未来の武器商人
時間がもったいないため、軽トラの荷台に人を乗せて、細心の注意をしながら10キロ未満で黒王号を放し飼いしている所を走る事にした。一回3分、4人ずつ乗せるようにした。ちなみに、黒王号君は相変わらずプレミアムチモシーを食べまくり上機嫌だ。
最初、軽トラで牧場に入ると警戒していたがオレが名前を呼ぶと並走したりと本当に性格の良い子だ。そして、助手席には里志君だ。
「まさか戦国時代の人が車に興味持つなんてな」
「まさにその通りだよ。今乗ってる小泉さん見てみなよ」
『速い!速いぞ!!若い頃を思い出すのう!!ははは!』
「軽トラの荷台に乗っただけで何で若い頃を思い出すのか意味が分からないよ。まぁみんな喜んでくれるならそれはそれでいいけどね。それで・・・欲しい物があるって言ってたよね?」
「そうなんだ。ネットで見つけたんだけどな・・・」
里志君と有沙さんが欲しい物・・・まずは弾丸を自分達で作るようにしたいとのことで、しかもその作りたい弾丸が現代の銃の弾丸だそうだ。
これはオレも聞いて驚いたのだが意外にも簡単に作れるとのこと。しかも弾丸を作る機械は普通に密林サイトで売っているみたいだ。なんなら、スクショを見せられた。
「え!?これが弾丸作るのに必要な機械なの!?」
「そうなんだ。意外にも小さいだろう?リローディングプレスって言うんだ。価格は20万と少しするけどな」
このリローディングプレス・・・電気も使わず、穴が空いており、それを手で圧縮させるような機械だ。そして、続いて同じように見せられたものがケースクリーナーと呼ばれる物とプライマーブラシ、ルビーパッド、ハンドプライミングデバイスという名前のものらしい。
里志君は英語ができるので、アメリカのウェブサイトを見て調べたらしい。ってか、そもそも今言った機械類は全部電気を使わず手動だそうだ。しかも密林サイトで全部買えるとのこと。全部揃えると50万程はするそうだが、弾丸が自作できるならこれより強い事はないとオレは思う。
ただ一つ問題があるそうだ。
「このオレが言ったやり方は空薬莢がある事前提の話なんだ」
「要は中古の薬莢を再利用するって事だよね?」
「そうそう。空薬莢は普通に他の物と同じように密林サイトに売ってはあるんだ。けど、空薬莢の程度にもよると思う。もし薬莢の真鍮が曲がってたりすればそれはもう使えないからな。最悪、弾詰まりして暴発する恐れもあるからな」
「確かにそれは怖いかも・・・。ちなみに空薬莢の値段は?」
「参考までにこの出品者の人が空薬莢を色々売ってあってな?10発で700円くらいだ」
「分かった。数撃ちゃ当たる戦法で相当数購入しよっか。だめそうなものは捨ててしまえばいいんじゃない?」
「まぁお金に余裕がある人しかできない事だよな。そこは武蔵に任せるよ。とりあえず、今はオレは国友さんとハンドガンの製造をしてるんだ。もしハンドガンが作れればこの弾を使う予定なんだ」
「本当に武器商人になってしまうね」
「いや、俺だけじゃないよ。有沙も一緒だからな」
『殿ッッ!!そろそろワシもお願いしたいです!』
「はい!?小川さんさっき乗ったでしょ!?」
「ははは!さすが武蔵の隊だな!怖いもの知らずとはこの事だ」
「笑い事じゃないよ!ただでさえ甲賀隊の人達は好奇心旺盛な人ばかりなんだし」
「別にいいじゃん!武蔵の部下なんだから大事にしてやれよ!よっし!じゃあこの紙渡しておくからな!」
「分かったよ!」
バサバサバサバサ
「あれ!?みんな飛び降りてどうしたんだ!?」
「おい!武蔵!あれ・・・」
「ほう?ワシの領内で面白いものに乗っておるではないか?ん?ワシの小雲雀より速そうではないか?ん?新しき物は具にワシに伝えよと言っておったよのう?この落とし前はどうつけるのだ?ん?」
現れたのは天上天下唯我独尊の織田信長さんだ。誰がどう見ようと一発で分かる人だ。言葉こそこんなだが、誰よりも興味津々だ。
「織田様!すいません!早くにお見せしようとしていた次第なのですがーー」
「御託は良い!ワシにも乗らせろ!遠藤ッッ!!小雲雀を帰しておけ!」
「信長様!!さぁ!さぁ!こちらへどうぞ!武蔵が楽しい旅へと誘ってくれるでしょう!未来ではこれを車と呼びます!このシートベルトを装着して座ってください!」
「う、うむ!」
クッソ!里志君は逃げやがったな!?オレに信長さんとドライブしろという事か!?
「おぅ!いいぞこれ!速く!もっと速くだ!」
信長さんは怖がるどころか楽しんでいる。こういうところがカリスマなのか!?
「武蔵!これはなぜ走っておるのだ!?疲れないのか!?操縦は難しいのか!?もっと数は揃えられないのか!?」
5メートル走る毎に次から次へと質問がやってくる。車の説明はできなくはないが詳しく言っても理解できないだろうと思い簡単に言うことにした。
「織田様!これはガソリンという燃える水を燃料・・・ご飯にして動かす事ができるものです!他にもオイルというものや水など色々必要ですが簡単に言うと、燃える水を燃やしてその力で走らせています!」
「そうか!これは我が領内では作れぬのか!?」
「すいません。それに関しては頑張っても無理です。作る事が大切かもしれませんがこの車に関しては絶対に無理です!」
精密機械が必要だし、国友さん達も含め製鉄所の人達の技もまだそこまで達していない。むしろ理論すら分からない人には作れないだろう。それに仮に作れたとてガソリンがないから無理だろう。
そして、運転の事も言った。未来では免許というものがないと運転できないこと。それを破って運転すると罰があるということ。だがそんな事なんか屁とも思わないのが・・・
「ふん!面白い!ここはその罰とやらはない!どれ!代われ!ワシが手本を見せてやろう!
〜30分後〜
「オェェェェ〜〜」
「クッハッハッハッハッ!面白い!実に面白い!!武蔵!これをもっと持っては来れぬのか!?」
「すいません。それは未来でもかなり高価になりましてそんなには持って来れません。それに先程、里志君とも話したのですが織田様も簡単に運転できるように他の方も要領の良い人なら一度見れば運転できます。未来では止まらないといけない道や車同士がぶつからないように運転しないといけないため免許がいるのです」
「ほう?未来とやらはこの車なる物が溢れているのか。だが、通れぬところもあるのではないのか?」
「はい。道幅が狭いところなんかは無理です。だから他の土地に行けば走らせられないとところもあるでしょう。特に甲斐なんかは難しいかと。ですが、盗まれるのはいけません!」
「ーーー使えるな。ーーーこれにも使える。ーーーいやこれもいいな」
信長さんは急に独り言を言いながら思案している。こういう適応力の高いところ、新しく見た物の新しいこの時代ならではに使い込もうと考える力は信長さんに勝てる人はいないだろう。
「うむ!決まりじゃ!まずこれに関してはワシが預かる!遠藤に飯の燃える水の事を教えよ。そしてこれを後少し持って来い!前金じゃ!」
ドサッ
オレはまたこの時代の銭かよ!と辟易としていた。未来に持っていっても然程の価値もないからだ。これじゃあ車なんて買えないよ!なんてさすがに言えはしないけど。
「ありがとうございます」
まぁ中古なら残りのお金を全ツッパすれば10台くらいは購入できるだろうか・・・ジムニーの方を持って来なくてよかった・・・。あれはオレの車だ!
「なんじゃ?不服そうな顔じゃな?その袋を開けてみよ」
「いやとんでもありません!不服そうに見えたなら謝りま・・・・えぇぇ〜〜!?」
ズタ袋を開けてみると、中身は銭ではなく金塊が入っていた。所謂、延棒と言われるやつだ。
「ふん。ワシがいつまでも、何も考えてないと思うなよ?銭は新しく生まれ変わっていく事くらい分かる。貴様が居る未来とやらではワシらが使う銭は古臭い事くらい分かっておる!じゃが・・・以前貴様は言ったな?『古今東西、金の価値はそう変わりません』とな」
「はい。確かに言いました」
「それがいかほどの価値になるやは知らぬ。だが端金という事はなかろう?受け取れ!遊ぶのもよいがそろそろ軍として動ける用意をしておけよ?ワシの見立てでは5日後には動くぞ」
「なんですとぉぉぉ!?」




