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ドア開けたら戦国時代!?  作者: デンデンムシMK-2
第一章
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惚れてまうやろ!?

 朝っぱらからこんなヘトヘトなのは初めてと言うくらいヘトヘトだ。


 「武蔵君!明日もやるぞ!徐々に身体を作り誰にも負けぬつわものになるのだ!ははは」


 物凄い意識高い系な前田さんだ。勘弁してほしい。というか今日は帰る!絶対に帰る!


 昨日の女の人に手拭いで汗を拭いてもらい服も着せてもらった。案外この生活嫌いじゃないかも!?


 そして部屋に朝飯を持って来てもらう。昨日と同じメニューだ。さすがに2日連続は勘弁してほしい。というか卵焼きが非常に食べたい。


 「えっと・・・少し構いませんか?」


 「は、はい!どうされましたか!?」


 「朝の汗拭きとかこんなヒョロガリなヘナチョコ男を気遣ってもらいすいません。ありがとうございました。名前はなんていうのですか?」


 「あやめと申します」


 「あやめさんね?あやめさんは甘い物とか好きですか?明後日にお礼を何か持ってきますね」


 「い、いえ。そ、そんな私如きに配慮なぞお気になさらず・・・。殿に叱られてしまいます。堪忍してください」


 え!?何で!?それだけで叱られるの!?おかしいだろ!?よし!ここはオレが一発信長さんに直談判してやろう!


 そう意気込んでいたが直ぐに無理だと気付く。城中に信長さんの怒声が響いたからである。


 「誰がこの飯を作った!呼び出せッッ!!ワシ直々に成敗してくれる!!」


 オレは慌てて声が聞こえた方に向かうがちょうどそこには池田さんが居て、オレは手で制される。


 襖の隙間から中を覗くと殴られている中年の男性が一人居て、豪華なお膳がひっくり返っている。


 シャキンッ


 「ヒッヒィィィィ〜〜・・・・」


 「ぬくぬくと城で過ごす料理人共が!味が似てないのは仕方がない!だがワシはらーめんなる物を作れと申した!何故それが米になるのだ!貴様にも昨日見せただろうが!!」


 ゴツンッ


 「大殿様!申し訳ございませぬ!昨日のような麺はどうやっても再現できず変な味にしか作れなかったため米に致しました!!!どうか・・どうか・・・」


 「ワシは失敗は許す!間違いを正せば直るからだ!だが怠慢は許さん!分からぬのなら聞きにくればよかったではないか!それをせず貴様は昨夜深酒していたそうではないか!」


 たかだか飯の事でさすがに酷すぎじゃありませんか!?この時代でラーメンを再現とか無理ゲーだろ!?あのおじさんが可哀想だ。怖いけど見てられないわ。


 オレは池田さんの手を潜り部屋に入る。


 「あっ、武蔵!馬鹿・・・」


 池田さんの静止させる声が聞こえたが無視だ。


 「なんじゃ!取り込み中ぞ!」


 「やめてください」


 陰キャのオレが・・・喧嘩はした事ない。なんなら虐めかけられてたオレが・・・彼女居ない歴=年齢のオレが・・・目の前の巨大な悪の化身のような人にタメ口を説いてしまった。


 「は?もういっぺん言ってみよ」


 うん。明らかにターゲットがオレに変わった事が分かった。それが分かると現れるのは震えだ。後悔先に立たず。


 気付けば昨日のメンバーの半分が廊下に立っていた。


 「おい!小僧!お館様の成す事に不満があるようだな?貴様はどれ程の者だ?たかだか珍しいーー」


 「佐久間は黙っておれ」


 宿老だか家老だか分からないけど顔真っ赤だろうな。


 「言え。何故ワシを止める?ワシを否定するのか」


 「い、い、いえ。・・・・す、すいません。恐怖でこ、声が上擦ってしまいますが・・・あれはなかなか1日では作れない物ですし料理で人を叱責するのはどうかと思います」


 あぁ〜・・・言ってしまった・・・終わりだ。終わり。池田さんの部屋どっちだっけ?走って逃げてしまおうか・・・。


 「ほう?ワシに楯突くとはそれ相応の覚悟があるようじゃな?」


 はい!まったく覚悟なんてございません!なんなら何故飛び出したか自分でも分かっておりません!!


 ゴツンッ


 気付けば再びグーパンチだった。


 「これで堪えてやる!伊右衛門!貴様は此奴にらーめんなる物の作り方を聞け!明日の朝、今一度持って来い!」


 「は、ははぁー!!!」


 「武蔵!お前は・・・いや良い。誰ぞある!遠乗りじゃ!」


 信長さんが退席するとオレは恐怖のあまり腰から崩れ落ちてしまった。そして、すぐさま前田さんが来てくれた。


 「怖い物知らずだな?さすがの俺でもあの威圧の中真っ向から対峙はできぬぞ?見かけによらぬとはこの事だな!」


 「いえ・・・ただ何故か勝手に体が動き声が出ていました。伊右衛門さんでしたっけ?たかだか料理一つで死なすのは可哀想すぎだし、理不尽すぎだろうと・・・」


 「あぁ。そうだな。だがそれがお館様だ。およそ凡人には分からない境地に立つお方だ。それでこそ我らの殿でもある。それにこれだけで済んだのは武蔵君を気に入っている証拠だ」


 「へ!?どういう意味です?」


 「振り上げた矛は振り下ろさねばならない。抜いた刀は振らなければならない。あの場で刀を振り下ろせば伊右衛門か武蔵君の首と胴が千切れていたであろう?それを拳で収めたのだ。お館様の優しさだ。その事を覚えておけ!俺は今からお館様について行く。来るか?」


 「い、いえ。俺も一度戻ります。また土産持って来ますので」


 「そうか。あまり気にするな。あぁいうのはいつもの事だ」


 何故か寂しい気持ちになってしまった。


 そして同じく腰を抜かしている伊右衛門?さんに声をかけた。


 「こんにちわ。ラーメンは小麦に色々混ぜ物されてあるので難しいですよ。今日の夜までに持って来ます」


 「な、何故ワシを助けた!?」


 「何ででしょう?分かりません。ただこんなつまらない事で刀を抜くような人と思いたくなかったってのもあるかもしれません」


 「どちらにしろ気に入る物を作らなければならない。お主に託す・・・」


 まぁ、小銭をかき集めれば麺くらいは買えるかな?明日給料が入ればラーメン用の小麦買ってくればいいかな?


 そんな事を考えていると、あやめさんが濡れた手拭いを持ってきてくれた。こんなんされたら・・・惚れてまうやろ!?!?こちとら彼女居ない歴=年齢の魔法使いやぞ!?惚れてまうやろ!?


 「合田様お冷やしください」


 「あ、あ、あ、ありがとうござござございます」


 肝心なところで吃ってしまう・・・。クッ・・・女に耐性がないのはダメだ!里志君も最初はこんな感じだったんだろ!?


 あやめさんからの優しさの手拭い片手に池田さんに言伝をしてばあちゃん家に戻る。ただ、手拭いを貰う時にあやめさんの手を見たが、あかぎれのような手だった。薬も持っていけばいいかな?


 「ばあちゃんただいま。じいちゃんただいま。ヘルメットは何も誰にも言われなかったよ」


 「「・・・・・・」」


 いつも通りの独り言だ。


 オレは財布の中の小銭を数える。


 「800円もある!バイト先にも少しだけ生鮮食品がある。確かその中にラーメンの生麺もあった気がする!よし!行こう!」


 チャリを飛ばしバイト先まで来た。やたらみんながオレを見てくるけどなんかオレしたか!?


 「おぉ〜!武蔵君!今日は休みじゃないのかい?それにしても武蔵君は和服が好きだったのか?」


 「田中さんお疲れ様です!和服?あっ!?そうだった・・・」


 オレは岐阜城で借りた服だった事を忘れていた。そりゃ目立つし注目されるよな。ここは気にすれば負けだ!趣味として押し通す!


 「そうなんすよ!実はこういう服が好きなんですよ!慣れると意外に楽ですよ!?今日は買い物したくて来ました!」


 「そうか。いや僕は知らなかったよ。それで何が欲しいんだい?バイトリーダーの僕に何でも聞いてくれ!今日は武蔵君はお客さんだからね!ははは!」


 さすがホームセンターみんなのABCのヌシの田中さんだ。


 オレは生麺二つと2リットルコーラを購入し会計を済ませる。そして残り300円程となったがレジ横にあるチョコバー二つ購入した。うん!気持ちの良いくらいにマジのすっからかんになってしまった!


 となりのレジでは小学生くらいの男の子が一人で木工用ボンドを購入していた。バリバリ財布の中から1000円を出していたが今やオレは小学生の子よりお金がないのかと思うと涙流れてきそうだ。


 「うん?買い物はそれだけだったのかい?」


 「はい!給料日前でカツカツなんっすよ!それじゃあ失礼します。また明後日からよろしく、お願いします」


 「そうか!あまり無駄遣いするんじゃないぞ?特にキャバや風俗なんかにハマると身を滅ぼすぞ?」


 いやそれは大丈夫っす。オレ好きな人ができましたので!!


 と言いたいところだが田中さんにはただならぬオーラを感じるため秘密にしておく。そもそもこっちに連れて来れないしな。あんなに綺麗な人なら旦那さんも居るかもしれないし。


 後はオレが来たのに目を合わせてくれない店長やパートのおばちゃんに軽く挨拶だけして店を後にした。寄り道したくとも先立つ物がもうないため真っ直ぐ家に直行だ。


 スポーツバッグに着替えとレトルトカレーとさっき買った物を入れて準備完了だ。


 少し汗臭い気がしたため軽くシャワーを浴びて後はドアを開くだけ・・・おっと!忘れてた!確かばあちゃんのタンスの中にあったはずだけど・・・これだよ!これ!


 「ばあちゃん!薬貰っていくよ!女の子が困ってるんだ!今日は帰ってくるから行ってくるよ!じいちゃん!ヘルメットは多分要らないと思うから置いておくから!」


 オレのいつものような問いかけにやはり写真のばあちゃんは変わらない笑顔のように見える。薬は大分古いしばあちゃんの使い掛けだけど大丈夫かな?ただ何故かじいちゃんは少し寂しそうな顔をしてるように見えた。


 ばあちゃん、じいちゃんが亡くなった時はあれ程泣いたし寂しかったのにこの家に来て外出してる時間の方が長いが側に居てくれてるような気がする。不思議なもんだな。


 そう思いながらドアを潜った。

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