技術進歩
いつものように戦国時代へやってきたオレ。池田さんの部屋に入ると、いつものように池田さんは書き物をしていた。
「おはようございます!池田様!このお酒をどうぞ!」
「お?なんぞいい事でもあったのか?」
「はい!織田様からいただいた物がかなり貴重な物だったみたいで高く売れました!」
「ほう?それは良かったな!その者の目利きは本物だな!」
「あ!その人は池田様の子孫の方ですよ!」
「なんだと!?それは誠かッッ!?」
「はい!名字も池田様と同じですし、凄いお金持ちですよ!」
「感無量だ・・・グスン・・・」
は!?何で涙流すんだよ!?とうとう壊れたのか!?
「大丈夫ですか?」
「まさか未来とやらでワシの子孫が居るとはな。しかもその者がお館様の物を鑑定できる能力があるとは・・・ワシは幸せ者だ。その者に礼を言ってくれ」
「は、はい!」
言えるわけないだろ!?頭おかしくなったんか!?ってオレが言われるじゃないか!
それから各々の部屋に向かい酒、菓子、つまみなんかを色々渡す。
肝心の信長さんは酒が好きではないと言っていたためサイダーを渡し、ポテチ、チョコレート、クッキーなど色々渡した。
「うむ!良い!非常に良いぞ!瀬戸で作った物を鑑定したのは恒興の子孫らしいな」
「え!?何で知ってるのですか!?」
「今しがた恒興が言いにきた。さすが彼奴の子孫だ。勤勉で一芸こそないが、そつなく全てを平均的に熟せる者よ」
「そうなのですね。話は変わりますが、6日後に色々軍事的に使えそうな物を持ってきます」
「貴様は変わったな。それで良い。光秀に鉄砲を教えたらしいな」
「はい。まだこの紙は渡していませんが恐らくすぐに物にしてくださるかと・・・。後は木下様です。色々種を持ってきました。半年後くらいにはみなさんの食卓に並ぶかと思います」
「良きに計らえ。これよりワシは外に目を向けなければならない。貴様を戦に付いてこさせるつもりはない。貴様は武器開発を任せる。奇妙入って参れ」
「はっ。失礼致しまする」
入ってきたのは高校生くらいの好青年の子だった。この子は信忠君だな。信長さんと違い優しそうな雰囲気だな。
「うむ。貴様は奇妙の配下に入れ。武器開発、輸送に関しては奇妙の指示にて動け」
「え!?織田様は三河に行かれるのですか!?」
「ワシが行かんでどうする?タヌキ1人で抑えられる程武田は甘くはない」
どどどどうしよう・・・確か三方ヶ原の戦いは信長さんは参陣してないはずだぞ!?マジで歴史変わったのか!?いや待て。まだ実際に出向いたわけではない。とりあえず俺は信忠君の元でやれる事をしよう。
「分かりました。オレはできる限り頑張ります」
「うむ。後は2人で連携しておけ」
そう言われ、オレと信忠君は下がった。そして、信忠さんが自室に来てくれとの事で一緒に向かう。
信忠君の部屋はミニマリストか!?ってくらい何もない。絵や箪笥らしき物も何もない。少し寂しい雰囲気な感じがする。
「某の部屋を見る方は皆驚かれます。父上と違いすぎると」
「いえいえ。人それぞれ違いますから気にしません。申し遅れました。合田武蔵と申します」
「奇妙丸でございます」
社交辞令的な挨拶を済ませて今後の事を話し合う。まず、明智さんとも連携し、早期に武器開発を行うと。それをオレ達が輸送する小荷駄隊となると。
確か小荷駄隊はみんなから軽視されると見た事あるけど織田家の跡継ぎがする仕事なのかと聞きたくなる。
「とりあえずこの紙をお渡ししておきます。オレの親友が教えてくれた物です。綿花栽培から細かい事まで書いていますので、すぐに物にできるかと。オレもできる限り必要な物を揃えるように致します」
そこからの行動は早かった。まず、あやめさんにオレが持って来た物を色々渡して現代に帰った。里志君に電話して色々聞いた。
無煙火薬は、綿を発煙硝酸と硫酸でニトロ化させれば良いと聞いた。そんな簡単にできるのかと思ったが、聞けば簡単と言われた。
まず、発煙硝酸と硫酸を水で冷やしながら混ぜる。すると温度が上がり始め、2時間程完璧に混ざり合うのを待ち、その後綿花を液体に浸す。この綿花を浸す時間も2時間前後でいいと言っていた。
全ての工程が終わり、最後に流水で洗えば綿火薬の出来上がりと。
『こんなに詳しく聞いてどうするの!?』
「いやそれは・・・小説を書くためだよ!」
『武蔵がそんなに真剣になるなんて初めてだね!他にも聞きたいことあればいつでも聞いてくれよ?』
「ありがとう。なら例えば三方ヶ原の戦いなんかはどうすれば勝てたと思う?」
『そんなの簡単だよ。信玄の寿命が近いわけだろ?守っておけば問題ないよ。家康的には本拠の城を素通りされて憤慨して野戦を仕掛けて脱糞しながら撤退しただろ?』
「いや・・・そんな簡単な事じゃないと思うんだ」
『そうだな・・・実は三方ヶ原の戦いは織田軍から誰が派遣されたか謎なんだ。信長公記では、佐久間信盛、平手汎秀、水野信元が派遣されたと言われている』
「確かオレもそれで習った思い出がある」
『まあ通説はね?ただ、明智軍記では滝川一益、林秀貞、佐久間信盛、合計5000人と言われているし、総見記では佐久間信盛、平手汎秀を頭に水野、林、美濃三人衆の稲葉良通、安藤守就、氏家直元、毛利秀頼約3000人を派遣されたと言われているんだ』
「そんなに説があるの!?」
『そう。まあそれが歴史の面白いところだけどね?武蔵がどの説を取るかは自由だけど、オレが思うのは総見記だね。まずこんなに後世に名前が残る人達が揃って3000人はあり得ない。美濃方面に万近い人を派遣し、実際三方ヶ原に赴いたのは、佐久間、平手、水野で残りは後備えだとオレは思っている』
「後備え?」
『あぁ。まあ予備隊みたいなものだよ。だけど、あまりに武田が強すぎて、伝令が届く前に勝負が終わり、織田軍もこれから防衛戦ってところで信玄が亡くなったのだと思う』
「さすが里志君!オレもそう思う!」
『まあこれは俺の考えだし、歴史物は指摘する人が多いと思うけど頑張ってね?あ!それともし現代から何か持っていけるならトランシーバーなんかあるといいかもね?1万円も出せば相当良いトランシーバーが買えるし伝令がすぐに伝わるからもしかすれば三方ヶ原で勝てるかもしれないよね』
トランシーバーか。まったく思いつかなかった。よし!買おう!
「ありがとう!ならさっそく試してみるよ!また連絡するね!バイバイ!」
『試す?どういう事だい?』
「あ、いやいや書いてみるって事だよ!ありがとう!」
なんなら本当に里志君も戦国時代に行った方が早いと思う。夏休みに会えば連れてってみよう。




