言うことを信じ、確認もせず君を責めて婚約破棄まで宣言してしまった。
冤罪ということが明らかになったんだ。
婚約破棄は破棄しよう。
最初からやり直そう!」
「ライオネル様。
気になさらないでください。
婚約破棄は、そのままで結構ですわ。
やはり、一度宣言したものの取り消しは難しいと思いますの。
こんなにも証人がいますし」
「え、アメリア…?」
「私の冤罪も晴れたようですし、これで失礼しますわ。
ライオネル様、婚約破棄の書類は後日父のほうから届くと思いますので、よろしくお願い致します。
それでは皆さま、ごきげんよう」
はぁ、すっきり!冤罪は晴れたし、婚約破棄も出来たしいいことだらけね!
婚約破棄の破棄なんて絶対嫌よ。
あの人、無意識なんだろうけど、アンネ様のこと呼び捨てしてたのよ?
それって、ねぇ…?
いつからとか、どんな関係とか、いろいろ根掘り葉掘り聞き出したいけど、もう関係ないわね。
それより早く帰りましょう。
その後、会場に残された二人の元にある書類を持った人物達が向かったのだが、そのことをアメリアが知ることはなかった。
家に帰宅したアメリアは父親に全てを話して領地に引きこもることにした。
まさか、その領地であんな出会いがあるとは知らずに、アメリアはウキウキとした気分で出掛けて行くのだった。
きっと、知っていたら行かなかっただろう…。
「アメリアさん、僕と一緒に行きましょう」
「アメリア、私と同じ時間を過ごしてください」
「俺様の番、幸せになろうな?」
「おいアメリア、行くぞ!」
「私はのんびりここで過ごすのー!!!
やっと、公爵令嬢の立場から離れて前世みたいに自由に暮らそうと思っていたのに、何で私がヒロインみたいになってるのよー!?」
9/21 誤字報告ありがとうございました。
「アメリア様はお二人の邪魔にしかな【り】 ません!」に訂正しました。
9/23 誤字報告ありがとうございました。
”アメリア【様】はゆっくりとライオネル様の ほうに向かっていく。”の【様】を削除しまし た。
9/24 誤字報告ありがとうございました。
「…。」など、台詞の最後に句点をつけたまま にしていたので、「」内の最後にある全ての 句点を削除しました。