信忠への謁見
土曜日に五ヶ庄に到着し陣を張り、簡易ではあるが橋をかけて日曜日になる。まずは信長さんの到着を待つ・・・引いては二条御所の陥落を待っている状態だ。
さすがに1日、2日で終わるという事はないのは分かる。オレは今なにしてるかというと、社長、池田マダム、丹羽さん、甲賀隊全員でドローンで航空偵察中だ。
まず、有沙さんのように社長の適応力の高さに驚く。この時代は女性は不浄の者として言われているが、織田軍に限ってはそれはない。
数々の便利グッズ及び、内匠頭となった池田マダムが居るからなのか、特にオレが率いる合田隊には女性が多い。田中さん運転の中古客船で里志君、有沙さん柴田さんが到着した。
その有沙さんは女性ながら今や主要な部隊に色々な投擲物の供給をする部隊となっている。先に言ったように池田マダムは内匠頭、有沙さんの部隊は柴田軍と羽柴軍、竹中軍の中から選抜で数名混成し爆撃隊と名を変えた。
そして新たな女将として社長が居る。未だ信長さんと謁見してないし正式に織田軍というわけではないが、社長もノリノリである。合流した里志君にお願いし、新たに陣を張った五ヶ庄の最後方に小屋を建ててもらい、慶次さん筆頭の合田1番隊に誰も近寄らせないようにしてもらっている。
船で続々と運ばれてくる織田軍、尾張衆、美濃衆、そして一段と体の大きい人達が寄せ集まり、甲冑を赤色で統一してある部隊の織田勘九郎・・・後の織田信忠君だ。
少し前に元服というのをしたらしい。オレはこの出来事を知らなかったためこの槙島の戦いが終われば記念品くらいは渡そうと思う。念の為の確認だが、オレは織田家相伴衆となっているわけだが、主君はもちろん織田信長。
だが属するのは織田信忠という変わった軍だ。以前、報告などをオレですら忘れていたがそんなヘマは二度としない。今回はもちろん勘九郎君をいつでもお呼びできるように準備してある。
とりあえず、早くに勘九郎という名前を改名してもらい信忠としてもらわないと名前を間違えそうである。
その織田勘九郎君・・・まぁ本人を前に君付けなんかで呼べるわけはないけどその勘九郎君にまずは社長を謁見させる予定である。
「お待たせ致しました。俺に会わせたい人が居るとか?」
「え!?何でここに!?こちらから出向くと言ったのに・・・」
「いえいえ。若輩の俺が出向くのが礼儀。此度の戦の副将は俺ですが御飾りです。分を弁えてはおります」
これだよ。信長さんと性格正反対のところ。この勘九郎君は性格穏やか、人の気持ちを汲み取り部下思いのある人だ。乱世が終われば絶対に良い君主になる人だとオレは思う。
ちなみに史実ではこの槙島の戦いに勘九郎君は出陣していないだろう。オレ達が来たせいかは分からないが、これは史実にはなかった出来事の一つだ。
里志君にお願いし、田中さんと国友一門の人達にお願いして、プレハブ工法で組み立てもらった小屋が2棟・・・一つはチートの現代への入り口だ。もう一つは勘九郎君の陣だ。
「本当にすみません。では・・・さっそくですが、こちらはオレの未来の商いの社長・・・上司とも言う・・・違うな・・・なんて言えばいいでしょうか・・・兎に角かなり目上の大切な方です!」
「そうですか。手前、尾張 織田家 織田信長が嫡男 織田勘九郎と申します」
「私は山中由佳と申します。今後ともよろしくお願いします」
オレは今更だが社長の名字を初めて知った。山中って言うんだ。
「では貴方様が例の女傑様だったのですか?」
「え?女傑って・・・」
「合田殿がかなり褒めていましたよ?なんでも拾っていただき、商いを教えてもらったとか?色々な商いをされていてかなり尊敬してる方とも聞きましたよ?」
「いやねぇ〜!合田君!そんな事まで言ってたの!?」
いや、オレは勘九郎君に社長の事は何も言ってないと思ったんだけど・・・そりゃ確かに尊敬してる女性だけど何でそんなこと言うんだ!?あっ・・・半笑い・・・
チッ・・・リップサービス的なやつか!?オレの大切な人って言ったからヨイショヨイショしてくれたのか!?いや、ここは素直に後でありがとうと言わないといけないな。
「さて・・・暫くは父上が来るまで停滞するでしょう。合田殿は戻られるのでしょう?いつものように5日程来られないので?」
「あぁ〜・・・そうですね。もしアレなら夜なら来れます!」
「いや、父上もまだ少し刻が掛かるかと思います。ここは俺に指揮権がありますゆえ、合田殿は好きに動かれて構いません」
ここも気が利く勘九郎君だ。普通なら戦の途中に抜け出すとか斬首もんだろう。だがオレはあまり、とやかく言われない。それが最初からの約束だからだ。
「織田勘九郎様?私もこれからまた来させていただいてもよろしいのですか?」
「それはもちろんです。池田様も内匠頭として今後公家達からの鑑定業も増えるでしょう。山中女将も遠慮なく手腕を発揮してください。父上がなんと言っても俺が後ろ盾となりましょう」
「まぁ!?ありがとうございます!合田君!ちょっと相談があるの!いい?」
「え!?あ、はい!大丈夫ですけど・・・」
「おーい!次郎!次の尾張衆で最後だ!」
「国友さん!分かりました!」
「うむ。このような島のような船なぞ初めて見た。其方は・・・」
「あっ、合田武蔵 配下の田中次郎、隣はみどりと申します。よろしくお願いします」
「と、殿!!?これが船でございますか!?漕き手が見当たりませぬぞ!?」
「田中殿?これはどうやって走るのだ?」
「これはエンジンという機械がありまして、このレバーを押し込むと走るのです。漕き手は必要ないのです。えっとあなた様は・・・」
「おぉ〜、すまぬ。ワシは簗田出羽守政綱と申す。よしなに頼む」
「確か武蔵君が三方ヶ原での時にお世話になったというーー」
「そうじゃ!あれから家臣が大変なのだ。平時より有事の時の方が飯が美味いじゃ、卵が食いたい、果物の酒が飲みたいと煩くてな」
「ははは!よければ船の中に少し食べ物ありますのでお出ししましょうか?」
「殿!!お願いします!俺はピザが食べたいです!」
「某は甘い菓子を!」
「こらっ!己等!戦の前だぞ!控えよ!」
「ははは。みどり!お出ししてあげて!簗田様、すぐに到着しますのでその間にでもお食べください。岸に近くなれば小早に乗り換えて上陸となります。武運長久を」
「うむ。相すまぬ」
「殿!素晴らしい船でしたね!」
「うむ。ワシも年甲斐もなく浮かれてしまったわ。淡海をあれほど速く走れるとはな。これなら小谷を攻める時にも使えそうじゃ」
「あれ!?小谷は新九郎殿となにか話されたとか言われませんでしたか?」
「ふん。義弟は優しすぎる。久政をどうにかするだろうが、攻める事はできぬであろう。まぁそんな事より今は早く二条御所を制圧せよ」
「はっ!」




