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ドア開けたら戦国時代!?  作者: デンデンムシMK-2
第二章
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いつもより忙しい元旦

 「池田さん!?そろそろお暇したほうが・・・」


 「も〜う!なによぉ〜!?そんなに私の事が嫌いなのぉ〜!?」


 「いや、社長!違います!もう夕方近くですので・・・」


 「グスン・・・そうやって男の人はみんな私もお金は持ってるけど寂しいおばさんって見るんだ・・・」


 「私も旦那と離婚してずっと独り身だけど、本当に男の人は若い女にしか目が向かないんだから!」


 この日は凄い。池田マダムも社長もかなり酔っている。しかも飲んでいるお酒が最初こそビールだったけど、気がつけば化粧箱に入っている、明らかに高そうなビンテージ酒を飲み出した。


 オレは池田マダムが口を滑らさないかヒヤヒヤしている。


 「けど、私もちょっと飲み過ぎちゃった。由佳ちゃん?私もそろそろお暇するわ!」


 「綾ちゃん!そんな事言わずにもっと飲もう!?そうだ!このお酒も開けちゃおう!」


 余程1人になりたくないのか・・・これがもう少し若い人ならオレもワンチャン・・・いや仕事場の社長相手には流石に無理か。


 「綾ちゃん!飲み方からして敢えて言わなかったし、前も私から言ったと思うけどあんなヒモ男にフラれたからってこんな飲み方はよくないよ!」


 「だって・・・・」


 なんだと!?社長は確か独身だったと聞いているけどまさか彼氏にフラれたんか!?しかもヒモ男だと!?


 それにこの猫撫で声・・・歳は50代半ばだろうけど、やはり社長も女は女なんだな。仕事中の時のような百戦錬磨の人も色恋には弱いんだな。


 それに見たくないし、見るつもりもないけど部屋着で着ているズボンが少し下がり腰の方がパンチラしてるけど、明らかに年相応の下着ではなく20代の子が履いてそうな下着だし。


 「うぁ!?合田君!なによぉ〜!私のお尻見てなに考えてんのよぉ〜!」


 「え!?あ、いやいや・・・なんも見てないっす!」


 「もういいよ・・・2人とも付き合わせてごめんね。私は1人で飲むから!合田君?付き合わせてしまって悪かったね?そこのお酒2、3本持っていっていいわよ。それに外国のだけどウィンナーとかお肉とかも持って行っていいからお母さんにでも渡しなさい」


 「いやそれは悪いですよ!それに今日はもう社長も飲んだらダメです!飲み過ぎです!あまり深くは聞きませんが、社長は魅力的な方です!素敵な男性は必ず現れます!」


 オレはありきたりな言葉だが社交辞令のつもりで言ったのだがそれがいけなかった。


 「うわぁぁぁぁぁぁん」


 大の大人が泣き出した。しかも仕事先の社長がである!


 「しゃ、社長!!!」「由佳ちゃん!!」


 それから小1時間は愚痴のオンパレードだった。なんなら飲んでる時に言えや!と思ったがそんな事は流石に言えない。


 愚痴は聞いてもないのにヒモ男の事の事を事細かく言っていた。やれ浮気しまくっているとか、仕事に就かない、仕事を斡旋しても続かない、小遣いばかりせびってパチンコばかり行っているとかだ。まぁ典型的なダメ男だな。ただ最後に・・・


 「夜は最高だったの・・・燃えるような・・・」


 聞きたくなかった。想像もしたくない。


 「社長!本当にすいません!彼女待たせてるのでオレは帰ります!何かあればメールとかください!飲み過ぎはダメですよ!」


 オレは強制的に帰ろうとそう言うと、さすがの池田マダムも付き合いきれないと思ったのか同時に立ち上がった。帰り際無理矢理ビンテージ酒を3本も持たされ、持ってっていいと言われた肉類を巨大な冷蔵庫から取り出す。


 この土産?とかは御歳暮で仕事関係の人から色々貰うらしく、とても1人では消費しきれないから本当に持ってってほしいらしいのでありがたく貰う事にした。そして、これらを渡してくれたあと深くーー


 「こんなおばさんの愚痴聞いてくれてありがとう」


 と、言われた。この社長の『ありがとう』一言は信長さんから『大儀である!』という言葉と似て、少し嬉しかった。


 この時なんとなくだが社長も戦国に連れて行くような気がした。




 オレはなんとかネットで正月もしている代行運転を呼び帰る事にした。池田マダムも社長ほどではないがまあまあ酔っている。オレは酔いは醒めてきはしたがそれなりに酒は残っている。


 オレの家に行くまでの車中で・・・


 「私の旦那も浮気して離婚したのよ。それにしても合田君ありがとうね?私は今が人生で1番楽しいかも」


 「ははは。全然ですよ」


 「確か戦国時代では妻を何人も持ってるのが普通よね?私も合田君のお妾さんにでもなろうかしら」


 「池田さん!揶揄わないで!」


 こんなやりとりがあった。確実にこの人も酔っている。



 「たっだいま〜!あやめさん!ごめん!遅れてしまった!」


 「合田様!お帰りなさい!」「武蔵様!お帰りなさい」


 「この匂いは・・・揚げ物・・・トンカツですか!?」


 「はい。伊織と作りました。沢彦和尚は後日改めて参るとの事で、土産に梅酒とお菓子を少々お渡ししておきました」


 「ごめんごめん!ありがとう!実は社長に捕まってしまったんだよ。いろはちゃん?池田さんに水を渡してあげて!後、このウィンナーとか肉とかは冷蔵庫に入れておいてくれる?明日の織田様の土産にするから」


 「畏まりました!それと、簗田様が来られていました。また明日話そうとの事でした」


 「簗田様か。あの熱い人だったよね」


 「はい。簗田様からも土産に軍鶏を頂きました!何かお返しをした方がいいかと」


 「なら、明日登城する時に蔵から持って行くよ!とりあえず風呂に入ってからトンカツ食べるよ!池田さんは少し酔いを醒ましてください!」


 「はいはーい!」


 「あ!お背中お流しします!」


 「あやめさん!マジで!?入ろう!一緒に入ろう!」


 ムフフな事を想像しながらあやめさんと風呂に向かっていたところ、見知らぬ人の来訪があった。


 トントントン


 「はーい!」

  

 応対してくれてのは、いろはちゃんだ。


 「合田様の家で間違いないか?某、佐久間家 足軽頭 三島照之と申します。合田殿は居られるか?」


 「はいはい。オレが合田ですが?」


 「夕刻に申し訳ない。我が殿が合田殿にお会いになりたいと申しております」


 ファッキンサノバ佐久間の先触れか。断りたい。今からオレはあやめさんとムフフだったのに。いつもいつも邪魔しやがる!


 だが流石にいくら嫌いな人だと言っても目上の人に・・・しかも家老格の人を無下にできないよな。


 「分かりました。お待ちしております」


 「ありがとうございまする!ではすぐにお連れ致します!御免」 


 「はぁ〜。今日は元日なのにイベントが多すぎる。疲れた・・・あやめさんごめんね。オレが1人で応対するから休んでて!」


 「いえいえ!私もご一緒致します!」


 本当に今日は1日が長い・・・

 

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