懸かれ柴田の苦悩1
「という訳です。安倍晴明様との関係が起因していてこちらへ俺達も来れたという事です」
「待て。待て。平安の陰陽師が関係しているという事なのか!?」
「はい。まさにその通りです」
「その件は分かった。だが武田を追い返したのは此奴だけではなく、お前達夫婦とあやめの手柄でもあるではないか?これはいい!僥倖じゃ!それとお前達3人は暫くこちらに居ると聞いたが?」
「はい。武蔵も怪我で、未来の仕事を休むとの事で、10日程はこちらに居ると思います。俺と彼女も暫く学舎が休みなため、是非年明けにやりたい事、いや・・・織田様にやっていただき事がございます!」
「ほう?その手に持っておる紙か?見せてみろ」
オレは今は置き物状態だ。内政の事をオレもする予定ではあったが、規模が違いすぎる。里志君は岐阜一帯の事だからな。
30分程、里志君と信長さんが熱弁しあい、折り合いがついたようだ。しかも・・・
「決定じゃ!武蔵も里志も有沙も新参だ。だが新参だと抜かす阿保にはちょうどいい!」
「どういう意味ですか!?」
「ふん。気にするな。それにしても、よくもまぁ役割が別れたものじゃ。武蔵!お前は引き続き領民の面倒を見よ!」
「領民の面倒っすか!?」
「そのままの意味じゃ!引き続き岐阜城下領民でも買えるのうな店作りをしろという意味じゃ!」
「分かりました!」
「里志!お前はこの計画を進めるが良い!有沙!お前は武器開発を一任致す!好きなものを好きなだけ作るがよい!女子1人ではいくら領内とはいえ不届者が居るやもしれん。権六を護衛としてつける。彼奴は女子を前にすると、てんでだめだ」
「権六って・・・柴田勝家様の事ですか!?」
「ほう?知っておるか?彼奴も未来とやらでは有名なのか?」
「はい!武勇に優れた方だと存じております!」
「そうじゃ!今は亡き可成程ではないが権六も中々剛の者よ。巷ではワシの部下はこんな風に言われておる。木綿藤吉、米五郎左、懸かれ柴田、退き佐久間とな」
オレは確かに聞いた事ある!と思った。木綿のように丈夫でよく働くのが名字は変わったけど羽柴さんの事だ。地味だけど米のようになくてはならないのが丹羽長秀さん。合戦で第一陣を任される事の多い柴田さん。後はこの間のようにファッキンサノバ佐久間さんだ。いくら密命だと言ってもオレは簡単に許す事はできないのが正直な感想だ。
「柴田様ってお嫁さんいないんですか?」
「有沙!なんて事聞いてるんだ!」
「だって、里志だって言ってたじゃん!武勇に優れた人だろうけど女心は分からないんじゃないって?」
「いや待て!あれはなんとなくだから!」
「クハハハ!面白い!権六!入って参れ!」
「は、はぁ〜・・・」
「そこで聞いておっただろう?」
「いえ。某は盗み聞きなぞという下衆な事はーー」
「そんなつまらん事はよい。お前は暫く有沙に鍛えてもらえ!武勇ばかりではなく女子の事、巷の遊びなぞ色々しておけ。可成の軍はのびのびとしておった。だがお前の軍は武のみの一辺倒だ。それじゃいかん。柔軟性がいるのじゃ。里志?他の男だが構わんか?」
「は、はい!柴田様なら安心できます!」
「権六!これじゃ!この柔軟性がお前にはない!里志と有沙の護衛をしておけ!常時は有沙に。仕事がない時は2人と共に居ろ」
「柴田様。一ノ瀬有沙と申します!よろしくお願いしますね!」
「ヒッ・・は、はっ!し、し、柴田権六と申しまする!勝家でも権六でもす、好きなようにお呼びください!」
これはあれだ・・・。マジで女の子に耐性がないと見える・・・。オレより酷い。田中さんよりも酷い・・・。
「決まりじゃ!おぅおぅ。お主等がこちらに居るなら謹賀の儀にも出ろ!皆に紹介致す!面白い謹賀になりそうじゃ!武蔵!その刀はその時に皆の前で見せる。それまで預かっておく」
「は、はい!」
その刀とは武田の刀だ。オレは静かに信長さんに刀を渡した。
「下がってよい・・・おっと・・・謹賀の儀と同時に論功行賞も行う。武蔵はその時に正式に草の者を家臣とする事を許してやろう」
「ありがとうございます!」
「ふん。励め!」
本当なら4人で岐阜の家にワイワイ言いながら向かっていただろう・・・。だが・・・
「・・・・・・・」 「・・・・・・」 「・・・・」
無言だ。何故かって?柴田さんが居るからだ。懸かれ柴田とは本物だと思う。だって真顔だと信長さんより怖ぇ〜し、オーラだって信長さんが怒った時並みだからだ。その人が一言も話さず1番後ろに居る。そりゃ無言になるわ。
ちなみに、竹中さんだが一度岐阜の竹中さんの家に戻った後に寄ると言われた。奥さんも連れて来るとも言っていた。どんな人なのか気にはなる。
〜柴田勝家目線〜
某は・・・某はどうなってしまうのだろうか。自分の歳ならば嫁を持ち、子宝に恵まれている奴が多い。なんならこのくらいの歳の子を持つ者も居るであろう・・・
だが某は嫁どころか女が寄り付いて来ぬ。他の男より鍛えている。早朝、昼、夜半に3度も鍛えておる。だが城中の女は皆、堀殿に目がいっている。森殿の倅の蘭丸殿も10歳ながら既に女に好かれる片鱗を見せておる。
何故だ・・・。不思議で仕方がない。他の男なんかに負けていない。槍だって弓だって、最近では鉄砲も鍛えている。だが寄り付いてくる者は男ばかりだ。某は男色は嫌いだ。だが、巷では『柴田の兄貴は男色しか好まないらしい』と噂が立っていると金森殿が言うておった。
何故だ・・・。某は男と鍛錬はしている。だがそれは他の者だってそうではないか。何故某だけ男と歩くだけでそんな噂が立つのだ。最近では蒲生も某と歩く事を躊躇してる節が見える。
「柴田様って物凄い武勇をお持ちなんですよね!?」
ふん。気を利かせてくれるか。合田武蔵・・・最近織田家でメキメキと頭角を現す男だ。線の細い体の男だ。背は少し大きいが、鉄砲の名手とも聞く。この者ですらすぐに嫁を見つけたと言うのに・・・。
「ハァー・・・・・」
「溜め息っすか!?すいません。つまらん事聞いてしまいました」
「うん?おっ!?すまぬ。決してそのつもりではなかったのだ!許せ!」
某とした事が溜め息を出してしまったか。これ程失礼な事はない。お館様が思い付きで出した命令とは思えん。思い付きで出した命令の時は急に言い出すが、あの時は扇子を持っていた。あの扇子を構えて出す命令は長い時が多い。
まずはこの者達の事を知ろう。特に合田武蔵・・・織田軍に来てすぐに嫁を見つけた。それとなく極意を知りたい。
「あっ、いや話したくないのなら構いません」
「いやいや本当にすまぬ。普段ならこんな失礼な事をしないのだが、考える事が多くて思わず溜め息が出てしまったのだ」
「そうっすか。ってか良かったら柴田様も寿司食べます?美味しいですよ!オレもお腹空いたんですよ!」
「そうです!これから私の護衛をしていただけるし、柴田様はお酒好きでしたよね!?合田君!日本酒とか持って来てるんでしょ!?3本程売ってくれない!?」
「いいですよ」
「そ、そ、某がお、女子から酒なぞ・・・しかも人の妻から酒を貰うなどとはーー」
「俺からもお渡ししますよ。俺も守ってもらわないといけないですし。それにビーチューブのために・・・動画のために聞きたい事もあるので教えてください!」
最近の若人が使う言葉は分からん。どうがとはなんなのだろうか・・・上方の新しいなにかだろうか?びいちゅうぶとは・・・。




