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ドア開けたら戦国時代!?  作者: デンデンムシMK-2
第二章
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雛を見守る親鳥

 「お〜う!やってまんな!?持ってきたでぇ〜」


 「あっ!今井様ありがとうございます!」


 「それにしてもこんな重い物敵わんで?駄賃を少し上げてもらわないかへんな?」


 「なら、この瓶のお金持って行きます?多分それよりもっと重くなると思いますよ?」


 「ははは!合田はんは冗談に冗談を返すとはまた上手いですな!?身の丈に合わぬ報酬を貰うのは身を滅ぼす。これ商売人の鉄則やでぇ!?ほな!おおきにな!次は葉月に持ってくるさかいに!」


 「ありがとうございます!お願いします!」


 みんながお互いの目標を語り合ってから2ヶ月と過ぎた。里志君、有沙さんは週末、戦国時代を楽しむため帰って来ている。田中さんは結局、仕事は辞めずその代わりシフト量を減らしたようだ。


 オレと池田マダムは毎日ではないが、行ける日は一緒に行くようにしている。ただ、不思議な事にこちらから現代に向かうのに関してだが、一方通行のままだ。行きの方は例の魔法使いを卒業しても通れるみたいだが、こちらからは魔法使いじゃないと通れないままなのだ。


 長い長い正月休みを終えた慶次さんが帰って来て・・・


 「そろそろ俺も未来がどんなところなのか見学に行ってやろう!武蔵!行くぞ!」


 と、言ってドアを潜ろうとしたのだが通れなかったのだ。このドアの秘密を全部知ったかと思っていたがそうでもないようだ。


 この事象を目の当たりにして、オレとあやめさんは未だ繋がれていない。そういう雰囲気には結構なるけどまだだ。


 現代の仕事の方は順調も順調。例のプロジェクト夫婦は農協に米を卸せるように段取りもして、他には野菜の栽培にまで手を伸ばしている。


 オレはオレで人間国宝さんに色々教わりながら田んぼの基本的な事は教えてもらったと思っている。その証拠に、岐阜城から1番近い村を信長さんから貰ったのだ。


 「北側にある蝮村を貴様に任す!サルと連携し、一大生産地とせよ!」


 と、言われ凄い名前の村を貰ったのだ。


 「壮観じゃ!壮観じゃ!合田!アッシは他の将より功績が低い。じゃが、下々の民の心は忘れておらんと思うておる!お前もアッシに力を貸してくれるか?」


 「もちろんですよ!この村を尾張で1番生産力の高い村にしましょう!」


 羽柴さんとの連携は竹中さんに持ってもらった。そもそも竹中さんがオレの与力となったのも、オレに近付いて来たのも全てはこの羽柴秀吉さんが仕組んだ事なのかもしれないと思う。


 現に他の人達より随分と距離が縮まっている。飯を食う時、ハウス栽培の監督、用水路の拡張工事、現代利器の使用の数々・・・今1番オレの恩恵を授かっているのは羽柴さんだ。


 植えた物はかなりある。ほうれん草、人参、レタス、トマト、茄子、カボチャと健康にいい野菜ばかりだ。


 他にも果物・・・時間は掛かるだろうが、ぶどうの苗木を100株ほど植えている。ちゃんと木柵も作り、いつ蔓が伸びてもいいようにだ。後は桃だ。この桃の木も上手く育てば2年で収穫できるはず・・・まぁ初めてだから失敗するかもしれないがとにかく色々な物を育てるのに挑戦している。


 この育てる作業や土を掘り起こす作業だが蝮村の人総出で行っている。ここでさすがと思う人はやはり羽柴さんだ。誰だろうと関係なく手伝ってあげているからだ。人たらしとはこういうところもあるのかなと思う。


 ちなみに、こんなに種や苗木を購入できたかというと、今井さんから送り届けられたプラチナのおかけだ。少し石ころがついてはいたが、初めてプラチナの原石を見たと思う。


 最初に送り届けられたプラチナは不純物込みで5キロだった。


 貴金属買取というお店に持って行き、かなり色々聞かれはしたが、その日の相場は1gあたり5000円だったため、グライダーやエア工具なんかで作業してもらいプラチナ自体の重さは1キロだった。


 「こちら500万円の買取りとなりますが、作業賃を差し引いて480万円となりますがよろしいですか?」


 「はい!?そんなに高値なんですか!?」


 と、こんな当たり前なやり取りがあったが本当にその場で現金を貰った。


 「もし・・・もし、まだ他にもお眠りの原石がございましたら当店を御贔屓くださいますようよろしくお願い致します!あっ、私の名刺をお渡ししておきます!持ち込みが難しいようでしたら出張という事もできますので!その分出張費は掛かってしまいますが」


 最後に悪どい顔の店員になり、その人の名刺を貰った。名刺には代表と書かれている。今井宗太郎さん・・・まさかね。まさか今井宗久さんの子孫なんかじゃないよな!?しかも今考えるとちょこっと石を削るのに20万の作業賃って高いよな!?まぁあんま根掘り葉掘り聞かれなかったからいいのはいいけど。


 こんなやり取りがあり、今は現代も戦国でもかなり裕福だ。


 田中さんは戦国に居る事が多く至る所に引っ張りだこだ。岐阜のオレの家を改造してもらい寒さはなくなった。


 オレが持ってくる未来の物のお溢れを貰うかのように色々な人がオレの家に来ては暖かさに驚き、その秘密をオレは言っていた。


 「この田中さんがオレの家を改造してくれたのですよ!お金を出せば河尻様の家も改造してくれますよ!」


 「ほう?田中とやら!銭は出す!俺の家も頼もう」


 あの信長さんの黒母衣衆筆頭、河尻秀隆さんの家を改造してからみんなが待っている状態だ。


 信長さんもやっと田中さんの可能性に気付いたのか、新たに50名の大工職人を着け、本当に田中建設みたいな軍団になっている。


 「武蔵君!鍵と断熱材、断熱シート、防腐剤の追加を頼む!」


 「忙しそうですね!分かりました!とりあえず大量に持ってきます!」


 こんなふうに現代に行き、自分で買ってくる時間もないくらい忙しいみたいで、オレは頼まれた物を持ってくるパシリをしていたりもする。



 寒さもなくなってきた3月も終わりに近付いてきた頃に信長さんに登城するよう言われた。


 呼ばれた部屋に行くと少し苛立っているように見えた。


 「よく来た。まずは飲め」


 「ありがとうございます」


 お茶を一杯貰い、ゆっくりと話し出す。


 「東の脅威は和らいだ。だが西は相変わらずだ。その中でとある所だけ士気が高い」


 「とあるところですか?どこですか?」


 「近江だ。阿閉が寝返ってからもっとこちらに寝返る者が増えるかと思いきやそうでもない。義弟ながら上手いものよのう。それに比べ朝倉側は名前も知らんような奴が内応すると書状が来たりしておる」


 浅井長政・・・信長さんの妹が嫁いでいるんだったよな。


 「何か搦め手を使うのですか?」


 「クハハハ!貴様もこの世界に慣れてきたものよのう!最初は糞や小便を漏らしておったのにな。何かいい手はないか?将軍もそろそろ痺れを切らすであろう。京に向かっている間に近江で小競り合いを起こされるのはいかん」


 確か鉄甲船かなんかで琵琶湖を越えるのが通説だっけ?船の建造が先か!?


 「少し時間もらえますか?」


 「ワシは待たされるのは嫌いだ。2日時間をやろう。何か案を考えてみよ」


 信長さんは『何かいい手はないか?』とオレに聞いてきたがこれはオレを試しているように聞こえた。オレがどれだけ成長したか見られてるのだろうか・・・。

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