いざ未来へ・・・・1
「な、何をする!?貴様!!この池田勝三郎恒興に勝てると思うてかッ!?」
ドスンッ
オレは思わず池田さんに飛びかかったが一瞬で制圧されてしまう。柔道投げのように投げられた。
「池田殿。それはいかんぞ?今しがた池田殿がしでかした事で武蔵君は未来とやらに帰れぬかもしれぬのだぞ?」
「は?2人して何を言っているのだ?戸を外しただけであろう?確かに此奴の家と言うのは見えなくなったがまたこうやって戸を装着すれば・・・ほら元通りだろ?」
は!?取り外しできるのかよ!?確かに池田さんが戸を外せば入り口は消えたがなんという事でしょう?また装着すれば入り口が繋がったではありませんか?これぞ匠の技ですか!?
「確かに向こうの家が見える。どういうカラクリなんだ?」
ドンっ
「前田殿。それは無理だ。幾度となくワシも試したがここを通れるのは此奴だけだ」
「そうか。未来が見たかったのだがな。武蔵君!良かったではないか!帰れるぞ!」
「いててて・・・まぁ良かったです。ってか、オレの家が出来たそうなので入り口を持ち運びできるならオレの家に装着したいのですが・・・」
オレがそう言うと前田さんが悪そうなニタニタ顔をしていた。だがその反面池田さんは困った顔をしていた。
「ま、待て待て!ここでも別にいいではないか!?」
「おや?池田殿は今しがたこんな戸が現れるからいけないんだ!と言ってなかったか?池田殿の部屋に現れるのが嫌なのだろう?なら武蔵君の家に装着するのが至極当然かと思うぞ?あっ、確か武蔵君の家は城下の俺の屋敷の隣だったな!ははは!これからご近所付き合いよろしくな!?武蔵君!」
マジかよ・・・朝の鍛錬から逃げられないんだが!?
「チッ。相分かった。だが、お館様に新しき物を渡す時はまず1番にワシに見せるのだ!ワシがお館様に1番近い存在だからだ!」
「は、はい!分かりました」
「うむ。では飯食った後にその戸をはめ込みに行こうか」
前田さんは上機嫌でオレを大広間に連れて行き、台所衆の人が見た目はまんますき焼きを持って来てくれた。
そういえばこの前の草の人はどうなったんだろう?まぁいいや。明日からあやめさんも家に住むわけだし!
すき焼きの味だが・・・
「美味いッッ!!伊右衛門殿はさすが城の料理頭だ!抜群の味付けだな!そう思わんか!?武蔵君!?」
「ゲホッゲホッ・・・甘すぎじゃないすか!?どれだけ砂糖入れたんだよ!?醤油も入ってるはずだけど砂糖の量がハンパないと思うんすけど!?」
確かにオレは業務用の2リットル醤油を4本、10キロ砂糖を5袋持って来た。だが、明らかに砂糖の味しかしないんだけど!?こんなに甘ければ肉の臭みも何も感じる事がない!ただの甘い肉だ!
「そうか?これはかなり美味いと思うぞ?未来人は余程食に煩いのだな?」
「これならオレが作った方がまだ上手に作れますよ!!こんなの食べてたら身体に悪いすよ!?後で伊右衛門さんにオレから言っておきます!」
美味いって言えば美味い。多分料理のレシピ本を見て作ったのだと思う。肉もなんの肉かは分からないけど薄く切られてあるし、豆腐も歪な形ではあるが入っている。ネギも大根も入っている。見た目は未来で出しても遜色ないと思う。
ただ、甘すぎる。気持ち悪くなるのが早い。卵がないのが残念だ。多分卵に関しては禁忌な食なのだろう。これもオレが徐々に広めていければいいな。
ご飯を食べた後、前田さんが戸を持ってくれるとの事で、オレ、あやめさん、前田さんで家に向かう事にした。場所は城を降りてそこそこ離れた場所だ。
城を降りて10分くらい歩くと、大きな屋敷が見えた。その反対側には、同じくらいの大きさの屋敷が見えた。
「よし!ではさっそく戸をはめよう!どこにするのだ?」
「え!?どこにするのだって・・・合う場所あります!?てっきり岡部様でしたっけ?その岡部様に言って寸法を測ってもらい、この戸に合う何かを作ってもらうのかと思いました」
「ははは!そんなわけないだろ?池田殿の部屋でもへんてこだったが立て掛けると入り口が見えたではないか!さぁ!どこにする?」
この人はなんでこんなにポジティブなんだろう?
オレは出来上がった家に入った。あやめさんは終始無言だ。
一通り部屋を見て思った事は・・・殺風景すぎる。そして大きすぎる。そりゃ大きな家に憧れはしたよ!?けど、なんで10部屋もあるんだよ!?何にそんなに使うんだよ!?
とりあえず、10部屋ある内の1番小さな6畳くらいの部屋をオレの部屋にしようと思い、ガラスのない木を立てる窓?に向かい戸を立て掛けてもらった。
するとなんという事でしょう!?戸が少し発光したかと思いきや、池田さんの部屋みたいに向こう側にオレの未来の家が見えた。10部屋でも持て余すと思ってるのに幻の11部屋目ができたではありませんか!?
「ははは!いよいよ訳の分からん原理だな?一応・・・」
ドスンッ
向こう側に見える家に向かい体当たりをした前田さん。もちろん行けるはずもない。
「チッ。やはりダメか。じゃあな!武蔵君!明日は早朝に迎えに来るぞ!その時、まつも紹介しよう!」
「ありがとうございました!おやすみなさい」
そう言って前田さんとは別れた。残されたオレとあやめさん・・・。
「えっと・・・とりあえずオレは普段あまりこちらに居ないから好きに部屋を使ってください!この部屋だけオレに使わせてくれれば後は構いませんので。妹さんでしたっけ!?連れて来てください!」
「本当に何から何までありがとうございます。これも合田様のおかげにございます。それと先日のーー」
「御守りですよね!?お礼も言えずすいません!首に引っ掛けています!ありがとうございました!そうだな・・・よければ今からオレの家に来ますか?」
「いいのですか?大殿に言わなくても?」
「言わない方がいいと思う。これはあやめさんとオレだけの秘密にしませんか?」
「畏まりました」
仲良くなったとは思うけどどこか他人行儀な感じがするよな・・・。
そして、オレは新たに作られた入り口を潜り家に帰る。あやめさんは恐る恐るオレに着いて入って来た。
「よし!成功だ!なんであやめさんだけ入れるんだろうね?」
「すいません。それは私にも分かりません・・・すいません、ここが未来ですか!?」
「うん。オレのばあちゃんの家だけどね。ここで一人暮らしを始めたんだよ。あの写真が婆ちゃんと爺ちゃんだよ」
「ななな、なんですか!?なんでこんな綺麗な絵が!?この紙の中で生きているのですか!?」
「ははは!やっぱ反応が面白いね!これは写真と言って、カメラという機械があればこれが出来上がるのですよ。とりあえず・・・何か飲みます?コーヒー、カフェオレ、コーラ、あっ、ビールもありますよ?」
オレが冷蔵庫の中を見ながら聞いていたが、あやめさんは婆ちゃんと爺ちゃんの写真に向かい、手を合わせていた。小さく呟いていて聞いてはまずいと思ったが静かな場所なので少し聞こえた。
「武蔵様と引き合わせていただきありがとうございます。必ず私が御守り致します。少しの間お邪魔させていただきます」
なんて・・・なんて良い子なんや!?顔も良ければ性格も良い子か!?まだ付き合ってないし告白もしてないけど、あやめさんが彼女になってくれたら毎日が楽しいだろうな・・・。
「あなた!?ご飯よ!?」
「おう!あやめ!いつもありがとうな?」
とか言って・・・・。
「合田様?合田様!?」
「え!?あ、ごめん!はいはい!どうしました?」
「これは何ですか?」
「これ?これはテレビだよ!見てて?」
オレはテレビを付けてみた。案の定の反応だ。
「キャ〜ッ!!ひ、ひ、人が箱の中に!?」
「ははは!やっぱりだ!これも写真と似た機械を使い、今この時を映す事のできるものですよ。これにこんなに驚いていたら話もできないですよ」
それから一通りの家電の説明をした。テレビも冷蔵庫にも驚いていたが1番驚いていたのはシャワーだった。
「湯がこんなに簡単に・・・」
「そうですね。捻ると湯は簡単に出ますよ。よければ風呂に入ります?多分あっちの世界では行水くらいでしょ?お湯を貯めるのでゆっくり入ってください。あっ!着替えあります?」
「着替えですか?すいません。直ちに持って参ります」
「いや別にいいですよ。下着はないけどジャージなら着れるでしょ?貸しますね」
「下着とはなんですか?」
「え?パンツとかブラとか・・?」
「それはどういった物ですか?」
オレは恥ずかしくてなんて答えていいものか迷っていたら、爺ちゃんの写真が少し光ったように見えた。その方向に目をやると・・・
「この書物はなにですか!?まぁ!?これも立派な姿絵ですね!!けど女性が・・・」
「だぁぁぁぁ!!!待て!待って!!これは違う違うんだよ!!」
何故か普通に置かれていたオレの長年の相棒、某グラビアアイドルの写真集だった。
そしてもう一度爺ちゃんの写真の方へ向くとなんとなくニヤニヤ顔のように見えた。




