変わる武蔵
不思議なもんだ。オレ達は現代に帰ったわけだが、オレ達が帰り、少しするとラボから見えていた空間は何もない状態になった。
念の為元のトイレのドアも確認したが同じく初めてボットン便所に入ることができた。
「本当にSFみたいで凄いな。向こうがドアを外せば入り口は閉じるんだな」
「そうみたいだね。まぁ向こうが見えたら到着した合図だから、とりあえず持って行く物を用意しようか。オレは酒屋さんと日用品とか買い物してくるよ」
「分かった。俺と有沙は都市計画書を用意しておくよ。それと動画編集もしなくちゃいけないしね」
「その都市計画とか初耳なんだけど!?」
聞けば、田中さん在りきの話ではあるが、まず荒屋ではなく、現代建築とは言わずとも、家なしの人や身寄りがない人向けに織田軍が総合住宅を作り、そこに入ってもらう。簡単に言えばマンションだ。
次は兵の訓練所を設け、馬小屋も併設し平時から鉄砲の音なんかに慣れさせて、戦の時も動ける馬を作ると。
そして、ちょっとした商業街的な場所を作る。そこを田中さんの小型水力発電で電気を灯し、夜でも明るく治安の良い場所にする。そこに更に土壁なんかじゃなく、ちゃんとタイル壁や塗り壁なんかにして高級宿や飯屋を併設して外貨を稼いだり、密談に使ったり接待したりというところを作る計画らしい。
「まぁまだ信長にも提案してないから却下されるかもだけどね」
「まぁドアが設置されれば3人で提案してみようよ」
「そうだな」
「じゃあオレは行ってくるよ。あやめさん行こう!」
オレは有りったけのお金・・・約70万を持ちあやめさんを助手席に乗せて酒屋に向かった。久しぶりの車の運転だ。信長さんとも久しぶりに会うからお酒の他に、毎度ながらビールにワイン、ウィスキー、梅酒、酎ハイ、焼酎と色々購入した。忘れちゃいけない山先・・・。
「兄ちゃん?こんなに買って大丈夫かい?」
「気にしないでください!」
「そうか。確か前も色々買ってくれたな?こんなに買ってくれたんだ。これをサービスしてあげるよ。店頭には並べてないスコッチなんだがよければ飲んでみてくれ。俺は飲みやすいと思う」
「いいんですか!?ありがとうございます!」
「あぁ。その代わりまた買ってくれよな!?じゃあ合計48万6千2百・・・まぁいいや。48万6千円にしてあげるよ」
酒屋のおじさんが端数を切ってくれ、サービスまでしてくれた。今後もここで酒を買わなければいけない。
「たくさん買いましたね?最近こそ慣れましたが未来ではビードロも珍しくないのが素晴らしいです!」
「瓶ね。まぁ瓶はそんなに珍しくはないかな?けどかなり使いすぎた。他にも食べ物や、いろはちゃんの商売の商品も買わないといけないし大変だ」
「(クスッ)私はワクワクします!2人でお買い物できますし!」
オレとあやめさんは色々なお店を回った。雑貨屋さんに服屋、スーパー、100均に行き割れ物のコップや鉛筆、ノートなど本当に色々購入した。
忘れてはいけないのが、うちの主力商品の缶詰だ。後は竹中さん用のパンチェッタを探したがスーパーにはなかったため、イ○ンに行くと売ってあったため購入した。全て買い揃える頃には夕方になっていた。
世間では年末・・・昔みたいに買い溜めするような事はないだろうけど、それでもお客さんは多い。オレは手持ちが残り3万となり、もう購入する物もないためお金は必要ないが、社長が給料とボーナスを振り込んでくれるって事を思い出し、ATMに確認しにいったわけだが・・・
「マジで!?100万も入ってるんだけど!?」
驚いた。せいぜい30万くらいかな?とは思ってたけどこんなに入ってるとは・・・。
念の為にオレは20万だけ降ろしてホクホク顔になった。
「武蔵様!よろしければユーフォーキャッチャーなるものに今一度挑戦したいと思うのですが・・・」
「あぁ。ufoキャッチャーね。欲しいぬいぐるみとかあるの?確か前にもハマってたよね!?いいよ!はい!これ!お小遣いね!」
オレはあやめさんに3万円のお小遣いを渡した。周りから見れば貢ぐ君に見えるだろう。だがオレは気にしない!幸せだから!
2人でゲーセンを楽しんでいるところで分かった事がある。あやめさんは非常に負けず嫌いだ。昨今のufoキャッチャーは確率機が多い。だが巧妙に分からないようにしてる事が多いが見事あやめさんはこの機械に騙されている。
「あぁ!もう少しだったのに!今一度勝負ッ!!!」
「持ち上がった!あっ」
ポトン
「惜しかったね。さぁそろそろ帰ろーー」
「今一度!!これを取りたいんです!!」
「マジか・・・あぁ〜まぁ〜一つくらいならいいよ」
確率機だと言ってもさすがに3万までには天井はくるだろうと思い見守る。
「キャ〜!武蔵様!取れそうです!!」
あやめさんは5千円使ったところで確率がきたのかやっとの思いで熊かパンダかいったいなんの生き物か分からない大きめのぬいぐるみをゲットして喜んでいた。
2人して喜んでいると、オレを呼ぶ声が聞こえた。
「あれ?武蔵じゃん!こんなところで何してんの?まさかデートか!?」
「うん?誰・・・・森野君・・・天野君・・・」
声の主は同級生の奴2人だった。しかも学生時代いじめられていたわけではないがよく馬鹿にしてきた奴等だ。
「へぇ〜。武蔵の割に良い女連れてるじゃん。引き篭もりやめたんだ?」
一々チクチクした事言いやがって。
「そうなんだ。紹介するよ。彼女のあやめっていうんだ」
「どうも。武蔵様の彼女のあやめです」
「ぎゃっはっはっ!武蔵様だって!おい!本当はレンタル彼女ってやつだろ!?さっきお金渡してるところ見たぞ!ほら!本当の事言ってみろ!ぎゃはは!」
クソが!こいつらは昔と変わらずかよ!?うん?でもなんでオレはこいつらにビビってるんだ?馬場や内藤、信玄の方が怖かったぞ?
「なんか言ったか?」
「おぉーい?女の前だからって粋がるなって!」
「いつから武蔵はそんな口きくようになったのかな?学生の時はよく1人で端の方に居たじゃないか!まさかあれか?デビューというやつか!?ぎゃはは!」
なんだろう・・・ものすごく矮小に見える。あやめさんも顔が変わった。
「で、何か用?」
「おい!そんな低い声出して本当はビビってんだろ?おーい!レンタル彼女なんだろ?俺達とも遊ぼうぜ?あ!?お前こんなに金持ってんの!?少し貸してくれよ?な?倍にして返すから!」
森野がオレに肩を回して、ポケットの膨らみに気づき勝手に手を入れてきて金を奪ってきた。
そもそもなんでこんな奴等に金を貸す義理があるのだろうか。
オレは慶次さんや竹中さんに習った組み手の一つ・・・手を持ち、手を持った方の反対の足を絡めて転かす技を使った。習っておいてよかったと思う。
ドスンッ
「人の金を取って何が貸してくれ!倍にして返すだ。矮小に見える」
「痛ってぇ〜!おい!あまり調子にーー」
ドスンッ
「私からも・・・見た感じ武蔵様の学友ぽいですがこのように武蔵様はあなた達を拒絶しています。人様の物を取るというなら賊と同じ・・・成敗しますよ」
「お、おい!なんなんだよ!?お前いつからそんなになったんだよ!」
「さぁ?ここ最近色々あったんだよ。昔はお前達にもビビっていたかもしれない。けど、命の危機を2、3繰り返すとお前達みたいな奴にはビビらなくなった。仮にお前達が武器を持っていてもオレなら素手でも勝てると思う。もう一度聞く。何か用?」
「命の危機って・・・もういい!二度と話しかけてくるな!」
「大丈夫です。あなた達は武蔵様の目に入りませんから。では失礼します。武蔵様?行きましょう!」
「あ、あぁ」
イライラする気分の中あやめさんに手を掴まれ家に帰った。




