みんなのABC in戦国
※中島豊後守 織田信忠の傅役が誰か分からなかったので実在の人ではありますがとりあえずこの人に充てました。ご了承ください。
「合田君?私思ったのよ」
「はい。何がでしょうか?」
五カ庄に陣を張り、続々とやってくる織田軍・・・そして、大荷物を持ち遅れてやってくる里志君と有沙さん、この現代組は一度帰る事となった。
少し未来の信忠君・・・現在の勘九郎君にちゃんと許可も貰っている。暫くは信長さんの到着を待つと言う事になっているからだ。
現在は6月第1週の火曜日・・・その仕事が終わった後の事務所での事だ。
「合田君はあの戦国時代で何になろうとしてるの?」
「別に何になろうともしてません。ただ、下々の人達の生活の質が上がればと思い、商いのような事をさせてもらっています」
「あのクローラー運搬車とかうちの商品だよね?」
「同級生の漆原君が乗ってたやつですよね?それならはい。そうです。少し前に色々ここで購入させていただいた物を向こうに持って行かさせてもらってます」
「そう!そこでよ!私思ったのよ!思ったというか頭にアイデアが生まれたの。自然にね」
「何でしょうか?」
「あ!戦国時代にも・・・みんなのABCを作ろうって」
いやいや社長はなに言ってんだよ!?と思うがそれをオレが言えるわけない。
「えっと・・・ではオレが今している彼女の妹さん達のお店とかも吸収されるということでしょうか?」
「ふふふ。なに言ってるのよ!私まだ信長と会った事もないのよ?だって信長って苛烈な人なんでしょう?私が思う事させてもらえるとは思ってないわよ」
やはりそういうイメージなんだな。
「一応、手紙を信長様に届けるように飛脚の人にお願いはしました。明日には届くかと思いますが、信長様は決して傍若無人な方ではないです。多少は苛烈なところはありますが話を聞いてくれ、情にも厚い方ですよ」
「まぁ!?信長様って・・・合田君は本当に信長に仕えてるのね〜」
「さすがに呼び捨てはできませんよ。本人は呼び方なぞどうでもいい!と言ってはいますが、周りの目がありますからね。多分社長の事が気になって気になって仕方がないんじゃないでしょうか?」
「そう。なら、私もちゃんと自分を売り込まなきゃいけないわね。もし、私の話が通るとすれば・・・合田君あなたはみんなのABC戦国支店の店長にでもなる?」
「はい!?」
「ふふふ。私の中では既に頭の中にどうすればいいか入ってるのよ!聞いてくれるかしら!?そうだ!あやめさんだっけ?あなたの彼女はこちらに来れるんでしょ!?連れて来なさいよ!お寿司食べに行くわよ!遠藤君〜!後はよろしくね!これから重要会議に向かうから!」
「はい!畏まりました。武蔵君!また出世かな?ははは!おつかれさん!」
「あっ、ちょ!社長!?て、店長!お疲れ様です!社長!?待ってください!」
「お館様!後は三淵が残るのみとなりました」
「伊勢、日野、高倉はどうした?」
「はっ。退去した模様です」
「ふん。大した事のない。まるで遊戯じゃな」
「お館様!合田殿からの書状でございまする」
「ほぅ?もう槙島を落としたのか?それとも倅が何かやらかしたか?あけてみろ」
「構いませんので?」
「構わん!」
「では・・・えぇ〜っと・・・」
「チッ。遅い!貸せ!犬!貴様は今少し未来語を勉強しておけ!」
「申し訳ありませぬ」
「うん?なになに?・・・・ふん。彼奴が未来で商いしておる女主人がこちらに来たとな。面白い!」
「お館様ッッ!!」
「次はなんぞ?」
「勘九郎様からの書状にございます!」
「貸せ。チッ。読みにくい!倅にも早く未来語を覚えささねばならぬな。慣れればこちらの方が読みやすい。ほう?初陣というまで前線に出したつもりはなかったが※中島豊後守は五カ庄まで出したのか」
「お館様?勘九郎様の初陣は小谷で終わらせたはずでは?」
「ふん。あんな不発の戦が織田家の嫡男の初陣だと?笑わせる。ちょうど良い。犬もサルも光秀も居る。権六も五郎左も美濃衆も居る。権六を呼べ!」
「はっ。お呼びでしょうか?」
「速やかに二条御所を明け渡すよう三淵に説得致せ。倅の誠の初陣にしてやろう。遠藤!遠藤は居らぬか!?」
「は!」
「遅い!小雲雀を持て!ワシは一足先に五カ庄に向かう!その後、二条御所には光秀を入らせよ!残りは急ぎ五カ庄に来るように伝えよ!倅の誠の初陣じゃと触れもだせ!足利を終わらし、新しき時代の幕開けじゃ!勘九郎の初陣にちょうど良い!」
ここはいつかの決起集会か何かの時に来た回らないお寿司屋さんだ。オレはあやめさんを呼び、3人で・・・って事もなく池田マダムも合流し、田中さんも一緒にお寿司屋さんに居る。
何故田中さんが居るのか・・・それは例の縛りのないラボの扉から現代に戻り、田中さんはスーパーで買い物をしようとしていたらしい。その時ちょうどオレ達と鉢合わせし、社長が呼んだのだ。社長の『あ、みんなのABCを戦国にも作ろう』と思った考えの中には田中さんも含まれているのだろうか。
なんと言っても元バイトリーダー、異名をみんなのABCのヌシとまで言われた人だからな。それとかつては切れたナイフだっけ?とにかく凄い人だからな。
そして、今回はジャンボタクシーでの移動だ。もちろん社長の奢りというか、多分経費だと思う。その車中での事だ。
「しゃ、しゃ、社長!?そそそ、そのみ、みどりもよろしかったのですか!?」
「なによ田中君?そんなに吃らなくてもいいのよ?田中君は徐々にシフトを減らしてって言ってたけどあなたあっちで骨を埋める気でしょう?」
「え、あ、まぁ、はい」
「ふふふ。そんなのもったいないわよ!見た感じ田中君は武士向きじゃないんだし、まだ働いてもらいたいのよね。ねぇ?合田君?」
「え!?オレすか!?」
社長は何を考え何を思っているのか・・・。例の寿司屋に到着しても今日は社長は調子がいいのかぶっ飛ばしている。
「大将!いつものお代わりお願い!」
「みんな食べて飲んでる?みどりさんとあやめさんだっけ?そんな静かにしなくとも飲んで食べていいのよ?遠慮してはダメよ?」
「しゃ、社長様!大変美味しくいただいております!」
「わ、私も今生味わった事のない極楽を堪能しております!」
うん。あやめさんもみどりさんも少し引いているね。
「よし!じゃあ本題よ!」
ここから社長劇場だ。まず、現在既にいろはちゃんが商いしている合田商店はそのままオレの思うようにしていいと。
むしろ経営の事など社長が色々教えてくれるとの事。では社長がやろうとしてるみんなのABCとはなんぞやというと・・・
「私は貴族向けの商いをしようと思うの。あの時代女の地位なんてないようなものじゃない?それに槙島の戦いでしょう?これから京都が潤うようにするにはお店を作るしかないと思うの」
「それは分かりました。ですが、オレや田中さんが働くとは・・・」
「そんなの決まってるじゃない?あの合田君の部屋ってエアコン置いてたわよね?誰が設置したの?私は仕入れる事はできるけど設置できないのよね〜。ね?田中君?合田君?」
「現場仕事をしろということですか?」
「そこまで言わないわよ?ただやるならとことんよ!」
「と言いますと?」
「戦や遠征にはモバイルバッテリーはいいかもしれないけど、拠点となるところには発電機置いてしまおう!」
「はい!?」
「まぁ見てなさい!合田君や田中君を、あっ!と驚かせるから!ゴグッ ゴグッ プッハー!!大将!お代わり!!」
男前な社長の飲みっぷりを見て、これまた大変な事になると思いながら日付け変わるまで付き合わされた。




