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ドア開けたら戦国時代!?  作者: デンデンムシMK-2
第一章
37/174

人は日に畳一畳米三合あれば十分

 「藤吉郎様・・・・・」


 「利家様・・・・・」


 チッ。こんなところでイチャイチャするとは思わなかったぜ。おまつさんとねねさん・・・まぁ間違いなく喜んでくれている。


 「ハスッハスッハスッ」


 「おい!慶次!もう少し落ち着いて食え!」


 「いやいや叔父御!叔父御も食べると分かる!どこぞの鳥の卵かとは思うがやけに美味い!米も質が良く甘い!何杯でも食べれそうだ!」


 持って来た米をあやめさんに言って土鍋?炊いてもらいみんなに、よそってあげたわけだが米をやたらみんなが褒めてくれる。


 オレが作ったわけではないけど素直に嬉しい。


 「武蔵殿?」


 「は、はい!なんでしょうか!?おまつ様!?」


 オレはあんな怖い思いは御免だと思い丁寧な言葉で反応した。


 「このたおるなる物は相当高価な物では!?見た事ない刺繍もされておりますね?しかもこの米・・・よければ売っていただきたく・・・」


 「タオルはまぁそこそこかな?タオルにしては高かったと思うけどまた持って来ますよ。米に関しては別に普通ですのでこれもお金が入り次第お持ちしますね」


 「ねねも何か所望するなら言うておいた方がいいのではないのか?」


 おまつさんと違い、ねねさんは優しい女性に感じる。むしろ木下さんはこんな奥さんが居るのに他の女に手を出すのか!?まったくけしからん!!


 「では・・・合田様?よければ私も米を少しいただきたく・・・後よければ他にも甘味を所望したく・・・」


 「ははは!分かりました!何かお菓子とか色々持ってきますよ!それと木下様?色々お渡しした種、などはどうですか?」


 「その事だが遅れてすまぬ。支配内の蜂須賀っていう者に一任しておるのだが報告を聞いておらんのだ。実はワシはお主の事疑っておったのだ」


 聞けばこの木下さん・・・実は新参の人達の素行を見る任務をしているのだそうだ。それは別に信長さんに報告するわけでもなく、独自に調査してどこか敵方の間者なのか。乱波者なのか。織田家を潰そうとする輩なのかとかだそうだ。


 織田家は敵が多い。しかも去年に重臣中の重臣 森可成が宇佐山で死んだ事もあり、織田家でもかなりの離反者が現れ、一時期信長さんはかなり荒れていたそうだ。


 その織田家で一旗上げてやろうと思っている素行の分からない者も多く仕官して来ていることもあり、滝川さんだけでは調べきれないらしく、内々に信長さんの独断で雇った人なんかを・・・


 「ワシが調査しておるのだが武蔵はワシの範疇を超えておる」


 「そうだったのですね。だから冷たかったのですか?」


 「普通だ。ワシは男色の趣味はない。まぁそういうことだ。これからも共に織田家を支えようぞ!」


 まだ何かありそうな気はするがとりあえず木下さんの冷たい理由は分かった気はした。


 そしてみんな散々食べるだけ食べて家に帰って行った。オレはガランとしたこの家に色々持ち込もうと現代と戦国時代を行き来した。


 あやめさんはさっそく妹を呼び寄せるとの事で滝川さんと連携して代わりの護衛を呼び寄せ、交代する形で里まで旅立つとの事。


 「ハァー ハァー ハァー」


 「弛んでおるな?」


 「は!?見てるだけなら手伝ってくださいよ!?」


 「オレの任務はこの家の護衛だ!」


 偉そうに戸の前で陣取っているのは慶次さん。この慶次さんは本当にオレの下についてくれるそうでおまつさんや利家さんが好きに使ってくれと言ってくれたのだが当の本人は働く気0。


 某漫画のようなイメージとは程遠い。


 オレは婆ちゃんの家にある色々な物をこちらに持って来ている。布団もそうだが、日用品から服、懐中電灯とかだ。本当は冷蔵庫とか大型家電を持ってきて、発電機で稼働させてもいいけど、葛城さんから売ってもらったのは岐阜城に卸したからオレはオレで買わないといけないからな。


 それに信長さんにも他の家電のプレゼンもしないといけないし。


 「うん?これはなんだ?」


 「あ、それはオーブントースターですよ。パンとか焼いたりお餅焼いたりと色々使えるのですがまだ発電機がないので使えません。また今度使わせてあげますよ」


 「ふ〜ん。なんか未来とやらは色々な物が溢れているのだな。俺は今の世が好きだ」


 「そうすか?オレはやっぱ未来の色々利器がある世界が好きですね」


 「人は日に畳一畳米三合あれば十分。身の丈に合わぬ生活は滅びるだけだ。まぁだが未来の酒には興味がある!今宵は楽しみにしてもいいのだろう?叔父御や叔父貴も褒めていたからな?ははは」


 「え?なんで慶次さんにお酒渡さないといけないのです?手伝ってもくれないのに?」


 シュバババババ


 「おう!武蔵!これはどこに運ぶのだ?俺に言え!こちらの荷物は俺が運んでやろう!!いやぁ〜、やはり身体を使ってこそだよな?がははは!」


 この人馬鹿だわ。少しカッコイイ言葉言ってると思ったが結局酒のためなんだな。


 慶次さんの頑張りもあり、とりあえずオレの部屋に配置?は上手くできたと思う。部屋はいっぱいあるから一部屋を慶次さんの部屋として用意してあげる事にした。


 「オレは基本毎日来るとは思うけど寝泊まりするのは7日の間に1日か2日だけですのでオレが居ない間は留守をお願いしますね?飯やなんかは色々今から買ってきますので缶詰とか米とか適当に食べてください」


 ポン ポン


 「おう!任せてくれ!しかし、この布団っていう物はいいな!気持ちが良い!ははは!」


 「まぁ部屋にある物は好きに使ってください。ではオレは一度戻りますね」


 そう言って、また戦国時代を後にした。買い物と例の短刀を池田さんに買ってもらうためにだ。この短刀を売れればまたある程度お金が入るだろう!



 オレは会社の軽トラを走らせ、池田マダムのアトリエに向かう。到着するとイベントをしているようで人がかなり居た。見た感じ人間国宝みたいな仙人みたいな見た目な人も居る。


 「あら?合田君?どうしたの?」


 「池田さんこんにちわ。今日は営業してない感じですか?」


 「いや今日はとある陶芸の先生のブースを開けたいって事で場所を貸してるのよ」


 「そうだったのですね。あのう・・・また倉庫を探してるとこれを見つけました。よければ鑑定してくれませんか?」


 オレが恐る恐る紙袋から人に見えないようにチラッと池田さんに短刀を見せると・・・


 「ちょっと合田君!?早くこっちに!!」


 池田さんに引っ張られ事務所に連れて行かれた。


 「えっと・・・これそんなに凄い物ですか?」


 「あなた分かってないの!?ここを見なさい!そしてこの本も見なさい!」


 かなり興奮している池田マダムに強引に本と短刀を見せられた。まぁさっぱりだが。


 「吉光・・・合田君!?この刀を倉庫で見つけたのよね!?」


 「は、はい・・・倉庫の奥の方に・・・」


 なんか雰囲気的にマジもんのような気がしてきた・・・家に調査が来たりされれば困るんだけど!?


 「吉光・・・粟田口吉光とは・・・」


 それから本を指でなぞられながら池田マダムが朗読した。


 「鎌倉時代中期に京都の粟田口で活動した刀工。通称は藤四郎。相州鎌倉の岡崎正宗と並ぶ名工とされ、特に短刀作りの名手として知られる・・・現存する刀は国宝4振、重要文化財13振・・・この意味が分かるかしら?」


 「これを入れると14振?って事でしょうか?」


 「正確にはもっと調べないと分からないけど、若い時に私は国立博物館で秋田藤四郎を見た事あるの。全長32.3センチ、刃長22.4センチ、反りは内反り、先幅1.27センチ、元幅1.97センチ、重量99.0グラム・・」


 いやいや池田マダムさん!?マニアの領域じゃね!?


 「池田さんは刀の事詳しいのですね・・・ははは!いや〜さすがです!でもこれは偽物って事もあるでしょう!?安くてもいいので簡単にお願いします!!」


 オレは大事になるのを嫌い簡単に鑑定してもらおうと笑い込みで言ったが池田マダムは一言・・・


 「全身全霊をかけて言うわ。これは調べるまでもなく本物!」


 と・・・。


 「オレはどうすればよいですか?」


 「どういった経緯で合田君の家にこの短刀があったかは分からない。しかもまったく汚れてもいない。埃の一つもないし、状態は極めて良好。これは間違いなく重要文化財として出してもいいレベルよ?」


 「え!?なら無償で出さないといけないのですか!?」


 「もし・・・そういうのが嫌なら匿名って事もできるわよ?実はこういう物が出てくる家は名家が多いから強盗に入られたりしてしまう事もあるの。だからだいたい発見された場所はぼかしたりするのが普通なの」


 「そうなのですね。絶対に提出しないとダメな感じですか?」


 「いいえ?これは合田君のお婆さんかお爺さんの所有物だったのでしょう?どういった経緯かは分からないし鑑定書なんかもないけど、何も関係ない家にあるわけないからね。もし・・・本当に売りたいなら私のツテを頼り、博物館にて買い取りしてもらう事もできるけど?」


 「え!?池田さんが買い取ってはくれないのですか!?」


 「それは無理よ。国宝や重要文化財なんかは文化庁に届け出て、国が買い取らない限り個人売買ができるの。これは誰が見ても重要文化財は間違いないから・・・」


 オレは何故かここで爺ちゃんの悪そうな顔が思い浮かんだ。


 「池田さん!オレは絶対に内緒にします!池田さんにお渡ししたいです!後は池田さんの好きにしていいですし、法外な値段を言ったりしません!」


 「え!?そう言われても・・・」


 「池田さんは刀が嫌いですか!?これがどのくらい凄いかは分かりませんがこれが池田さんの物になるのですよ!?」


 オレはめんどくさい事が嫌いだ。池田マダムが買い取ってくれれば後は博物館に行こうが、池田マダムが肉や野菜を切ろうが構わない。


 「分かったわ。けどもしこれを博物館なんかに出せばもしかすれば1000万円くらいの値がつくかもしれないけど構わないの!?」


 1000万!?マジで!?もう働かなくてもいいくらいじゃないの!?いや待て!それこそ博物館に出せば家を調査されたりめんどくさい事になってしまう・・・ここは池田マダムに額が小さくなってもいいから売る方が後々もいいような気がする!


 「オレは・・・池田さんにお渡ししたいです。値段も池田さんが思う値段で構いません」


 「・・・・分かったわ。少し待っててくれる?」


 池田さんはそう言うと奥の部屋に消えて、暫くすると封筒の束を持ち現れた。


 「今出せるのはこの300万円。これでいいかしら?私はこれを知り合いの刀剣評価鑑定士にも見せるつもり。それで博物館に買い取ってもらうわ。その額が大きければ差額をちゃんと渡すからそれでいいかしら?」


 「マジすか!?別にオレはこれで満足です!なので、もしまた何かあれば池田さんに見てもらいたいのですが・・・正直面倒な事が苦手ですので手数料として受け取ってください!」


 「面白い子ね?本当に倉庫を見せてもらいたいわ。この事は内緒にしててね?とりあえずまた教えてあげるからね?」


 オレは何度も何度も頭を下げ、封筒に入った見た事ない太さに驚きながらアトリエを後にした。帰り際見た目が人間国宝の仙人のおじいさんが一つ25万円の湯呑みを売っていた。


 オレはボッタクリかよ!?と思ったがお金があるので2セット買ってみた。信長さんにプレゼントしよう。


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