コンパネ橋からの組み立て式歩橋
佐和山から黒王に乗り、出発したオレ達・・・丹羽さんは元々オレと行軍するらしく、浅井の抑えは佐和山城の北にある、羽柴さんが守る横山城が近江への備えとなる。
だが、丹羽さんに聞いた限りだとその羽柴さんまでも今回は出陣とのこと。羽柴さんは調略が上手く、二条御所攻略に向かうそうだ。
信長さん本隊、羽柴隊、明智隊が二条御所攻めで、オレ、丹羽隊、後で合流するだろう、柴田隊、美濃国衆の人達などが、槙島城攻めとの事。
五ヶ庄・・・現代では京都大学宇治キャンパスがありそれなりに人は多いのではないだろうか?そして、今ほど整備はされていない宇治川が流れ、その先に大きな大きな池がある。
所謂、巨椋池と呼ばれる池だ。現代では埋め立てられなくなった池だろう。その池の中にあるのが槙島城だ。難攻不落と京の公家の人達なんかには有名らしい。
オレからしてみればこの巨椋池を包囲してしまえば簡単に干殺しができるのじゃないかと思う。まぁ、強いていうならばここ五ヶ庄に小川さんや、黒川さん、小泉さん達甲賀隊が後発で来る部隊のためにゲルテントを設営しているが、目の前に流れる宇治川・・・ここを渡らなければ槙島に行けない事だ。
この宇治川が意外に流れが早い。だがこれは想定済みだ。史実では部隊が浮き足立ってたところ、信長さんが手本を見せてやる!とか言って、信長さん先頭に渡りだしたところやっと他の部隊も渡り出したって記事を見ている。
たしかに、少し深そうで怖くはある。だが・・・
「おーい!武蔵!高さはこのくらいで大丈夫か?」
「水より高ければいいですよ!後は脚立を倒してコンパネを乗せれば簡易的ではありますが橋の出来上がりです!」
「我が君!こっち側も高さ出せましたぞ!」
「はーい!小川さん!ありがとう!風邪引いたらいけないからちゃんと体拭いて着替えてください!」
ガタン! ガタン! ガタン!
「うん?ぬぉ!?あれは!?」
「うん?小泉さんどうしまし・・・えぇ〜!?!?」
「面白い!さすが武蔵の上司の女傑だな!」
「合田く〜ん!」
「しゃ、社長!?なんでここに!?しかもよくあんな獣道みたいなところ走れましたね!?」
「だって、みんな見てると私だけのほほんとしてるのはダメかと思ったのよ。それにお城で見てみたら船とかこの軽トラもだけど、自重してないのね」
「時間がなくて言ってませんが、パラレルワールドと確信がありますので好き勝手してます!」
「ふふふ。なら私も手柄立てようかしら」
「え!?」
「ここ宇治川でしょう?少し待ってなさい!」
社長は朝の時とは打って変わりキャピキャピした顔で戻っていった。荷台に乗っているミヤコさんも驚くような顔ではなく面白がっている顔だ。まったく戦という雰囲気とは全然違う。
社長が意味深な事を言って居なくなり1時間程経過したところだ。後発の織田軍の人達が続々とここ五ヶ庄に現れ始めた。
「うむ!我等のために陣の構築誠に、恐悦至極である!」
「もはや家とも言えそうな陣ではないか!」
馴れ馴れしくオレに話してくるみんな・・・御礼を言ってくれてるのは分かるけど誰も知らないんだけど!?
「ほほほ。遅れましたな」
「あ!竹中様!お疲れ様です!」
「少しばかり遅れました!ゲホ ゲホ」
「大丈夫ですかッッ!?」
竹中さんの咳にビックリして安否を確かめる。確か竹中さんが亡くなるのは1579年だ。今は1573年だからまた時間がある。
「なんですか!?らしくないじゃありませんか。少し咽せただけですよ。咳病に罹り、合田殿の薬を飲み安静にしていたのですが、さすがに戦を休むわけにはいけませんからね。まだ治ってないので咳が出ただけですよ」
「あぁ〜、良かったです!本当に風邪なのですね!?咳が止まらないとか喀血があるとかじゃないですよね!?」
「本当になんですか?ただの咳病ですよ。大袈裟な。それより・・・合田殿の上司の方が見えたと重矩から聞きましたが今はどちらに?」
「あ、なんか持ってくるとか言って佐和山に戻っていきましたがーー」
「敵方!!出合え!出合え!なんか走ってきよる!!」
「あぁ〜!!ちょ!!!違う違う!味方!味方!!」
そこにはルンルン気分で走ってきた社長と池田マダムだった。軽トラの荷台に見た事のない超超大きい箱が積まれてあった。
「社長!?その箱は!?」
「恐らくだけど橋掛けるんでしょう?脚立にコンパネと不安定な橋を掛けているけどこっちの方がいいんじゃない?」
脇差しを抜き、オレは箱を開ける。オレ達の事を知らない兵隊の人達から注目を浴びているが、そこは丹羽さんに相手しもらう。そして箱の中身・・・
「これは・・・」
「見た事あるでしょう?みんなのABCにある組み立て式の大型歩橋よ!」
「いや確かにあるのは知ってましたが持って来てくれたのですか!?」
「だってこんなの買う人なんてそうそういないからね?倉庫に在庫が余ってるし持ってきたのよ!」
「女傑・・・それは・・・」
「これは組み立て式の橋ですよ。この宇治川を渡りたいのですよね?合田君が組み立ててくれるのでみなさんは見ていてください」
「え!?社長!?オレだけですか!?」
「武蔵様!私も手伝いますよ!」
「あやめさんごめん、ありがとう!」
説明書を見ながら組み立てる。甲賀隊の人総出で組み立てる。
川幅は10メートルくらいだろうか。深いところは小川さんの首くらいの深さではあるが両河岸に、脚立コンパネ橋のように、土嚢袋で高さを出して置くだけだ。安定度合いは悪いが人が歩く分には問題ないだろう。
まずこんなにオレ達が作業しているのに槙島城の兵隊は何も妨害してこない。この時点で士気が違うのかとすら思う。
「見事な橋だ!お館様もさぞお喜びになるだろう!まぁ少し休め!」
「このまま攻めるわけではないのですか?」
「まずは全軍到着するまで待機と言われている。明日にはお館様も到着するだろう」
「分かりました。オレは後方で構いませんか?」
「女傑と話す事があるだろう?人払いさせておく。ゆるりと話すが良い。あぁ〜、道案内の件だがそのけいとらだったか?道案内の駄賃はけいとら一騎で手を打ってやろう!ははは」
いやいや道案内しただけで車一台かよ!?ぼったくりすぎだろ!?
「合田君?詳しく聞かせてもらうわよ?それにあやめさんだったかしら?あなた達の事もね?ふふふ」
社長の意味深な笑顔・・・聞くったって何も言う事もないんだけど・・・。




