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ドア開けたら戦国時代!?  作者: デンデンムシMK-2
第一章
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腹黒タヌキの由来

 大広間へ来たオレはビックリした。まずみんなが憑物が取れたかのような顔になっている事、今はまだ昼過ぎくらいだが、オレが持ってきた缶ビール片手で踊ってる人まで居る。


 これが織田軍なら信長さんは、自ら成敗してるかもしれない。


 「馬鹿者が!なにをやっているのだ!」


 家康さんも一応、怒る事は言っているが本心ではないだろう。


 「合田殿!よくぞ!」「合田殿こそ尾張一の強者なり!」


 オレを見ると、おべんちゃらまで言う始末だ。まぁ出来上がった人達だな。


 「徳川様、早目に報告をお願いします」


 「いや、すまぬ。こら!静まれッ!まず合田殿が眠っている間に、武田から書状が届いた。信玄公を討った者は誰か、信玄公を弔うため一度甲斐まで退く。だが、来年農繁期が終われば今一度勝負しろとの事だ」


 「それで?返答はなんてしました?」


 気付けばオレが主体となって話していた。珍しく里志君も有沙さんも口を挟んでこない。あやめさんは言わずもがな、いつもオレの後ろを静かに着いて来てくれる人な感じだから何も言わない。


 「お互い民が疲弊しきっておる。2年後に再戦にすると伝えた。そして合田殿の名前をちゃんと伝えた」


 いやいやなんていう事するんだよ!?武田に狙われてしまうじゃないか!?そもそもあれは竹中さんの手柄じゃないのか!?


 「ほほほ。あれは見事な一騎打ちでしたな。よっ!合田武蔵!尾張一の強者!!これから迫り来る武田の草、三ツ者をバッタバッタ薙ぎ倒すのですよ?ほほほ」


 クッソ!!涼しい顔して嘘ばかり吐きやがって!


 「徳川様。合田武蔵 支配内 漆原里志と申します。直答お許しください。織田軍としてではなく、徳川軍としてお話します」


 里志君が急に口を開いた。それはこの2年間の間にする事だ。


 「気にせず申せ。言葉も何も選ばなくともよい」


 「はっ。ありがとうございます。まず、2年間の約定は無視しましょう。武田は合議制につき、兵を一度解散すれば中々集まりません」


 「続けてくれ」


 「はい。まず、年明けに長篠、高天神を取り返します。これで奥三河と遠江の最低限の防衛線は出来上がります」


 「うむ。だが、取り返したとして改修できる銭が徳川にはない。まず、先の戦で家を燃やされた見付の民達の面倒なども見なければならない」


 「あっ、それはオレがなんとかしますよ」


 「うん?合田殿が?」


 「えぇ。戦に参加はできませんが城を取り返したら防衛設備はこの里志君と有沙さんが。資材はオレが回します。後、米やなんかも徴発されたのでしょう?その不足分全部とは言いませんが補いましょう」


 「待て待て。そんな大きな事、織田殿を通さなくとも良いのか!?」


 「織田様は利があれば事を進めても、言葉でこそ怒りはするかもしれませんが分かってくれる人ですよ」


 「なんと!?そこまで織田殿と近しいのか!?」


 みんな勘違いしている。オレも最初はなんでも自分で物事を決めたがる人だと思った。だが実は違う。


 織田軍の強さは、オレ達が現れた後はまた別の話だが元来兵の強さで言えば、三河兵や武田兵の方が強いと思う。それは何故か。生きている環境の違いと言える。


 戦国に来て半年以上が過ぎた。人の生き死にをかなり見てきた。殺めたりもしている。その中で食うのも困る生活をしてる人は本当に強い。武田がそうだと思う。奪って奪ってをしないと生活が成り立たない。だから一人一人が本能に従い前へ出てくるのだと思う。


 信長さんは色々な軍事作戦の殆どが電撃戦が多い。作戦開始時には相手に『気取られるな』と言う事が多い。この気取られるなという意味は勘付かれるなという事だ。


 だから織田軍の人達は自発的に動く事は少ない。何か勝手に動いて敵に動きがバレると最悪、切腹だからだ。そして皆が皆、足の引っ張り合いだから弱味を見せないようにというのもあるだろう。今回のファッキンサノバ佐久間がいい例だ。


 本来ならあそこでオレは平手さん諸共死んでいたのだろうの思う。佐久間さんは岐阜に帰り、晩年はこの事を責められ放逐される。だがその運命は変わるかもしれない。オレと平手さんが生きている且つ、信玄を討ち取ったからだ。敵前逃亡を佐久間はしたからだ。


 話を戻そう。さっきの自発的に動かない人が多い。だが例外も居る。羽柴秀吉さんだ。あの人は勘がいいのか、ここぞという時は信長さんの返事を待たず動く人だ。信長さんは家臣には羽柴さんのような動きを求めているが中々それをできる人は少ない。


 だから毎度毎度口調がキツくなり、間者もどこに潜んでいるか分からないため口数も少なく、いきなり動き出す事になる。それを他の人が見れば冷酷な人と捉えられる少しもったいない人・・・それが織田信長さんだ。


 「近しいとまで言えるから分かりませんが少なくともなにを求めているかは分かります。徳川様は城を取り戻し領内を安定できる。織田様は京に目を向け、今回の武田の西上作戦の一端を担った朝倉、浅井を殲滅する」


 「なんと!?一家臣がそこまで先を見るか!?」


 いやいや誰が見ても分かる事だろ!?


 「武蔵の言う通りです。徳川様は兵を整えすぐに城を奪還する事をお勧めします。時間が経てば城の兵達は心から武田に靡いてしまいます」


 「うむ。相分かった」


 この日の夜は宴会となった。武田への書状・・・2年後と書いたあとは返答待たずして徳川軍の人達が武田に勝ったという喜びを味わっている。


 オレはというと・・・


 「30本だ!いーや!50本だ!それくらいの事を俺はした!」


 「いやいや増えすぎでしょ!?そんないくらすると思ってるんですか!?」


 慶次さんだ。先の働きの対価は山先だがなんと本数が倍以上を要求してきた。


 「ほほほ。私はこの書物に書かれてある、ぱぁんつゅえつたを所望します」


 「いやいや竹中様まで!?それはパンチェッタです!パスタと一緒に食べると美味しいです!いやそんな事より・・・確かにみんなに好きな物振るうと言ったけどそんなすぐに用意できないすよ!?」


 「だめだ!俺は今日飲みたい!」


 「ほほほ。私もこれじゃなくとも何かしら食べたいですね」


 みんな我が儘だ。


 「とりあえず岐阜に戻ってからにしてください!帰ればなんでも持ってきますので!」


 ガシッ


 オレがそう言うと慶次さんと竹中さんが熱い握手をした。


 クッソ!嵌めやがったな!?言質取られてしまったか!?



 「えぇ!?戻るのか!?」


 「はい。色々あるとは思いますが織田軍も個人的に調べたら武田軍が退いているのを確認できたため、岐阜に戻ります」


 本来なら三方ヶ原は来年まで掛かるはずだった。だが、オレや竹中さん、あやめさんの活躍で年内で終わってしまった。浜松に居る理由もないし、池田マダムも待っているため帰りたい。いろはちゃんも待ってるだろうし。


 「相分かった。落ち着いたら個人的にお礼をしたい。徳川最大の危機を防いでくれたのだ」


 「いえいえ。お気になさらず」


 徳川家康・・・ポーカーフェイスで何を考えているか分からない。だが、武田が去った事で、幾分表情は豊かとなったがそれでもオレには分からない。腹黒や、タヌキと言われるのはこの事でだろうと思う。


 オレ達は竹中さん慶次さんにお願いし、岐阜の家にドアを設置してもらう事を言って現代に帰った。慶次さんに関しては・・・


 「卑怯だ!俺達だけ歩かせるつもりか!?」


 「いや山先買いに行こうと思ってたんだけどいいんですか?別にオレはいいんですけど?」


 「うむ。武蔵も道中気を付けてくれ。俺達も速攻で岐阜に戻る。なっ!?竹中殿!?」


 「ほほほ。そうですね。半日で戻りましょうか。竹中の神速をとくとご覧にいれましょう」


 勝ったな。行軍しろと言われればするけど筋肉痛になるからごめんだ。





 〜家康私室〜


 「集まったか。織田は帰るらしい」


 「そのようで。実に素晴らしい働きをしてくれました」


 「確かにこれで織田殿を遮る敵は居なくなった」


 「殿!まだ上杉が居ます!」


 「越後の軍神は義に反する事はせぬ。あの合田と申す者・・・ワシは古くから織田家のことを知っているが急に台頭してきた者だな?忠次!なんぞ分かったか?」


 「いや申し訳ない。まだなんとも・・・」


 「う〜む。忠勝!お前は合田殿と馬が合っていたようだが?」


 「はっ!中々に面白い奴でした」


 「あの者が我が手中に入れば面白いと思わぬか?」


 「まさか!?織田殿から引き抜くと!?些か無謀ではございませぬか!?」


 「腹の内は見せていない。まずは友のような感じに付き合っていく。あの者がこれからどのような働きをするかは分からぬ。だがいずれはその手腕を徳川のために使ってもらう。ワシは欲しいと思ったものは年月掛かってでも手に入れる。どんな手を使ってもだ」


 「分かりました。では・・・正月の贈り物としてなにか渡しましょうか」


 「うむ。康政の提案に乗る。頼まれてくれるか?」


 「はっ!何を送りましょう?戦の後ゆえに豪華な物は中々ですが・・・」


 「そうだな。変わった御仁だからな・・・三河を知ってもらうために三河の物を贈りたい」


 「分かりました。ではあれなんかいかがですか?」


 「ーーうむ!それが良い!すぐに手配せよ!」

 

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