いざ未来へ・・・・完
いやぁ〜、実に長い戦いだった。現代で泊まる事になり、さぁ寝ようというところで布団が一つしかなかったため、あやめさんを布団に寝かせようと思ったが優しいあやめさんは『隣で寝ましょう!』と言ってくれたからだ。
隣には風呂に入り、同じシャンプー、ボディーソープを使ってるのに何故こんなにオレと差が出るのか分からないくらい良い匂いがしている。
あやめさんは布団に感激して、ふかふか具合が楽しいようですぐに寝息をかきだしたのだ。オレは逆だ。 愚息が触れないように少し離れて我慢。ずっと我慢だ。その時の一瞬、写真の爺ちゃんは満面の笑みで頷いているように見えた。婆ちゃんの方は爺ちゃんに怒ってるように見えた。
そんなこんなで朝方少ししか眠れなかったオレ。あやめさんは普段から慣れているのか早朝に起きていて、オレも時間にして6時過ぎには目が覚めたのだ。すると横に正座して座っていてビックリしたのだ。
まぁオレの苦行はとりあえず終わったわけだ。
「おはようございます」
「おはよう・・・」
「すいません。布団なる物は私が使ってしまい、あまり眠れませんでしたよね・・・本当にすいません」
いやそれはいいんだ。女性が横に寝てくれるのは初めてだから違う意味で寝不足なんだ。
「だ、大丈夫ですよ!ははは!向こうの世界で布団でも売れれば儲けられますかね!?」
オレは冗談半分で話を誤魔化すつもりで言ったがあやめさんは真剣な顔をして答えた。
「まず間違いなく持っていけば持っていくだけ売れるでしょう。美濃から始まり、尾張に広まり、隣の三河まで波及していき伊勢の方までたちまち布団は広まるでしょう。仮にこの布団が1貫すると言われても納得してしまいます」
「すいません!ちょ、ちょっとお待ちを!!」
オレは急いで1貫がいくらかをスマホで調べた。
「はぁ!?10万!?そりゃ高級な布団ならもっと値段が高いのもあるがこれは仕事先のホームセンターで買った1万円の布団だよ!?割良すぎじゃね!?」
「はぁ〜・・・そのじゅうまんえんがいくらかは分かりませんが、影の任務をし出してから初めて意識がなくなる深い眠りに落ちてしまいました。これは脅威です」
そりゃ〜、打掛みたいなのを羽織って寝てるのは知ってるし、布団も後少し経てば三河くらいから普及してくるだろうが現代のような布団はまだまだ先だろう。
1セット信長さんに持って行こうかな?
「なら、とりあえず向こうで妹さんが現代の物を売る商店擬みたいな事してみますか?」
「商いですか!?妹は計算が苦手ですので・・・」
「大丈夫!オレも算数は苦手だ!けど、電卓がある!文明の利器バンザイだよ!!」
グゥゥゥ〜〜〜〜
「・・・・・申し訳ありません」
「ごめんごめん!話に夢中でお腹空きましたよね!卵焼きでも作るので食べてください!禁忌で食えないとか言わないでくださいね!?とりあえず、顔でも洗って来てください!」
「はい。ありがとうございます」
オレはついでに新しい歯ブラシをおろし、歯磨きの仕方も教えた。あの時代では歯磨きはまだないはずだがみんな何故か歯が綺麗なんだよな。息も臭くないし。あやめさんなんか起きた瞬間から優しい匂いがしてたし。
オレはそこまで料理は得意ではないが、簡単な物くらいならば作れる。卵焼きがそうだ。昔母ちゃんに食わせて、美味しいと言われた事のある自信作だ。米は炊いていたら時間がかかるためレンチンご飯にした。
「合田様!?なにやらいい匂いがしております!」
「だろう!?卵焼きとウィンナー、米!これぞ男の簡単な飯だよ!!」
味付けは醤油のみ!簡単な割に美味いんだよな。
あやめさんに出してみたが、最初こそ訝しんでいたが躊躇なく食べてくれた。あやめさんは卵に忌避感はないのかな?
「どう!?美味しい!?」
「・・・・グスン」
え!?なんで涙!?まさか!?涙流すほど不味かったか!?
「あやめさん!?口に合わないなら食べなくてーー」
「申し訳ございません。逆にございます・・・美味しすぎて美味しすぎて・・・・今まで私が食べてきた物の中で1番に美味しいです。妹にも、里のみんなにも食べさせてあげたい・・・」
嘘!?そこまでではないだろ!?焼肉はまだ食べさせてないけど焼肉食べれば気絶してしまうんじゃないの!?
「ははは。ありがとうございます。これくらいならすぐに作れますので。妹さんを家に呼び寄せれば食べさせてあげますよ。里の人もたまに遊びに来てもらったりすれば色々出しますよ」
「ありがとうございます。非常に美味でした。見る物全て初めてで謎が深まる物も多数ございました」
なんかもう帰る雰囲気なんだが!?なんならオレは葛城さんのところに連れて行こうと思ってたのに!?
「もう戻る感じですか!?」
「よければ早く妹を連れて来たいと思いまして・・・」
そうだよな。妹さんが心配だよな。葛城さんの顔合わせはまた今度だ。
そうして、一度戦国時代へ戻る事にした。
「あぁ〜!戻ってきーー」
「合田様お待ちください!なに奴か!?ここは岡部様が建てられた織田家相伴衆、合田武蔵様の家ぞ」
なんか男の口調であやめさんが叫んでいるんだが!?
あやめさんが叫んでいた相手は、然も自分の家かの如く、例の入り口・・・未来の家に続く戸の前で眠っていた。しかも前田さんみたいにかなり身体が大きい。服も凄い派手な服装だ。
「んぁ?誰だ?」
「クッ・・・こっちが聞いている!貴様こそ誰だ!」
「お、おぅ!待て待て!おい!女!その短刀をのけろ!!」
あやめさんはオレが最初に渡した、信長さんから貰った短刀を使っていた。素直に嬉しい。
「答えなさい!!誰の許しを得て入っている!!?」
「オレは前田慶次郎利益!隣の利家叔父御の関係筋だ!」
「はっ!!申し訳ございません。ですが証拠がありませんのでこの短刀を除けるわけにはいけません」
「チッ。女だが隙がないな?上忍の者か?一益の叔父貴に言われたのだがな」
「え!?」
「ふん。甘いな!」
ドタンッ
男は問答しながら一瞬の隙をついてあやめさんに柔道投げのような事をした。多分、この人があの有名な傾奇者 前田慶次だろう。
そしてなんのためにオレの家に居るのか分からない。あやめさんが投げられたがオレなんかが敵うはずもない。オレが取る方法は一つ・・・。みらいの某漫画で培った学だ!!この人は利家さんの奥さんが苦手だったはず・・・家は隣。ドラマ通りならば・・・
「まつ様ぁぁぁぁ!!!!前田まつ様!!!!!至急お助けください!!!前田慶次さんが家で暴れているのです!!!!」
ふん!どうだ!見た事か!!!オレは恥なんか持ち合わせてないからな!使える物はなんでも使う!オレはコネや人脈はフルに使う男だ!
「あ!馬鹿!!なんで、おまつ殿をーー」
「慶次ッッ!!!そこに直れッ!!!今妾の名を呼んだ男もそこに直れッ!!!」
ははは!もう笑う事しかできないや。なんでオレまで怒られるんだよ!?そりゃ初対面だけど昨日、利家さんが『まつも会いたいと言っていた』って聞いたよ!?それが何で薙刀でオレが脅されてるの!?




