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ドア開けたら戦国時代!?  作者: デンデンムシMK-2
第一章
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爺ちゃんの悪戯

 「あやめさん・・・ごめん。池田さんにバレちゃった」


 「構いません。誰がどうなろうが私は武蔵様と居られるならば何も求めません」


 「そっか。いつもいつもありがとうね?それで、母ちゃんとどこに行ってたの?」


 「(クスッ!)色々行きましたよ!イ○ンにクレープ屋に・・・あっ!お蕎麦も食べました!美味しかったですよ!」


 「そ、そっか。それは良かった」


 「はい!これが肌着で、これがパンツでーー」


 あやめさんの適応力は凄い。ついこの間まで現代は怖いと言っていたのに、今や現代人となんら変わらないと思う。


 




 この入院2日間はゆっくりとしていた。そりゃ入院だから遊びに行ったりなんてできない。ただ、あやめさんと他愛のない事を話して過ごした。こんなに話してもまだまだ飽き足らず、話題は絶えない。


 「ってか、信玄を討ち取ってその後、浜松がどうなったか聞いてないけど大丈夫かな?多分、勝頼が武田当主だろうけど引き下がってくれたかな?」


 「どうでしょうか。さすがにもう一回打って出る事は徳川様もしないとは思いますが・・・通例なら総大将が討たれると軍は引き上げます。敵が少数にまで減ってるならば玉砕することもございますが・・・」


 「う〜ん。敵はむしろまだまだ多いよね。それにあの1人逃げた佐久間さんはどこ行ったんだよ。あの人のせいで大変だったのにな」


 「じゃあ、佐久間信盛のせいで囲まれたって事なの?」


 「そうなんですよ。三方ヶ原の戦いって平手汎秀が討たれるのがオレ達の歴史ですが、ちゃんと生きていますよ。中々面白い人で死なないようにしました!」


 「そうなんだ?へぇ〜。あっ、快気祝いにはまだだけどお蕎麦食べてから合田君の家に行かない?あそこのお蕎麦美味しいんだよ!合田君行った事ある?」



 今オレ達は池田マダムの車に居る。母ちゃんが迎えに来る予定だったがオレが断ったのだ。なんせ、退院の日に早朝面会時間から池田マダムが迎えに来たからだ。


 どうしてもその例のドアを見てみたいらしく、みんなのABCも年末休みに入ったし、アトリエも休みに入ったみたいで暇してるらしい。


 今日は12月28日だ。年末は現代でゆっくりしたいけど、さすがに戦国に行かないといけないだろうな。佐久間さんも探さないといけないし。


 「あっ!ここ!一昨日、武蔵様のお母様と行きました!」


 「え!?そっか・・・なら違うところにしよっか」


 「いえ!池田様!ここで構いません!ここのトロロ蕎麦なる物が非常に美味でして、また食べたいと思っていました!」


 「さすが、あやめちゃん!分かってるわね!ここはトロロ蕎麦が美味しいのよ!」


 そんなこんなで、3人で蕎麦を食べて家に戻った。池田マダムと話して分かった事。この人は非常に明るくて性格の良い人だ。戦国の池田さんとは大違いだ。どこでどういう血が入ってこんな優しい人になったのか少し気になる。


 そしてこの池田マダム・・・歴史オタクだ。かなりコアな事まで話す話す。そして、厨二心が宿ってるかの如く・・・


 「鉄砲は現代に続くまで兵の武器だけど、やはりカエシをつけた矢なんかを作るのも捨て難いわよ?抜こうとすれば更に致命傷になるしね?ボウガンがあるのよね?あれは軽いしいいかもしれないけど、規格を統一して戦国でボウガンを作り、部隊運用すればかなり強くなるわよ?」


 「え、えぇ」


 「他にも、出生率を上げ乳児の死亡率を下げるために綿花を育て布団や衣服なんかも作ればお金も入るし国力が上がるわね!人が増えればそれだけ税収が上がる!検地も規格統一して、石高も統一して計算すれば不正も少なくなるしね!」


 なんなんだ!?オレなんかよりやる気に満ち溢れているんだが!?


 色々話しているとすぐに家に到着だ。


 「爺ちゃん!婆ちゃんただいま〜!!!」


 「え!?お爺さん、お婆さんが居たの!?手土産とかなにも持って来てないんだけど!?」


 「え!?いやいや、死んでるんですよ。ただ、いつもの癖でこんな風に言ってるだけです!」


 「そっか。お邪魔するんだし、お線香だけでもさせてもらいたいんだけど?うん?これはなに?」


 「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!なんでここにこれがあるんだよ!!!誰だ!?誰が出したんだよ!?池田さん!見ないで!!」


 「ふふふ。合田君も男の子なのね。けど、分からない所に隠しておくのが礼儀よ?」


 家に入ると廊下のど真ん中に例のヌキヌキ本が鎮座してあった。オレには分かる。クソジジイのせいだ。写真の中の爺ちゃんが、これ見よがしに笑ってるように思う。いや・・・オレには見える。


 「武蔵!おかえり〜!」「合田君!退院おめでとう!」


 「里志君!有沙さん!ただいま!それと伝える事があるんだ」




 「そっか・・・。池田さんに教えたのか」


 「ごめんなさいね?なんとなくみんなを見てると不思議に思って・・・。けど、安心して!絶対に誰にも言わないし!もし言っても誰も信じないでしょ!?」


 「その前に・・・実は俺の方も言う事があるんだ。武蔵は疑問に思うだろう?俺と有沙が浜松に現れた事」


 「うん。気になるよ」


 「実は・・・・」




 「えぇ〜!?!?!?安倍晴明に会ったの!?しかも爺ちゃんにも婆ちゃんにも!?」


 「あぁ。婆ちゃんは話してないけど、爺ちゃんは武蔵と違って豪快な人だった。爺ちゃんはかなり武蔵の事心配していたぞ?本当は武蔵は三方ヶ原で死ぬ運命だったらしい。安倍晴明と爺ちゃんが助けろって言ってな?それで、陰陽の力?術?で縛りのないドアができたんだ。詳しくは有沙の家にあるお札やなんかも関係あるが、分かりやすく端折った」


 「ちょっと!ちょっと!なら私も戦国へ行けるの!?」


 「はい。多分行けます。ただ、安倍晴明様はこうも言いました。あまり人を連れて行きすぎると入り口が閉じると。安倍晴明様も安倍晴明様ですよ。俺と有沙達を信じると言っても、捻り合う世界にならないための保険みたいに危なくなれば自動的に入口が閉じる仕組みにするとはね」


 「お邪魔するよ〜?おや?みんなお揃・・・・何で池田さんが!?」


 「あっ!田中君!こんにちわ!聞いたのよ!私も!」


 「な、な、な、何をででですか!?まさか、武蔵君!?み、み、みどりさんとのて、手紙を!?」


 「何をそんなに焦っているの?」


 みっともない。人様の手紙の事なんて言うわけないじゃん!


 「田中さんその件は大丈夫です。ただ、まだ行き先は浜松なので行けないかと・・・」


 「い、いやそれならいいんだ。退院の日と聞いていたから、快気祝いではないけど実家の例のお肉のやつを持って来たんだよ」


 「こんなにいいのですか!?」


 「いいよいいよ。お母さんやみんなで食べてよ。なんならお出かけに持ってってもいいからさ?それでね?例の人にも渡しておいてほしいんだ」


 あ、はい。みどりさんに渡してほしいって事ね。タッパーの下に分厚い封筒が入ってる。しかも、2日間出向いてないから手紙が溜まってるって事か!?いつもより分厚いぞ!?まぁ、ちょうど飛脚の伝次郎さんが明日くらいに来るはずだ。


 「あぁ〜!田中君まさか戦国に彼女でも見つけたんだ!?」


 「い、い、池田さん!?ななななんでそれを!?いやそんな事よりなんで戦国なんて言うんですか!?」


 いや、田中さんは思春期のガキかよ!?


 それから田中さんにも事情を話した。驚いてはいたが、池田さんは性格が優しいため、協力すると言うと、田中さんはお礼を言っていた。


 池田マダムは元々、家系もそうだが歴史探究家と他人に言われるくらい歴史好きな人らしい。自分の目で見られる歴史が嬉しいと。


 こことは違う歴史だから発表なんてできないけど、新しい楽しい事が増えたと喜んでいる。だが、いきなり戦国に行き浜松城へ呼ぶのはまずい。


 「ですので、徳川家には未来から来たとは言っていないのでまずは向こうのドアを岐阜のオレの家に持っていきますのでそれからでいいですか?飛脚の伝次郎さんって方に任せるので。それに岐阜にはあやめさんの妹のいろはちゃんが居るので設置してくれますし」


 「そうね。じゃあそこは任せるわよ」


 「あっ!ってか、里志君達が通れる新しいドアってどこにあるの!?」


 「うん?ラボに宅急便で送って来て設置してあるぞ?やはり秘密は一つに纏めておいた方がいいと思うから誰でも通れるドアはラボに設置しておこうって有沙と決めたんだ」


 「そっか。うん。じゃあとりあえずオレ達は戦国に行こうか。池田さん?田中さんはどうします?多分戦の後だから論功行賞があると思うので遅くなるかもしれませんが・・・」


 「そのドアってどのくらい掛かりそう?年内には行けそう?」


 「多分、伝次郎さんは脚が速いから明日に来るから・・・明後日には行けると思います!12月30日です!」


 「分かった!ならまたその日に来るから!何か手土産とか持っていったほうがいいわよね!?何がいいかしら!?」


 「信長さんと謁見するなら甘い物ならなんでも喜ぶと思いますよ。池田恒興さんに会うなら地ビールとかいいんじゃないすかね?」


 「分かった!じゃあまた明後日にね?」


 「はい。池田さん!お蕎麦ご馳走様でした!ありがとうございました!」


 田中さんも明後日に来ると言って、同じように帰って行った。田中さんが戦国で骨を埋めるかどうかは分からない。里志君のドアが現れたからだ。これはまた今度2人の時に聞いてみよう。さぁ、とにかく行こう。


 オレ、あやめさん、里志君、有沙さんとでラボのドアを潜る。すると行き先は変わらず浜松城のオレに充てがわれた部屋だ。だが、慶次さんの怒号が聞こえた。


 「騒ぐなと言っているだろうが!!武蔵なら寝ている!ヤブに見せるなんて事はしねぇ〜!下がれ!」


 「そうはいかん!徳川の恩人に死なれれば困る!三河一の名医に来てもらっている!一度でいいから会わさせてくれ!」


 慶次さんは言いつけを守ってくれてるんだな。後で山先とお礼をちゃんとしておこう。


 「ゴホンッ オレなら大丈夫ですよ」


 「「「「!?!?!?!?!?」」」」


 「武蔵ッ!!!!」


 必死で慶次さんが演技までして騙してたんだ。オレも乗らないといけないな。


 「慶次さんありがとう。徳川さん達の声で目が覚めた。せっかく夢見心地の良い気分だったのにね」


 「あ、いや、それは相すまぬ。合田殿の身になにかあるといけないと思ってだな・・・」


 「もう、大丈夫です。とりあえず状況はどうなっていますか?」


 「とりあえず、広間へ来てくだされ」

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