嫌い、だけど。
皆さんこんにちわん!美羽です!
私の小説で少しでも皆さんが笑顔に、そして本との素敵な出会いになれますように。
本編、どうぞ!
朝の光が眩しい。
私は今は一人暮らしをしている。
高校生だけど、どうしてもとお願いしたら、2日に一回は孤児院の先生が来るという条件付きで許された。
私は鏡を見る。パッとしない紺色の、巻いたようなクルクルした背中まである髪の毛。エメラルドグリーンのカラコン入りの目。私は素早く編み込みハーフアップに髪を整える。開けた窓から入る風が髪をさらさらと揺らした。
私は着替え、白いブラウスに紺色と白のネクタイ、クリーム色に学校の紋章が入ったブレザー、そして紺色と空色のチェックのスカートを履く。紋章の中の羽が今にも落ちてきそうだった。
朝のご飯はフレンチトースト2枚と牛乳、サラダ。
簡単な朝ごはんを食べ終わり、学校へ行く用意をする。私は白く、規則的に花の模様の入った壁を見つめた。いや、正確にはそこにかかった写真を見つめていた。
昔、元気いっぱいだった頃の私と、当時仲の良かった同じく元気な男の子。いつもあだ名で呼んでいたけれど、苗字からとったあだ名のせいか、今は下の名前を忘れてしまった。
ただ、苗字は柊木だ。ちゃんと覚えてる。いつも「ヒーラくん」と呼んでいた。よく遊んでいたけれど、親の転勤をきっかけに私達は連絡が取れなくなった。今、”ヒーラくん”がどこでどうしているのかは、分からない。優しくて、私は”ヒーラくん”が大好きだった。素直で人懐っこくて、可愛かった。たまに急に会いたくなる時がある。
そういえば、彼は金髪だった。私の知っている金髪の人は、彼の他に龍虎結翔しか思いつかなくて、それを追い払うために頭を振る。
ヒーラくんは優しい。そしていつも私に笑顔を見せる太陽みたいで、彼といる時間は楽しかった。
でも、あいつといる時間は楽しくない。
私は時計を見て学校へ行くことを思い出し、いそいで勉強道具や教科書を詰め込むと、急ぎ足で家を出た。
「……えっ。」
「雪香ちゃんだ!やっほー。」
「私は雪香であってファンじゃない。」
「はいはい。せっかくだし一緒に学校行く?」
「無理!」
2階の廊下を歩いている途中で龍虎結翔と会ってしまった。
朝から最悪だ。
その時、私は降りる階段があることに気付くことが出来なかった。
あ、と思った時には足が滑っていた。
衝撃に耐えようとしたけれど間に合わない。そう思った時だった。
衝撃が、こない。
体が、何かにささえられていた。
「っと、あっぶねー。足元ぐらいちゃんと見て?すぐ死ぬよ?」
物騒な言葉が並ぶ。
でも、助けてくれたのには変わり無かった。
ありがとう、と言おうとしたけれど、言葉が出なかった。
言えない。変なプライドがそう言っている。
言わなきゃダメだとわかってる。でもそう考える度に変なプライドが迫ってきた。
「何、照れてるの?そりゃ俺のファンだもんなーそっかそっか!」
そう言ってくれたので軽口が叩けるくらいその場が和んだ。
……もしかしたら、私が困っていたから?
いや、そんなはずないと私は自分へ言う。彼は心が読めないのだから。
「……何回言ったら分かるの?」
いつものように軽口を叩いた。
「私はあなたのことなんて、大っ嫌いだから。」
私はまた2階の階段へ戻る。ただ同じクラスの彼も一緒に付いてくる。理由はわかっているのだけれどやっぱり気に食わない。
しかも、歩幅を合わせてわざと自分が先に行かないようにしている気がする。彼の歩幅は男子なので私よりは大きいはずだ。
「なんで、先に行かないの」
私は苛立って聞いてしまった。
「雪香のこと、心配になっただけ。あんなこともあったし?」
「なんでちょっと上から目線なのよ……」
ムカつくけれど、心配してくれてることには変わりない。なのに私は『ありがとう』さえ言えなかった。
「……最低だね、私」
その言葉に龍虎結翔は無言だった。
「なぁ」
ふいに彼が言葉を発した。
「雪香も俺の事呼べよ、呼んだことないだろ」
いきなりそんなことを言われ、面食らってしまう。
「……龍虎結翔」
「他人行儀だなぁ……結翔でいいよ」
は、と思わず声が出そうになった
「ぜったいやだ」
「もしかして呼べないの?あれあれ?」
そうだ、龍虎結翔とはこういう人間だった……。
一瞬でもその煽りが無くなったので少しだけど忘れてしまっていた。
そして私は売られたものは買ってしまうめんどくさい性格だった。
「そのくらい呼べるよ。ゆ、結翔……!」
「よし、合格!」
いきなり彼はにこっと笑顔を作った。
作り笑いでは無い本物の笑顔。笑うと幼く見える。
そういえばここまで笑った顔は、あまり見た事なかった。
───笑うと、ちょっと憎めなくなるじゃん───
私はそう小声で呟いたけれど、チャイムの音と重なって彼には届いていないみたいだった。
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