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キミが嫌い。

チャイムが鳴り、一斉に生徒たちが帰り出す。


そんな中、私はしかめっ面で外を眺めていた。理由はもちろん、さっきの人と会ってしまったから。


人と関わりたくなんか無かった。特にあんな人と。勝手に自分の価値観を押し付けて、自分が偉いとでも言うようなその態度に、私はうんざりしていた。


龍虎(りゅうこ) 結翔(ゆいと)。サッカー部元気ハツラツ男子。母親がハーフらしく髪色は金髪で目は藍色をしている。顔が可愛く、また時にはかっこいいらしい。苗字は古来の和風という感じがして、見た目とあっていないと思うのは私だけっぽい。


それはいいけど、その中に優しいや人気者まで入ってるのには納得がいかない。なんであの人が優しくて人気者なんだろうか。正直に言うと意味がわからない。


彼が私に最初に発したのがあの言葉。思い出すだけで燃えるような怒りがまた込み上げてくる。


ただ、外を見るとまた彼がいた。こっちを向くようなこともないだろうと思い、わざと睨むような視線を送る。ただあまり人に見られると誤解が生まれそうなのでそこそこにして帰る支度を始めた。


「え、まだいたの?俺を見るために?」

「……違う」

「ツンデレなファンちゃんだなぁ。飴でもいる?」


なんでそうなるの、と突っ込みたくなるのを抑える。二度と会いたくなんかないと思っていたけれど、会ってしまった。そりゃあ学校が一緒だから二度と会わないというのは転校でもしない限り無理だけれど、こんなに早く会うとは思わなかった。


校庭は学校の正門と真反対なのになんでだろう。その答えはすぐに消えた。目の前で水道の水を飲み始めたからだ。


……どうでもいい。早く帰ろう。

そう思った時だった。


「俺のファンだから名前覚えてあげないとなぁー、えーっと……雪香(ゆきかな)、だっけ?」


最初から呼び捨てとか……1番嫌いで苦手なタイプ。苗字呼びだという所だけは少しマシだけれど。


「なぁ、下の名前は?」


そう聞かれて、答えないように逃げようかと思ったけれど、相手はサッカー部。クラス足の遅い順TOP5に入る私なら全力で走ったって到底叶わないだろう。正直に言うことにした。


「……雪香(ゆきかな)小夜(さよ)。言っておくけど、あなたのファンじゃない。」


嫌いだと言わなかった私を褒めて欲しい。そんな人誰も居ないけど。


「ふぅーん、そこまで否定するんだ?」

「私はサッカー見てただけなの。あなたのことは見てない。」

「今の、あなたのこと見てたって言ったら告白だったんだけどなーっ!」

「……何言ってるの、頭大丈夫?」

「え、泣くんだけど!普通に人として酷い!」


子供っぽくなった彼を無視する。その間を冷たい風が吹き抜けていった。空の雲行きが少し怪しくなってきたのでそろそろ置いて帰ろうかと思ったその時だった。


「俺ってさ、人気者じゃん?モテるじゃん?でもさー好きなタイプがさ、なんていうの?その、あんま居ないわけ。」


急に何を言い出すかと思えば、恋愛の話。


それは最も私が嫌いで苦手な話だった。この人、どんだけ私が嫌いなんだろうか。嫌がらせにしか思えない。


でも、相手は私のことを知らないから黙っていられる。


これで実は私のことを知っててドッキリでしたー、みたいにやられた時はこの人を殴って蹴り飛ばす。実は私は空手7級をとっていて緑色の帯。結構強い。だけど足の速さはそれに比例してくれない。なんて理不尽な世の中だと悔やんだこともあった。


まぁ私の話は終わる。彼はさっきの続きを話してこない。これは私が「それで?」とかと聞かなきゃいけないんだろうか。それは無理だ。即答させてもらう。そこまでなったら走る。追いつかれても何されても走る。


けれどその必要はないらしい。彼から話を再開してくれた。


「ファンの子はいっぱいいるんだけど、慕って欲しい訳じゃなくて自分と同等でいたいんだよ、俺は。だから、最初は小夜のことも……」


……先生が見ていませんように。

そう願い、私は少し加減をしてこいつを殴った。


小夜って呼ぶな。極力人との関わりを避ける私にとって、それは絶対に許せない。ここが学校じゃないなら本気で殴っていたかもしれない。学校で良かった。犯罪は起こしたくない。


幸い、彼は体が丈夫で、怪我程度だった。

心のどこかでもう少しやっても良かったなとか思っている最低な自分を正義の心が押し潰した。

また話しを再会しようとする彼を置いて、


「次小夜って呼び捨てにしたら本気になるから。」


そう言って走り出した。


第一印象だけではなく、もうこれは性格が私の苦手なタイプだとしか思えない。立ち尽くしてる彼を背中でとらえた。


彼は追いかけて来なかった。


私は冷たい風を頬に感じながら、彼が追いかけて来ないとわかっていても、走った。


彼とはやっぱり関わりたくない、と本気でそう思った。


私と彼は生きている場所が違う。環境も、周りも、何もかも違う。だからこうなるんだ。もうなるべく関わらないようにすれば、きっと学校生活は問題ない。


そう思って、私は開き直り、家へゆっくりとした足取りで帰った。

いつも見て下さりありがとうございます!

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