あやめの現代での奮闘3
「へぇ〜!ここが合田君の家か!歴史のありそうな家ね」
「はい。池田さん・・すいません。ありがとうございました」
「いいのよ!本当は蔵を見せてもらいたいけどそれはまた今度お願いね?あれ?あやめちゃんはどうしたの?なんで顔が引き攣ってるの?」
「い、いえ!な、な、なんでもございません!」
これが車・・・感じた事のない速さでビュンビュン走っていた・・・くわばらくわばら・・。
「とりあえず、由佳ちゃんには私から伝えてあげるから、リニューアルの日には間に合わないと思うけど、どうせ最初は色々決め事とかしないといけないから合田君はゆっくり休みなさいね!あやめちゃん!またね!」
「は、はい!ありがとうございます!」
「池田さん・・・本当にありがとうございました」
さぁ、これから大変だ!お布団を敷いて合田様には寝てもらわないと!いやその前に医者は食後に薬と言っていたよね!先に食事を作り・・・
これがプラシーボ効果なのだろうか・・・。さっきまで寒気がしてたけど、病院に行ったら治ったように感じる。
ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ
「合田様?お熱は何度でしたか?」
「変わらず39度だよ」
あやめさんは俺の事を看病してくれている。嬉しい事だ。熱は変わらず高いけど少し暑く感じる・・・。あやめさんは何を作ってくれてるのだろうか・・・。食欲はあまりないんだけど。
「はい!お待たせ致しました!この書物によりますと、風邪にはたんぱく質なるものを摂るのが良いそうです!なので、合田様が好きな豚肉のヒレ、照り焼きを作ってみました!」
「お、おぅ・・・」
「後は、鶏胸肉とナスの甘酢漬けなるもの、焼き梅干し、卵入りおかゆ、を作りました!味見致しましたが大変に美味です!」
「あ、ありがとう・・・」
「焼き梅干しには、ムメフラールという物質が代謝を良くして血液の流れを良くしてくれるそうです!」
「そっか・・・いやあやめさん凄いよ。ありがとう。いただきます」
こんなに沢山食べられないよ!?いや・・・ここで残してでもみろ!せっかくあやめさんが作ってくれたのに残す選択肢なんてあるわけないよな!?考えてはダメだ!とにかく胃の中に入れてしまえ!!
「ハスッ ハスッ ハスッ ハスッ………」
まぁ!?あんなにがっついて食べられるなんて・・・余程お腹空いていたのでしょう。初めて作るものばかりだったけど味に関しては元亀の時代も令和の時代も変わらないと見える。
本当に凄い食べっぷり・・・これならインフルエンザなる病魔もすぐに良くなるでしょう!あっ!?もう二つもお皿が空いている!?お代わりを出さないと!!
「合田様!どうぞ!まだまだありますのでいっぱい食べてください!!」
「え!?あっ・・は、はい!!が、頑張ります!!」
う、嘘だろ!?なんでお代わりを勝手に、よそってくるの!?いや嬉しいよ?嬉しいけど・・・これは違う・・・
「ウップ・・・あやめさん・・ごちそうさまでした。もう食べられません・・・」
「本当に凄い食欲でしたね!完食されるとは思いませんでした!後は・・・薬をお飲みください!1日1回食後なので今です!どうぞ!」
「ありがとう・・・ございます・・ウップ・・」
「はい!よく飲めました!薬も粉ではなさそうですので苦くなさそうですね!後は座薬なる薬です!38.5度以上なら使用していいと説明に書いています!えっと・・・これはお尻からですか!?」
「座薬は自分でします!」
「いけません!合田様の面倒、看病は全て私の役目です!!さぁ!召物を・・・あっ!汗もかかれているようですし、お着替えもしましょう!タオルはどちらに・・・あそこですね!少々お待ちください!」
マジかよ・・・着替えはまだしも、母ちゃんにすら座薬は入れられた事ないんだぞ!?無理よりの無理だろ!?
「お身体拭かせていただきますね!それにしても未来とは便利ですね!朱色の取手を回すだけでお湯が出てきますし、冷蔵庫なる物のお陰で食材の保存もできますし」
「そ、そうですね・・・ま、前は自分でーー」
「いけません!合田様は横になっててください!ジャージなる召物が楽と言われていましたよね?これでいいですね?下に履くのはこちらで間違えないですね?」
あぁ・・・抵抗できない・・・いや抵抗したくはないけど・・これは違う・・・。しかもいつもなら愚息が反応するはずなのに今日はヘナヘナだ・・・。
「し、失礼します・・・」
「あっ・・・あやめさん・・・すいません・・・ごめんなさい・・・」
「構いません。私に全てをお任せください!私は合田様の妻です!私は合田様が喜ばれるなら地獄の蓋だって開けます!」
オレは俎板に乗せられた魚のようにジッとしている事しかできなかった。あやめさんの手は優しく、腋や首、顔・・・下は股や足に掛けて全てを温かいタオルで拭いてくれた。ヘナヘナな愚息も丁寧に拭き拭きしてくれた。これが本調子の時なら危うく絶頂を迎えていただろう。
「はい!終わりました!後は・・・後ろに向いてください!」
「は、はい・・・」
思わず敬語になってしまった。そして、羞恥心マックスのオレ・・・。最早何も言えない。あやめさんにお任せするしかできない・・・。
「恥ずかしがらないでください!いれますよ!」
「ふぐっ・・・」
これはアレか!?アァーッ!な展開なのか!?
だが、そんな事考える事すら虚しく・・なんでこのタイミングなのかという事が起こった。いや、来たと言えばいいだろうか・・・。
「ふっふ〜ん♪おや?あやめさんじゃな・・・む、武蔵君!?なにをやっとるのだ!?」
「え!?た、田中さん!?なんで帰って来たのですか!?」
ガチャガチャ
「あっ!みんな揃ってるんなんて珍し・・・武蔵!?ケツ出してなにやってるんだ!?」
「キャァ〜!!!」
終わった・・・断じてイヤらしい事はしていない。普通に座薬を入れてもらってただけだけど・・・ダメだ・・・。




