じいちゃんの青春・・・レミントン
「貴様のじいさんとやらは鍛治師なのか?これ程精巧な鉄砲なんぞ見た事ないぞ?」
「あ、いえ。それは恐らく未来で作られた銃ですので決してじいちゃんが作った物ではございません」
「ふん。だがこのような物を持っていたのだ。さぞかし名の売れた狩人だったのではないのか?」
いや普通のじいちゃんっす。なんならオレに嘘ばかり吐いてゲラゲラ笑いばあちゃんに怒られてばかりいたじいちゃんっす。
「お館様!?いくら未来の鉄砲とて、暴発の危険がございます。一度掃除をしてからの方がよろしいかと」
「うむ。確かにそうだ。光秀!これをすぐに調べろ!武蔵!構わぬな?」
「構いませんが弾はどうされるのですか!?」
「うん?これが弾ではないのか?それにこの紙切れはなんだ?」
信長さんが持っていたのは12番と書かれた箱に入っている、中身は見るからに弾だった。
オレは銃の素人だから分からないが所謂散弾銃と呼ばれる銃ではないだろうか。しかも明らかに誰かの為に書いた紙まで書いてあるんだけど・・・。
じいちゃん?なんでこんな事書いてるの?まさかオレがこの世界に来る事を見越してか!?んなわけないよな。
「すいません。多分その紙はその銃の扱い方だと・・・」
じいちゃんが書いたであろう文字。そこには、メンテナンスの方法や弾込めの方法なんかが書いていた。しかも、何を思ってかオレ宛てに書いている事もあった。
《武蔵よ。ワシは足が弱く山に行けなくなった。この手紙を見ているという事はワシが死んだ時だ。このレミントンM870は、ばあさんに内緒で買った物だ。ワシが死ねば50日以内にレミントンを処分しなければお前は銃刀法違反と火薬類取締違反になる。分かるな?
このレミントンはワシの青春である。当時から根本的なユニットや作動システム等に大きな変化はなく、圧倒的な数のバリエーション、オプションパーツの多さによる拡張性の高さだ。
とどのつまり・・・男のロマンだ!
分かるな?武蔵も男だ。これをお前に託す。銃刀法違反?火薬類取締違反?クソ食らえだ!男の夢は終わらねぇ〜!お前が猟銃資格を取る事を願う。ちなみにワシは25の時に体重1トンを超えるヒグマを倒した事がある》
いやいやじいちゃん!?なんちゅう手紙だよ!?銃刀法違反ってやばいじゃん!?なんでこれが今まで見つからなかったんだよ!?何がロマンだよ!?
しかも、最後のヒグマ1トンとか嘘だろ!?大人になったオレは騙されないぞ!?
「なんぞワシ等の字と違うから分からん。なんて書いてあるのだ?」
「あ、すいません。えっとですね・・・」
「クハハハ!!これはれみんとんという名前なのか!貴様のじいさんとやらは面白い男だ!相見えないのが残念である。熊の1とんとやらがどれ程の大きさか分からぬがかなりの大物であろう!武蔵!じいさんの願いを聞いてやれ!このれみんとんは借りるぞ!これを真似て作る!」
「ほほほ。武蔵とはだいぶ違う性格のお爺様のようですね?悪いようにはしませんよ?5日お貸しください」
「ははは・・・・はぁ〜・・・。全部明智様にお任せ致します。分解するなり好きにしてください。これ説明書になります。字は分からないでしょうが絵が書いてあるので分かるでしょう?」
「ほほほ。良きに」
もう笑うしかない。じいちゃん無双だ。本当に何がクソ食らえだよ!危なかったじゃねーか!!
そしてオレはそのままトランシーバーの説明に入る。
「ほう?その箱の中身はなんだ?」
「はい。これは遠距離でも会話が即座にできる物です。どれどれ・・・」
オレは電池を入れてチャンネルを合わせると説明書に書かれているため、その通りに設定をした。そして、送信ボタンを押しながらもう一つの方で音量調節をした。
「テスッ テスッーー」
「ななんぞそれは!?声が聞こえておる!?武蔵!それはなんだ!?」
「え!?織田様慌てすぎです!だからこれは遠距離でも会話できる機械ですよ?」
「ば、馬鹿にするでない!何も慌ててなぞおらぬ!」
ゴツンッ
理不尽に拳骨もらった件。
「痛ッ・・・」
「いや、すまぬ。少々興奮したようだ。許せ」
「はぁ。まぁいいっすけど。それでこれは外ならば8キロ離れていても会話できるようですよ?」
「はちきろとはどのくらいだ?」
確か1里が3000メートルくらいだった記憶がある・・・
「多少前後しますが2里くらい離れていても会話できるくらいです」
「なんだと!?誠かッ!?どのようにして話せるのだ!?」
そこからは大変だった。大はしゃぎする信長さん。キャラは変わらないが明智さんもテンションが高い。そしてこんな風に2人が大声で話せばみんなやって来る。
池田さんだ。
「お館様!それはなんですか!?この恒興!お館様が幼少の頃よりお供して参りました!そのワシに内緒事ですか!?」
「騒ぐな!これはとらんしーばーなる物ぞ!2里離れていても話せる物じゃ!」
いやいや信長さんドヤ顔で話してるけどそれオレが持って来たんだからな!?まあお金は信長さんがくれた物を売って作ったお金だけど。
「なんですとッッ!?2里も離れて!?」
「ふん。それを今から試すところだ!遠藤ッ!!」
「はっ!ここに」
あぁ〜。残念遠藤さん・・・。
「今からこれを持って走ってこい!」
「え!?これは!?」
「戦の常識が変わる物と心得よ。壊したりするなよ?そうだな・・・長良川を渡り、待て。ワシの声が聞こえばここのぼたんなる物を押して話せ!分かったな?分かったなら行け!」
「え!?す、すいません!もう一度お願いします!」
「馬鹿者がッ!!!一度で覚えろ!貴様それでも小姓筆頭か!?」
可哀想だ・・・軽く・・・いやかなりのパワハラだ。
オレは遠藤さんに簡単に説明してあげた。
「合田殿。ありがとうございます。これで分かりました」
「遠藤!はよう行け!ワシを待たせるな!」
酷い・・・。




