爺ちゃんと婆ちゃんの出会いそして秘密1
「合田様・・・お寿司なる物大変に美味でした!」
「ありがとう。まぁオレが作ったわけではないんだけどね。織田様からも魚を獲れる画期的な案を出せって言われたからね」
「そうですか。未来ではどのようにして魚を獲るのですか?」
オレは今戦国の自宅に居る。オレの部屋に現代の女性が着るような寝巻きを着ているあやめさんが居る。
最初こそ緊張していたが今や普通に会話もできる。あやめさんの優しい匂いが好きだ。まぁ愚息も少し反応しているが・・・。下着は教えるべきではなかったと少し後悔している。
時刻は23時過ぎだ。当たり前だが外は真っ暗。外は静かだ。多分慶次さんは自分の部屋で一人で山先を呑んでいるだろう。
オレはあやめさんと他愛のない事を話している。この時間も何気に好きだ。主にあやめさんが聞いてくる事は未来の色々なお店の事だ。
服屋やご飯屋、オレの普段の仕事の事などオレは包み隠さず聞かれた事全てを話している。池田マダムの事、未来では鉄砲は許可がいる事。
先日その許可の申請が通った事、里志君や有沙さんのしようとしている事など熱中して話した。
「少し考えているのが里志君が考案した長良川の勾配を利用した水力発電なんだけど、他にも小水力発電というのがあってそれらを持って来てこのら一帯の電力を賄うって言ってたよ」
「では、この家のように明かりが他の方の家にも灯るのですか!?」
「多分そうなると思うよ。明るくなれば夜の犯罪も少なくなるんじゃないかな?」
多分お風呂に入ったのだろう。髪の毛は短い短髪のあやめさんだが乾ききっていないその髪からトリートメントのいい匂いがオレを刺激する。
予想だがもしオレがあやめさんに迫れば断られないだろう。だが帰れなくなってしまうから辛い・・・。
「お疲れのようですね。そろそろ寝ましょうか。明日も商いですからね」
「そうだね。じゃあ寝ようか」
オレは退出するよう促したがなんとあやめさんは出ようとしない。やはりここはワンチャンあれか!?流れに身を寄せるべきか!?
「あやめさん!?戻らないのですか!?」
「いえ・・・その・・・合田様と夜を共に・・・」
クッソ・・・何で変な縛りがあるんだよ!?オレが男になれるチャンスなんだぞ!?
「そそそそそっか・・・なら隣でね、ね、寝ますか!?」
肝心なところで悪い癖だ。吃ってしまう。
この日は最悪だ。寝つけやしない。あやめさんの匂い、隣に女性が居る事実・・・。心臓はバクバクだ。
1時間くらい経っただろうか・・・あやめさんが急に話しかけてきた。オレはてっきりあやめさんは寝たと思ってたからビックリだ。
「合田様は私の事どう思っていますか?」
「え!?そ、そそれは・・・この世界で1番大切な人です!」
言った!言ったぞ!間違いなくオレの本心を言ったぞ!
「ありがとうございます。私も合田様を大切に思います。ですが・・・その・・・お手を出されたりされないのですか?私は魅力的な女性とは程遠いと思います。髪も短く肌も日に焼けて黒く・・・」
「いやいや!まさにオレの好みの女性です!オレの好みと言えばあやめさんです!それに手を出すって言われても・・・」
「で、では・・・」
オレ達は仰向けで寝転んでいるが、あやめさんはそう言うとオレの左手を自ら掴み、あやめさんの二つの丘に持っていった。
オレも我慢できず、そのまま唇を重ねてしまった。だがさすがに帰られなくなるのはダメだ。いや、正直あやめさんと居る事ができるなら帰られなくなってもいいかもとは思うが今はまだ早い。もしこの世界に居るとしても色々終わらせてからだ。
「あやめさん・・・本当に好きです。オレが大事にします。ですが聞いてください。大切な事です」
オレは里志君と有沙さんの例で例えて男と女が交わると行き来できなくなる可能性があると伝えた。確信はないが、だが絶対にそうだとオレは思っている。
「では・・・私は合田様の温もりを頂けないのでしょうか!?」
一々言う事が愛おしいんだよ・・・。
「いや・・・もう少し待ってほしい。オレが決心すればオレは帰らない。この世界で骨を埋める。あやめさんとは別れたくない」
「合田様・・・・」
あやめさんは涙を流しオレの頼りない左の肩の上で気付けば眠っていた。オレも頭で色々考えたがやはりここで答えは出ず朝方に意識を手放した。
この日オレは夢を見た。見た事のない若い男女が岐阜城下?いや違う・・・ここはどこだ?どこか戦国の町のような場所を手を繋いで歩いている。初めて見る人だが何故かオレはその人達に着いていかないといけない気がする・・・。
しかも、その女性は着物のような服装だが男性は昔の軍服?ような服を着ている・・・。
「誰だ!?」
夢の中だがつい、いつもの独り言のように呟いてしまった。
「んにゃ?やっと来たか。武蔵よ」
「え!?誰ですか!?何でオレの名前を!?」
「武蔵?大きくなったわね」
すると女性の方までオレの事を知っているようだ。
しかも大きくなったわねって・・・オレとそんな歳変わらないだろ!?誰だ!?怖いんだが!?ってか、夢を夢と認識できる事なんて初めてなんだけど!?
「ワシと婆さんの秘密を教えようと思ってな。婆さんと時が来たと思ってな」
「え!?爺ちゃん!?婆ちゃん!?なんでそんなコスプレしてんの!?いや何でそんな若いの!?」
「「・・・・・」」
いやいや二人して生類憐れみの目でオレを見るなよ!?なんなら爺ちゃんはいつもオレを騙してたじゃないか!
「武蔵・・・これは大事な事なんだよ。お母さん・・・宮子はあなたのお父さんとすぐに死別してしまったからこの事は秘密にしたままだけど武蔵には教えてあげる。今から爺さんと私の事を見せるから覚えておきなさい」
「そうだ。一度しか見せる事はできん。いつもワシ等は武蔵を見守っていた。力を使い果たすだろう・・・」
爺ちゃんのこんな真剣な眼差しは小学生の時に無理矢理爺ちゃんについて行ったパチンコ屋以来の顔付きだ。
ってか、何でオレはこの若い二人が爺ちゃん婆ちゃんだと確信が持てるんだ!?
「武蔵はじめるぞ」
爺ちゃんがそう言うと辺りが真っ白になり場面が変わった。
「爺ちゃん!ここはどこ!?戦国!?」
「ここはもっと昔の世界だ。ワシと婆さんが出会った場所だ。平安時代の真っ只中・・・見ていなさい」
平安時代!?は!?何で!?
爺ちゃんがそう言うと、また場面が変わり知らない男が現れた。だがこれは録画された映像のような気がする。何故かそのように思う。
「其方は誰だ?見慣れぬ者だな」
「おめーこそ誰だ?あん?喧嘩売ってやがるのか!?あん?そもそもここはどこだ!?」
いやいや爺ちゃんヤンキーすぎるだろ!?
「訛りが酷いな。まぁ良い。お主も御触れを見て集まったのだろう?変わった鉄の棒だが武器が使えるのだな。着いて来い」
見知らぬ男がそう言うとまた場面は変わり次は数件の家が並ぶ森の中になった。その数軒の家は、言葉は悪いがボロ小屋だ。そしてその家の周りには数人の男達が居た。
「集まったのはこれだけか・・・」
「おい!てめー!ワシをこんな所に連れて来てどうすんだ!?やんのかやらないのかはっきりせい!」
「ふっ。血の気の多い事だ。私は安倍晴明。陰陽師だ」
嘘!?マジか!?安倍晴明!?本物か!?
「は!?安倍晴明!?誰だ?聞かん名だな。ワシは合田友蔵だ!熊撃ちの友蔵と言やぁ〜ここら辺では大概知られておる!」
「熊撃ちの友蔵?いや初めて聞く名ですね」
「ぬおっ!?なんだと!?」
ウォォォォォォーーーー!!!!
はっ!?なに!?何の鳴き声だ!?
「チッ。出やがったか。渡辺!坂田!碓井!卜部!配置に着け!呪文を唱える!おい!熊撃ちとやら!時間を稼いでくれ!」
「なんだ!?なんだ!?今の鳴き声は?熊にしちゃ〜禍々しい鳴き声だな?ワシの相棒のこの縦2連ミロク銃で狩ってやろう」
いやそこはレミントンじゃないんかい!
ブゥォォォォォォーーーー!!!
いやいや聞けば聞くほどヤバい鳴き声だろ!?平安にはモンスターでも居たのかよ!?
ガシャーーーーーン
そして森の中から現れたのは鬼だった。




