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ドア開けたら戦国時代!?  作者: デンデンムシMK-2
第二章
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15日の沈黙

 「ワシを呼び出すとは中々に大きくなったものよのう?義弟よ」


 「お久しぶりにございます。息災なようでなによりです」


 時刻は早朝の5時だ。今や各地に点在している織田家の人達にトランシーバーを常備させてある。謂わば連絡係だ。その連絡係の人がトランシーバーからトランシーバーへ伝令を行い、各地で作業が行われているのである。


 まぁ簡単に言えば、トランシーバーも使える距離があるので、トランシーバーをかなり使った人海戦術のような感じだ。その人海戦術を使い岐阜城に居る信長さんを佐和山城まで来てもらう事となったのだ。


 昨夜、浅井さんが・・・


 「義兄殿と話がしたい」


 と、真剣な顔でオレに言ったからだ。オレは即座に丹羽さんにお願いして今となる。まさか速攻で来るとは思わなかった。


 「お館様!浅井殿からこのようなものを渡されました」


 「なんだ?うん?これは・・・」


 「それを見せれば俺の本気がどのくらいか分かるかと・・・」


 丹羽さんが早々に信長さんに見せたもの・・・例の設計図だ。


 「これをワシに見せるという事は降伏するという事か?それとも・・・親父を捕えるのに加勢しろとな?」


 「な、何故それを!?」


 「ふん。貴様は戦は中々やるようだが、家臣達や親族衆、国人衆の事を考え過ぎる節がある。だから親父等や国人衆に踊らされるのだ。今の浅井家の当主は誰だ?え?誰だ!」


 「お、俺です・・・」


 「ならば貴様はドンと構えておけばよいのだ」


 「いや、それとこれとは関係ないではないですか!?朝倉殿を攻める時の約定を破ったのはーー」


 「ワシは破ってはおらぬぞ。なんなら書状を何通も出しておる。誰ぞに握りつぶされたのではないのか?朝倉に与して1番、利を得たのは誰ぞ?」


 白熱した会話だ。それに、やはり信長さんは手紙をちゃんと出しているんだ。意外にも細かい人だし、義理を果たす人だからまさか約束を破る人とはオレも思ってはいなかったけど。


 「親父です・・・」


 「ふん。だろうな。貴様の父は徹底的に六角に従う事で大名となった。当時は京極家と争っておったから仕方の無い事であろう。戦が下手だったというのもあるだろう」


 「・・・・・・」


 「だが、元服した時に臣従関係にある事をはっきりさせるため六角義賢から1文字を貰いお前は最初、賢政と名乗らされた。それにたかが家臣の娘とも婚姻させられた。だが、親父と違いお前は戦や家臣を束ねるのが上手い」


 「いや、あの時は暴走する家臣を止められなく、あのままなら親父が家臣に寝首を掻かれそうになり、追放する形にして俺が家督を相続したのです」


 「その結果は野良田で成功したな。だが、厄介な国人衆が残った。そして、我が儘国人衆が親父を担ぎあげたと。近江に固執しすぎるばかりに今となるのだな」


 「全くその通りにございます。俺は有頂天でした。俺こそ日の本一の武士だと・・・」


 「臆したか?」


 「えぇ。義兄殿と戦って・・・姉川で義兄を見て思いました。あの構えの終盤まで押し込み義兄に届くかと思いました。だが・・・」


 「ふん。あの13段構えは貴様にワシの刃が届く距離まで潜らせたのだ。だがあの囲いから逃げられるとは思いもよらなんだがな」


 「なんですと!?あれはわざとだったのですか!?」


 「当たり前じゃ。あれで貴様がワシの大きさが分かるかと思っておったが、てんでダメだったようだな」


 「いえ・・・十分に義兄殿の大きさが分かりました。俺は怖かったのです。野良田であの六角家に・・・かつての主人に勝つ事ができて・・・ですが、姉川にて井の中の蛙だと気付きました」


 「ふん。そこじゃ。ワシが貴様を気に入っておるのは。ただ虚勢を張るだけではなく負けは負けと認め次に繋げるようにすれば良いのじゃ。義弟よ。貴様が怖いと申すワシも首と胴が切られれば死ぬ。戦とは戦になる前にどれだけ準備できるかによって勝敗が決まる。そこを覚えておけ!」


 「では・・・未だ俺を・・・」


 「わざわざ家臣に内緒にまでして佐和山まで来てやったのだ。ワシは足利の世を終わらせる。近江が欲しいならくれてやる。同腹の妹をくれてやったんだ。ワシは市を悲しませたくはない。だが、次はないぞ?」


 黙って2人の会話を聞いていたけど、何回も思う事がある。オレは信長さんが好きだ。冷酷な人なんかじゃない。義理堅く、裏切りも許す優しい人だ。オレや里志君、池田マダムが居る世界での織田信長像は誰かが作った印象が強いんだろうなと思う。


 「義兄上!少し時間を・・・」


 「どのくらいだ?後、一月もすれば将軍が動くぞ」


 「15日・・・15日だけ時間をください!それまでに親父や国人衆、家臣達をどうにか致しますゆえ・・・」


 「よかろう!ならばワシは浅井家ではなく、浅井長政という男を信じる!だが、京に向かっている時に後ろを襲う事があれば容赦せぬぞ?その首ワシ自らが叩き斬ってやろう」


 「いえ。2度と間違いは犯しませぬ」


 「ふん。ならば貴様も共に来い。後ろでも前でもなく共に横で来い!さすれば新しき世を見せてやろう。帰るぞ!綾子!その小谷城の設計図をこぴいとやらを致せ!ワシが一枚保管しておく!武蔵!貴様は岐阜に戻り朝飯の用意を致せ!」


 「え!?朝ご飯すか!?伊右衛門さんが居るじゃないですか!?」


 「チッ。ワシは貴様が作るカレーを所望する!それとミルクコーヒーだ!カレーは辛くするなよ?甘いカレーだ!」


 いや誰が作っても同じだと思うんだけど・・・。

 


 岐阜へと帰ってる途中だ。


 パカラ パカラ パカラ パカラ


 「織田様は容赦なしって感じだと思ってました」


 「あん?ワシに歯向かう者には容赦はせぬが、姉川の時もだが義弟が本気でワシに刃を向けるようには思わなかったからな」


 「けど、オレが三方ヶ原に行ってた時、挙兵する素振りは見せてたのですよね?」


 「あぁ。本願寺がな。いったい武蔵や綾子はワシをなんだと思っているのだ?裏切った者を皆殺しにするのは容易いが、そんな事しても人は着いて来ぬぞ?」


 いやあんたの口からおま言う!?


 「ははは。オレ、織田様に仕える事になり良かったです!」


 「なんぞ!気持ち悪い事を抜かすな!だが・・・未来人にそう言われるのも嫌いではないな。約束の褒美は覚えてる。見事、離間できたな」


 ここで思い出した。無理ゲーだと思っていた離間工作・・・達成できたんだと・・・。城持ちが本当になってきてニヤニヤ顔で関ヶ原を抜け岐阜に帰った。

 

 

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