表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドア開けたら戦国時代!?  作者: デンデンムシMK-2
第一章
17/174

渾身のドヤ顔

 「ほんにお主等はピーピーと煩い」


 「濃姫様・・・しかしこのような得体の知れぬ者の薬をーー」


 「黙らっしゃい!!妾もこの者の事は知らん!だがお主等なんかよりよっぽどお館様の事を思っておる!巷の医者は怖くて匙を投げた。それなのに仕えて間も無いこの者が面倒を見ておる!」


 この人が濃姫様なんだ。想像通りの人だ。気が強いけど信長さんにはゾッコンってイメージだな。ってかオレの事は信長さんから聞いたのかな?


 「ではどしろと!?」


 「皆の者は下がりなさい!妾が殿の面倒を見ましょう。其方は武蔵と申したな?先日に、殿から聞いておるのじゃ。面白き奴が出入りしておる。相伴衆にしてやったとな?其方の事であろう?世にも珍しき未来から来たとか?」


 「はい。そのままの通りです。信じてもらいありがとうございます。薬は纏めておりますので朝昼晩と3回飲ませてください。晩に関しては明日また来ますので」


 「ふん。信じたわけではないがのう?もしこの薬にて殿が死ねば、妾はどんな手を使ってでも貴様を探し出し磔にして妾も自害致しましょう。殿の居ぬ世界なぞ真っ平じゃ」


 こぇ〜!これが戦国時代の女の人か!?


 インフルとかなら分からないけどとりあえずこれで症状は和らぐはずだ。後は信長さんの治癒力に期待しよう。


 「分かりました。もし何かあれば逃げずに前に来ます。すいません。織田様も大切ですが私にも生活がありますので戻ります。前田様にスマホ渡しておきますので安心してください」


 「ふん。数々の戦場を渡り歩いたこの者達より今は1番大きく見えるのう?武蔵とやら」


 濃姫さんに嬉しい?事を言われオレは帰る事にした。池田さんの部屋のドアの前で呟く。


 「あやめさん居る?」


 「はい・・・」


 「なんかややこしくしてしまってすいません。妹さんの事も必ずオレがどうにかします。あの、よしのさんでしたっけ?何か言われたりされたりすればオレが対処します」


 「え!?ですがいくら合田様でも上忍相手には・・・」


 いや、確かに身体的には負けているだろう。けど頭は負けてるつもりはない。あの人にはない物は何か・・・。未来の物!コネだよ!コネ!結局他人任せだけど負けるつもりはない。


 オレが2人に家と当面の生活費を渡せば万事上手くいく!


 「よしのさんって方に伝えておいてください。もしあやめさんの妹に何かしたならオレもどんな手使っても許さないと。織田様が治り次第出向くと言っておいてください」



 次の日の仕事は地獄だった。まず朝はよく自分でも起きれたなと思う。


 店長からも『顔が疲れてるのじゃないの?』と言われたのだ。そのオレを見て店長は初めてお昼を誘ってくれた。なんでも大事な話があると。


 「合田君?ここだよ!ここ!ここの定食は美味しいんだよ」


 「はい!ありがとうございます!」


 「何でも食べな?疲れてるようだからガッツリスタミナ定食食べなさい!」


 「はい!いただきます!」


 社交辞令的な話を交えつつ店長はオレの心臓の音がドクンッと言うような事を言った。


 「実は一身上の理由にて社員の小笠原君が辞める事になったんだ。私としてはね?田中君を推したいのだが社長が、若くて先がある合田君を社員にしたいそうなんだよ」


 「え!?社員ですか!?まだ一カ月少々ですよ!?」


 「おや?けど合田君は社員と同じ仕事をしてるのだよ?それに先日来た池田さん覚えてる?あの池田さんなんだけど実は社長と知り合いみたいで君の事凄く褒めてたらしいよ?」


 「マジすか・・・普通に接客してただけなんですけど・・・。社長様は女性の方なのですか?」


 「あぁ〜、まだ見た事ないんだね。今度来たら紹介してあげるよ。あまり顔出さない人でね?他にも色々経営する物凄い女性の方だよ。あまり嬉しそうにみえないけどバイトのままがよかったかい?」


 「いえ!私如きが社員などとは夢にも思わず、頭がこんがらがっておりますはい」


 「面白いね。履歴書では転々としてたようだけど大丈夫そう?」


 「はい!頑張らさせていただきたいです!」


 「よし!じゃあこの話は社長にも伝えるから後日面接があると思うからまたその時は事前に教えるから!」


 店長に嬉しい事言われ、初めての正社員にウキウキしたが1番苦手の面接があるとは聞いていない。一気にまたブルーになった。


 あやめさんの事や信長さんの事。ファッキンサノバよしのさんの事もあるし・・・。このままあのよしのって女に金を払うのも癪だしな。ざまぁ!してやりたいとも思う。


 

 そして、この日は何事もなく仕事が終わる。帰り際に優しい葛城さんは何を勘違いしたのか、疲れたオレの顔を見て、フラれたと思ったらしく『良い女の人はいっぱいいるよ?』と言い、店で売ってある栄養ドリンクを一箱買ってくれた。


 「いやフラれたわけではないですが・・・まあありがとうございます」


 「ふふふ。強がらなくていいのよ?人生山あり谷ありよ!」



 家に戻りこの栄養ドリンクを一本飲み、残りの栄養ドリンクと今日のオレの夜飯、コンビニの炒飯と信長さん用のスポーツ飲料を戦国時代用のバッグに入れて出発する。


 そして、ドアを抜けたすぐに池田さんが大興奮して問いかけて来た。


 「遅い!まったく、いつまで待たせるのだ!お館様が待っている!」


 「え!?昨日の事38度の熱があったのにもう治ったのですか!?」


 「訳の分からん未来言葉を言うな!分かりやすく言え!」


 と、これ以上ない分かりやすい言葉だが池田さんに少し叱責され昨日の部屋に向かう。そこには濃姫さんと信長さんと蘭丸君が居た。


 「お館様!武蔵が参りました」


 「うむ。入れ」


 入る寸前に池田さんに耳打ちされた。


 「すこぶる機嫌が良い」と。



 「失礼しまーー」


 「よく来た。まずは礼を言う。うん?どうした?入ってよいぞ」


 まずビックリしたのが信長さんは着替えている途中だった。信長さんの信長は例えるなら、オレの愚息がピストルなら信長さんのはスナイパーライフルって感じだ。


 要はデカい。負けた。完膚なきまでに負けた。


 「すいません。遅れました」


 「良い!昨夜夢現つにて貴様が甘い蜜柑の何かを食わせてくれたな?美味であった。薬に関してはまったく苦くもなく飲みやすい。おまけに効き目が抜群である!」


 「良かったです。念の為に熱を計ります」


 「なんじゃそれは?」


 ピッピッ ピー


 「36.5度・・・凄っ!マジで1日で熱下がってるよ!?あっ、すいません。これは体温を計る機械です。人は37度前後が通常の体温ですが、昨日の咳病なんかが身体に入り込めば身体がその病を駆逐しようと体温を上げるのです」


 「ほう?続けよ」


 いや続けよって・・・。


 「まぁそれを手助けするのが昨日も今日も飲んだと思いますが薬です。ですが恐らくまだ身体に悪さをした病の元が残っていると思いますので明日1日はお休みした方が良いかと思います」


 「うむ。で、あるか。なら明日は1日休むとしよう。なんでもお濃に聞けば佐久間等と大立ち回りしたそうじゃな?」


 「いえ、そんな大した事は・・・偉そうに言ってしまったと思っていますのでこの後謝ろうかと思ってたのですが・・・」


 「構わん!もしこの事をガタガタ言ってくるならワシに言え!何も行動を起こさぬ者より失敗や叱責、咎を恐れず動く者をワシは評価する。それが咳病相手でもだ!むしろだからこそ凄い。うむ。実に凄い」


 確かに機嫌がすこぶる良いな。かなり褒めてくれているな。


 「ありがとうございます」


 「うむ。時に・・・昨日のような食い物はないのか?」


 「ゼリーですか?すいません。今日は持ってきておりません。今日はこの栄養ドリンクと弱った身体に良い水分とーー」


 「その飯はなんだ?」


 バックの中で隠そうとしたが見つかってしまった。これはオレの夜飯!650円の炒飯だ!


 「これはオレの夜飯です・・・」


 「ほう?夜飯か。ワシも腹が減っておる。貴様は未来とやらに帰れば食えるよな?ワシは貴様が持って来ぬと食えぬ。後は分かるな?」


 病み上がりなのに何でこんな覇気を放てるんだよ!?確かにこの時代の人はオレが持ってこないと食えないだろうけど普通はお粥とか食うもんじゃないの!?何で炒飯欲しがるんだよ!?ぜっんぜん病み上がりじゃないじゃん!?


 「どうぞ・・・食べてください・・・」


 「うむ。貴様も分かってきたではないか!」


 「殿?あまり家臣の物を奪うのは禍根を残す事になりますよ?」


 「ふん。お濃!貴様も食ってみよ。分かってはおるが此奴が持ってくる物は全て至高の味ぞ」


 「そう言われましてもたかだか食べ物・・・・」


 「濃姫様!?」


 いやいや、どこからこの女の人現れたんだよ!?この人も忍者かよ!?


 「騒ぐな!何でもない。下がれ」


 「のう?ワシの言った通りだろう?」


 信長さん渾身のドヤ顔だ。こんな悪そうなドヤ顔できる人は信長さんしか居ないだろうな。


 「武蔵・・・だったかえ?妾にこれを毎日届けよ。良いな?毎日ぞ?」


 いやいや夫婦揃ってあんたも信長さんみたいな『是非も無し』みたいなオーラ放てるのかよ!?毎日とか破産してしまうわ!


 「すいません。毎日は無理です。1週間に一度くらいなら・・・」


 「ならぬ!毎日じゃ!」


 「ふん。お濃?その辺にしてやれ。此奴はワシのものじゃ。それに銭がかかるらしいぞ?それで此奴も未来とやらで商いの丁稚をしておるようじゃ」


 いや丁稚って・・・そりゃ確かにバイトとニュアンスは近いと教えたけど・・・。


 「なんじゃ丁稚か。納得致した。この者が自分で商いしておるのかと思うておったが甚だ疑問じゃったのじゃ」


 いや見下してるのかよ!?酷すぎじゃね!?


 「あのう・・・少しお聞きしたい事がございます」


 「なんじゃ?何でも申せ!あぁ〜!褒美なら暫し待てい!」


 「え?何か褒美くれるのですか?何もしてないすよ?」


 「はは。面白い奴じゃ。これ程の手柄で褒美が要らぬとはな?だが貰っておけ。他の家臣のためにもなる。で?なんじゃ?」


 まぁ何かくれるって言うなら貰おうかな?信長さんの湯呑みとか欲しいかも!?


 「実は又聞きですがここら辺では人身売買は禁止されてると聞きましたが例外を作って欲しく・・・」


 そう言うと超超ご機嫌だった信長さんの機嫌が一気に急降下したのが分かった。


 まずったかもしれない・・・。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ