新たな出会い
「うわ!!?本当に違う所に出たよ!?」
「だから言ったじゃないですか!」
「帰って来た!僕は戦国に帰ってきた!」
「いや田中さん大丈夫すか!?」
「合田様!お帰りなさいませ!田中様、お久しぶりでございます。息災なようでなによりです」
「うん。いろはちゃんも元気そうだね。みどりはーー」
「田中様!!」 「みどりっ!!!」
クソが!!いや別に久しぶりの再会だろうし抱擁したいのは分かるよ?分かるけど、せめて違う所でしろよ!!
「と、とりあえず・・・池田さんは客間の方へどうぞ。田中さんは・・・」
「僕は部屋に居るからなにかあれば呼んでくれたのでいいよ!さぁみどり!話す事がいっぱいあるんだ!」
「合田様すいません・・・」
「いいですよ。みどりさんは今日は休み!田中さんと楽しんでください」
目の前でイチャイチャされるのは敵わない。だが、久しぶりに会えた2人の仲を引き裂くような無粋な事はオレはしない。優しい男だからだ!それに、一応名目上は田中さんも、オレの配下って事になってるし。
「あぁぁぁ!!!配下で思い出した!!!」
「どうしたの!?」「合田様!?どうされましたか!?」
「いやいや、オレってば一応今は、奇妙様の麾下になってたんだ!挨拶の一つもしてないや!!これはワンチャン叱責どころではないぞ・・・池田さん!登城しよう!!」
「うん?武蔵?そんな慌ててーー」
「里志君は家に居ていいから!!」
オレは池田マダムの手を引いて、小走りで登城した。城の中は城詰めの人達が必死で大掃除や何かに使うのか分からないが木箱やお皿なんかを出したりしていた。
「おっ!合田殿じゃないか!慌ててどうしたのだ!?」
「伊右衛門さん!お久しぶりです!奇妙様起きてますか!?」
「奇妙様なら今しがた朝餉をお持ちしたところだ!それより謹賀の儀の飯なのだがお館様がカレーをーー」
「後で聞きます!!すいません!」
「お、おい・・・」
池田マダムは何が何やら分からないだろう。当たり前だ。だがそんな余裕はオレもない。城中の人達はみんなオレに挨拶をしてくる。気付けば偉くなったものだと自分でも思う。
奇妙丸君の部屋は2階の1番奥だ。3階が主力の人達の部屋が並ぶところだ。階段を上がると池田さんとすれ違った。
「おう!武蔵!そんな慌ててどうしたのだ?まさか糞でも漏れそうなのか?汚すなよ?今朝も畳に油を塗ったばかりなのだ」
「なっ!?違いますよ!あっ!ちょうどよかった!池田さん!こちら池田恒興様です!池田さんのご先祖様ですよ!」
「は!?え!?ちょ、ちょっといきなりすぎて・・・」
「ははは!武蔵も冗談を言えるくらいになったか!この女が俺の子孫だと?」
「そうですよ!すいません!オレは奇妙様の所に行かないといけないので2人で語らってください!池田さんもいいですね!?」
「え!?ちょっと!合田君!?」
「チッ。少し出世したからといい気になりやがって。ついこの間まで糞尿漏らしだった男の癖に・・・おい女!名はなんと申す?」
「は、はい!池田綾子といいます!」
「ふむふむ・・・俺の子孫・・・ふ〜む。そう言われれば、目元はお滝と似ておるのかの?まぁいいか。なんでもお館様の短刀を鑑定したそうじゃな!?よくぞやってくれた!まぁ俺の部屋に来い!未来とはどうなのか教えてくれ!」
「ははは、はい!!」
とりあえず池田さん2人を引き合わす事ができたから最低限の仕事は終わったかな!?
トントントン
「先触れも出さず申し訳ありません!合田武蔵です、奇妙丸様に御挨拶に参りました!!」
「どうぞ」
部屋に入ると朝ご飯の途中だった。信長さんなら『後にしろ』と言うだろう。奇妙君はそんな事言う子じゃないのは分かっている。
「朝ご飯の時にすいません!御報告が遅れ申し訳ありません」
「こちらこそ、見苦しいところをお見せして申し訳ありません」
「まずは・・・武田軍を撃退し、浜松は徐々に平穏を取り戻すかと・・・。奪われた城をこれから徳川軍は奪還していくかと思います」
「大儀です!合田殿には申し訳ないです。名目上は某の麾下ですのでこうやって父上にも報告し、某にも報告する義務があるとは・・・」
「いえ。私もうっかりしてました。今後こんな事ないように致しますので」
「それより・・・どうやって武田を屠ったのですか!?」
やはり信長さんの子供だな。戦の事になれば目が輝いているよ。
オレはあの一連の戦の事を事細かく伝えた。
「某も早く元服して一人前になりたいものです!」
「こんな私で良いならばお力になれる事なら何でも致します」
信長さんより未来の信忠君の方が優しそうだな。
「来年からは内政にも着手すると聞きましたが?」
「はい!私の友達が3人、4人ほど来てますので徐々にここらへん一帯も様変わりしてくるかと・・・この事に関しては逐一報告致します」
「いや、報告はある程度終わってからでいいです。その都度報告に参られればその分色々と遅れるでしょう?某は合田殿を信用しておりますゆえ」
「では途中、途中でお呼び致しますので定期的にご自分で見られるのはいかがですか?その事を御父上に報告するのは奇妙丸様ご自身ということにすれば評価も上がるのではと思います」
「御配慮痛み入る。そのように」
「はい!畏まりました!では、また謹賀の儀の時に」
「合田殿?城下の領民の顔も良く見えます。下々の事、よろしく御頼み申し上げます」
「はっ!」
随分と慣れたものだ。最初は話し方も辿々しかっただろう。けど、今は戦国の話し方にも、だいぶ慣れてきた。目上の人と話す事も多いからな。とりあえず、奇妙君の手柄になるような事を見つけてあげよう。
「ははは!そのあとりえとやらの商いをしているのか!」
池田さんは随分と今日は機嫌がいいんだな。
トントントン
「失礼します」
「おっ!来たか!この者は誠、俺の子孫らしい!」
「合田君!ありがとう!まさかこんな事が有り得るなんて未だに信じられないわよ!」
「そうだな。俺より歳の上の子孫なぞとは信用できぬが、話すと思わず信用してしまう事ばかりだ」
「そうですか。引き合わせできて良かったです!」
「うむ!綾子!ここで困った事があれば何でも俺に言え!そうだな・・・明後日の謹賀の儀には其方も出ろ!お館様には俺から言っておく!ははは!」
本当に上機嫌だ。
程なくして、遠藤さんが部屋に入ってきた。まぁこんなに池田さんが騒いでたら分かるよな。
「合田様!お館様がその御客人と共に参れと申しております!」
「分かりました!向かいます!池田さん?いいですか?」
「う、うん!大丈夫よ!」
緊張はしてそうだけど大丈夫そうだ。
「ほう?その方が恒興の子孫か?彼奴より歳は上に見えるが?」
「は、は、はい!53歳になります!」
「そうか。そんな緊張しなくとも良い。取って食おうなぞとは思うておらぬ。なんぞ目利きが良いと武蔵から聞いたが?」
「はい!刀や茶器などを見たり集めたり美術品なんかも得意でございます!」
「そうか。ならば新たに築く城の調度品やなんかは其方に任すが構わないか?」
「「え!?」」
オレは2人の話す事を黙って聞いていたが、まさか信長さんが池田マダムに仕事を与えるとは思わず、池田マダムとハモってしまった。
新たに築く城・・・安土城だよな!?
「なにをそんなに驚く?うん?ワシは使える物、使える者は皆使う男だ。それが男だろうが女だろうが変わらぬ。見た所其方に武勇なぞはないであろう?ワシもできない事をしろとは言わぬ。できる者と思うからこそ言うのだ。もう一度聞く。池田綾子と申したな?其方に新たに築く城の内匠を命ずる」
「ほ、本当ですか!?合田君!内匠よ!内匠!」
「よ、よかったですね!?ははは」
うん。オレはそれが何かは分かっていない。けど、池田さんが喜ぶから凄い事なんだろうと思う。
確か安土城は1576年から建築するのだったよな?今くらいから場所とか探すのだろうか?オレは未来知識で知ってる事だけど、敢えて言わない方がいいよな。現存してないんだし。
「ふん。来年より武蔵等は色々岐阜の町に施すと言っていたな?ワシは来年には足利の世を終わらせる」
いやいや、確かに歴史で足利幕府は終焉するけど凄い事をサラリと言ったな!?
「はい。これからは織田様の世になります」
「統治者と相応しい城を築かねばならぬ。立派な城ならば立派な城下にもせねばならぬ。武蔵!お前の働きにも期待している。下がってよい」
「ぷはぁー・・・ハァー ハァー」
「池田さん!?大丈夫ですか!?
家に到着すると池田さんは全力疾走した後のような感じになっていた。
「あの人が織田信長でしょ!?合田君はよく普通に喋れるよね!?」
「確かに威圧感とかオーラは凄い人ですけど、凄い良い人ですよ?面倒見もいいですし、情も厚い人ですよ?」
まぁ初見ではやはりイメージが悪いよな。まぁとにかく池田マダムにも慣れてもらわないといけないな。
お滝・・・池田恒興の妻の実名がわからなかったので勝手に名前つけました。本編にはあまり出てこないと思うのでご了承ください。




