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第十六話

「コーダの実の種、フォルテの木の皮、テヌートの茎……」


 オルガン様たちを引き連れ、庭園に着くとすぐにシンバルに声をかけた。

 私のお願いを快諾して、ニコニコ顔で次々と必要なものを取ってくれる。

 初めて会った時の仏頂面が嘘みたい。

 シンバルが採取している間に、私はクラリー様に薬草の説明をしたら、興味深そうに聞いてくれた。

 ひとつひとつの説明に驚いたり、質問を投げかけたり、とても表情豊かに聞いてくれるので、説明している私も楽しい。


「凄いですわ! お花の名前を覚えるだけでも大変ですのに、お花が咲かない草木の名前もたくさんご存知で! しかもそれを使ってお薬を作れるんですもの。ビオラ様は素晴らしいわ」

「クラリー言っただろ? なんてたって、兄上の奥方だからね。ビオラ姉様は凄いに決まってるのさ」

「おいおい……その凄いビオラとの結婚を認めない! と叫びながら俺の静止を振り切ったのはどこの誰だった?」

「あ! いや……それは……その」

「まぁ。そんなことおっしゃったの? オリン様」

「いや。違うんだ……クラリー」


 オリン様は普段はしっかり者に見えるのに、オルガン様の前では凄く子供ぽくなるのよね。

 今日はクラリー様がいらっしゃるせいか、余計に。

 うふふ。とても楽しいわ。

 あら! そうだわ。

 オリン様とクラリー様が結婚なさったら、クラリー様は私の義理の妹になるのね。

 なんて素敵なのかしら。


「それにしても。木の皮なんて使うのね。お薬の原料なんて考えたこともなかったわ」

「色々使うのよ。食べるだけなら実や太った根が多いでしょうけれど」

「木の皮を食べるのかしら。歯が心配だけれど」

「うふふ。このまま食べないから安心してください。皮は煎じて使うんですの。長い時間煮て、その後も焦がさないようにゆっくりと煮詰めないといけないから根気が必要だわ」


 種は割って中を取り出して使うし、茎は乾燥させてからさらに炒って、すり潰さないといけない。

 どれも大変で時間のかかる作業だから、始めるのは明日からね。


「あら。食べるわけじゃないのね。うふふ。ビオラ様って想像していた通り、素敵な方ね」

「ありがとう。そういうクラリー様も素敵よ」

「オルガン様の奥様がビオラ様で良かったわ。早くお義姉様ってお呼びしたいわぁ」

「まぁ……あの……」


 クラリー様の言葉に思わず涙が頬を伝う。

 私がクラリー様が義妹になることを喜んでいるだけじゃなく、クラリー様も私が義姉になることを歓迎してくれてるなんて。


「あらあら。ビオラ様。大丈夫?」

「ごめんなさいね。嬉しくて」


 気付いたらオルガン様が綺麗なハンカチを私にそっと手渡してくれた。

 涙を拭き取り、笑顔を作る。


「私、義理の妹がもう一人いるの。父は同じで母が違う人。残念だけれど、その人とは仲が上手くいってなくて。クラリー様がそう言ってくれて、私とっても嬉しかったの」

「まぁ! そうだったのね。私がその方の立場なら、きっとオリン様みたいに、ビオラ様をお慕いすると思うわ!」

「うふふ。ありがとう。私もクラリー様が義妹になるのが待ち遠しいわ。さぁ、必要な薬草は全部取ったから、お茶にしません? クラリー様も歩き疲れたでしょうし」

「それはいい提案だわ。実というと、今とっても座りたい気分なの」


 笑顔で私の誘いに答えてくれたクラリー様を見て、オリン様がおどけた口調で叫ぶ。


「助けてシンバルー。ビオラ姉様が俺の大事な人の心をどんどん奪っていくよー!」

「はっはっは。そりゃ仕方ない。ビオラ様は見た目だけじゃなく心もべっぴんさんだからな! 俺もすでにぞっこんですぜ」


 二人のやり取りを聞いて、私も声を出して笑った。

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