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ドア開けたら戦国時代!?  作者: デンデンムシMK-2
第一章
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田中改革

 案内された場所はいつもの大広間だ。入った横が一段高くなっている信長さんの場所が座るところより少し下がって腰を下ろす。


 「田中さん?くれぐれも気をつけてくださいね?」


 「だ、大丈夫だよ!こんな事でき、き、緊張する男じゃないから!」


 いやいやめっちゃ、緊張してるじゃん!と心の中でツッコミを入れてしまう。


 ドタドタドタドタ


 「おぅ。来たか。構わん。もう少し近う寄れ」


 「はい。失礼します」


 毎回だがこのやりとりは城では重要らしく毎回している。そして目の前まで来てやっと会話ができる。


 「その方が?」


 「は、はい!この人が例の田中次郎さんです!」


 「ひっ、た、た、田中・・・じ、次郎とも、申します!」


 ほらな。やっぱり信長さんのオーラに充てられてるじゃん。オレも最初はそうだったけど。


 「もう少し落ち着いて話せ。今一度問おう。その方は?」


 「は、はい!田中次郎と申します!こ、これを土産に持ってきました!」


 田中さんに土産として持って来てもらったのは先日オレが田中さんから貰った実家の甘辛く炊いた肉だ。信長さんが気に入っていると伝えて持って来たらしく家の冷蔵庫に入れてたそうだ。


 「ほう?これを作った者か。貴様は何を望み何を求む?」


 「へ!?あ、いえ。ぼ、僕は何も望みません!」


 「ならば用はない。何も望まぬ者は必要ない。これは銭を出し買い取ってやろう」


 「織田様!?お待ちくだーー」


 オレがそう言うと手で制される。またもやオレがやってみたいカッコイイ行動の一つだ。


 「田中とやら。正直に申せ。此奴の望みは草の女子を嫁に娶る事、我が領民の生活の質、軍の質を上げたいと望みを言った。貴様はなんぞ?」


 「田中さん!?何でもいいんです!やりたい事を言ってください!」


 「む、武蔵君!?何を言っても笑わないでくれよ!?お、織田信長公様!!」


 「ふん。変な呼び方だがワシは気にせぬ。なんぞ?言うてみろ」


 「ぼ、僕は・・・僕はお嫁さんが欲しいです!!!人に必要とされる人間になりたいです!」


 いやマジか!?確かに嫁さんは欲しいと言っていたけど本当にそれを言うか!?


 「クハハハ!!小気味良い!在野から仕官に来る男よりよっぽど分かりやすい!よかろう!貴様も此奴の下じゃ!何でも未来では丁稚頭だそうだな?」


 「え!?で、丁稚頭ですか!?」


 「うん?武蔵もそうだったんだろ?それを武蔵は格が上がったのだろう?だが、この男は出世より丁稚の者を纏める事を取っているのだろう?違うか?大した男ではないか」


 うん。壮大に勘違いしているけど結果オーライかな!?


 信長さんが言った事は、この時代の丁稚にも頭という人が居るらしい。それはそれは厳しい環境なのだと。オレがバイトという身分を分かりやすく丁稚と例えたからそう思われているのだけど。


 田中さんもそれなりの歳だ。その歳で丁稚を続けている事は信長さんからすれば賞賛に値するらしい。みんな丁稚から抜け出したいが敢えて自分が丁稚頭として居る事で若い者を出世させてやっているのだろうと信長さんは思っているそうだ。


 うん。何回も言うが戦国と令和の考えの違いだな。


 「まぁこの話は良い。肩書きとは称号みたいなものだ。未来では知らぬがここは手柄を立てればワシが褒美を出す。貴様は何ができる?」


 「田中さんはーー」


 「武蔵君!僕から言うよ」


 田中さんは信長さんを見据え真っ直ぐ話し出した。こんな田中さんは初めて見た。


 「まず簡単な用水路を作ります」


 「用水路?なんだ?」


 田中さんが言った事は城下の家が並んでいるところに幅、40センチくらいの溝を掘り水を流すと言った。その水は長良川から取り込み、最終的には長良川に戻す事業だ。


 「なんのためにそれをするのだ?」


 「はい。そこにあるのはポータブル電源と思います。僕がそれと同じ物とは言いませんが燃料がいらない物を作り、岐阜の町に光を灯しましょう」


 は!?どうやってするのだ!?


 「ほう?漆原が持ってきた水車のような物を作るのか?」


 「あれ?武蔵君?水力発電モーター持って来ていたの?」


 「はい。里志君・・・漆原君が城で家電を使えるようにって明智様に言って多分そろそろ設置できるとは思います」


 「水車か。大型だから夏にはエアコン、扇風機が使えそうだね。冬にはストーブや炬燵も使えそうだ。だがそれは城だけだよね?織田信長公様!僕がやりたい事は領民の民家にもそれらを使えるようにしたいのです」


 「ほ〜う?領民みんなにか?」

 

 「はい!それに家なんかも少し改装致します!隙間風なんかを無くせば冬場は凍死者なんかも少なくなるのではと思います」


 「やってみるがよい。貴様は下がれ。武蔵は残れ」


 いやいや何で!?何でオレだけ居残り!?怒られるのか!?


 田中さんは小姓の遠藤さんに連れられ退出していった。オレはというと・・・


 パタン パタン パタン パタン


 これはアレだ。機嫌が悪い時や考え事してる時に信長さんがするセンスを鳴らすやつだ。待て待て・・・オレなにかしたか!?しくじった事したか!?


 「タヌキのボンクラ共から再三の救援要請が来ておる。人は出した。だが兵糧が足りぬと言った。この意味が分かるか?」


 「はい。食べ物が少ないという事ですよね?」


 「うむ。じゃが誰が小荷駄となるかじゃ。ワシ自ら赴いてもいいが西がガラ空きになる。ここぞと言わんばかりに浅井と朝倉が攻めてくるじゃろう」


 「今は停戦中ではありませんか?」


 「ふん。知れた事よ。織田は浅井、朝倉とは相容れない。どちらかが潰れるまで戦う事になるだろう。彼奴等も織田を倒したいと憎んでおるだろう」


 まぁ史実では普通に織田がこの両家を倒すけどな。


 「将軍も動きますよね?」


 「クハハハ!彼奴は放っておいてもよい。権力に溺れて酒池肉林を求むる本物の馬鹿じゃ。だが・・・二方面作戦はさすがにまずい。貴様は動けぬか?」


 「はい?どこへです?」


 「決まっておろう?三河にじゃ!」


 へいへい。三河ですね・・・えーっ!?マジかよ!?仕事どうすればいいんだよ!?



 「おっ!帰ったんだね!おかえり武蔵君」


 「はい。田中さんお疲れ様でした・・・」


 「「「おかえりなさいませ」」」


 「おう!武蔵!また山先頼むな!あれは美味かった!うん?どうした?元気がないな?」


 「聞いてください・・・」


 オレは小荷駄隊として三河に物資を届ける任務を受けた事言った。


 「おめでとうございます!合田様の初陣です!あやめ!すぐに合田様の採寸して!甲冑を作ってもらいましょう!太郎!すぐに、梅吉おじさんに渡りをつけて!」


 「合田様!こちらに!」


 いやいや何でみんな喜んでるんだよ!?オレ行きたくないんだけど!?


 「そうか。とうとう初陣か。小荷駄隊とはいえ大事な任務の一つだ!よっしゃ!滝川の叔父貴に言って身元が確かな者を集めよう!武蔵!少し留守にするぞ!」


 「ちょ!け、慶次さん!?」


 オレの呼び声虚しく颯爽と飛び出していった。


 「田中さん!?どうしましょうか!?行って帰ってって言ってもすぐには無理ですよね!?」


 「そりゃあ車でもあればすぐだろうけど・・・けどさすがに車は通れないよね」


 「行くのは仕方ないとして・・・仕事どうしましょうか・・・さすがに正社員になったばかりで少し休ませてくれなんて言いにくいのですが・・・」


 「ははは!武蔵君は聞いていないんだね?来週から店舗改装で少しお店休むらしいよ?タイミングよくて良かったね!」


 は!?なんちゅうタイミングだよ!?って事はマジで行く系か!?


 「さぁ!合田様!早く!」


 あぁ〜!!もう!!なるようになれ!!!

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