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ドア開けたら戦国時代!?  作者: デンデンムシMK-2
第一章
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徳川家の忠節 三方ヶ原への魁

 〜12月22日 二俣城〜



 「お館様!軍の再編は済みました!いつでも進軍可能です!」


 「ただ頼め、頼む八幡の神風に浜松が枝は倒れざらめや。勝頼!全軍で天竜川を渡れ。これより進軍を開始致す」


 「全軍ですか?予備隊も後詰めもですか?」


 「ゴホッ ゴホッ 聞こえぬのか?全軍だ。徳川の坊ちゃんに殺られる程、柔な武田軍ではない」


 「目標は浜松城でよろしいですか?」


 「まずは秋葉街道を南下・・・その後、本坂道にて西に軍を進める。三方ヶ原、北辺に行くと都田山がある。そこに陣を敷け。これ以上つまらん戦で兵を減らしたくない。城攻めとなるとーーゴホッゴホッ・・ペッ」


 「父上ッ!!!?大丈夫ですか!?まさか・・・」


 「やっと気づきおったか。内腑をやられておる。かれこれ半年程前からだ。時間が残されておらぬ。ワシが動ける間に狩れるだけ狩っておく。必ず徳川だけは潰しておかねばならぬ。それと・・・織田軍の合田何某というハナタレをだ!その後はお前が武田を率いるのだ」


 「そ、そ、そんな・・・なりませぬ!お屋形様・・・いえ、父上!!」


 「騒ぐな!国衆に気取られる。当主というものは弱さを見せるものではない。弱さを見せると、たちまち裏切りが起こる。武田は強くなくてはならぬ」


 「父上・・・」


 「行け!まだ大丈夫だ。徳川の坊ちゃんを城から引き摺り出す。餌はワシだ!」




 12月も半ばを過ぎた頃、未来ではクリスマスモード&年末商戦に向けて忙しい。


 その忙しい中オレは毎日平日は夜に戦国時代へ向かっている。そして、一言坂のような事があるといけないため、夜にだが一層剣術を慶次さんから習っている。


 相手はあやめさんにしてもらっているが、木剣ですらまだ一本も取れた事がない。この強い女性がオレの彼女、未来の嫁さんのあやめさんだ。


 左手薬指にキラッとひかる指輪・・・ちなみに25日には本物の指輪を渡そうと思っている。というか、既に街の百貨店に入っている、とあるところで購入したのだ。


 価格は15万。安いわけではないがぶったまげる程高いって事もない。一応、プラチナだ。


 これでクリスマスは浜松城でゆっくり・・・というわけにはいかなかった。


 12月23日にその報告が聞かされた。


 「我が君!御報告でございます!武田軍が迫って来ております」


 「やっと・・・やっとか・・・小川さん!ドローンはもういいです!回収して大事な物入れる木箱に入れておいてください!」


 「クァ〜。さて・・・いっちょ殺ってやろうか。待ちくたびれたぜ」


 そう言うのは慶次さんだ。この人は緊張感がまったくないのかと問いたい。


 小川さんの報告の後、すぐに徳川軍の物見の人が慌ててやってきた。そしてその報は同じだった。


 大広間に主要な人達が呼び出された。もちろんオレもだ。ちなみにだが、これまた仕組まれたかの如く、土曜日の出来事だった。


 「各々方、各自奮戦してくれ。浜松を落とすべからず!最後の一兵になろうとも抗ってみせようぞ!」


 家康さんが士気を上げるため訓示を言っているところを更に報告が入る。


 「御報告ッ!!!武田軍の突如西進!浜松には向かって来ておりません!」


 「なんだと!?」


 「クッ・・・これほど好き勝手しておいて、敵は徳川ではなく織田だと!?」


 「で、ですが最後尾に武田菱の旗印が見えまする・・・」


 オレはこの報告も分かっていた。信玄を囮にし、城からオレ達を出す作戦だ。概ね史実通りではあるが、オレはこの次の対策をしていない。いや、していないというよりできなかった。


 何度も何度もオレは上奏した。竹中さんを通して上奏した事もあった。だが、その度にファッキンサノバ佐久間が握り潰したのだ。


 「勝手な事言うな!」 「予言の類はお館様(織田)は嫌っている!」 「ここ浜松城で耐えておけばよいのだ!」


 と、言って話を上げてくれなかったのだ。オレも大概この佐久間にイライラして、どうせ史実でタイムリミットが来て信玄は死ぬんだからもういい!と思い、言う事をやめたのだ。


 本来なら先回りして三方ヶ原に部隊を挟ませ、残ってるテルミット、ありったけの鉄砲を撃ちつけ、浜松城からも兵を出し、挟み撃ちにすればいいと思っていたのだけど。


 「ぐぬぬぬ・・・・」


 珍しくポーカーフェイスの家康さんが怒り顔だ。


 「殿!ここは堪えてください!我らを野戦に持ち込ませるための罠です!」


 そう助言するのはベテラン四天王の酒井忠次さんだ。


 「そうですぞ。徳川殿、ここはどうか堪えるように。我が殿も浜松で敵を迎え撃てと言っておられる」


 ここでもまた佐久間さんだ。だが・・・


 「んな事分かっておる!だが!だが!ここは我ら徳川の地だ!いくら同盟者といえ、全て織田軍の言いなりでどうする!」


 「お、おい!中根・・・」


 「控えよ!その口の聞き方はなんだ!貴様はノコノコ城を落とされた情けない城主であろうが!」


 本当にファッキンサノバ佐久間だわ。


 オレ達は黙ってこの事を見ていたが、中根さんはそんな佐久間さんを無視。そして二俣城の元の城主、中根正照はとんでもないことを言い出した。


 「殿ッ!御恩を返す時が参りました!某、徳川軍の魁とならん!一兵でも多く武田軍を討ち取ってみせまする!二俣城を明け渡し後、某はすぐに切腹をするべきでした。ここで敗戦の将の汚名をそそぎたく」


 「中根ッ!!!」


 「御免ッ!!」


 オレは唖然としていた。まず、この忠節が凄い事。そして敵の数は万を超えていると報告があがっている中の進軍だ。


 だが、そんな絶望の中でも中根さんは希望に満ちた顔だった。


 「殿!中根殿だけを向かわせるわけには参りません!某もそろそろお暇を。後の事はよろしく御頼み申し上げます。御免!」


 「某もこのまま黙っているわけにはいけませんな。御免」


 「三河一揆の折は大変申し訳ありませんでした。その時、御赦しにしていただいたこの命・・・使い果たす時が来ました。もし生まれ変わりがあるのだとしても、もう一度、殿にお仕えとうございまする。失礼をば」


 大広間に集まった徳川家の約半数の人が飛び出していった。みんなが飛び出し、浜松城の門を潜るところを城から見下ろすように無言で見ていた。確実に死地に向かうような事だろう。だが、中根さん筆頭に皆が皆、良い顔をしている。


 「徳川軍魁じゃ!!者共ッ!急げや!急げ!」


 現代ではこんな事絶対にないだろう。だがもしオレがこの時代に生まれ、この周辺で生まれ育ったならば同じ行動をしたかもしれない。


 そして残された少なくなった徳川軍と織田軍・・・。家康さんは少し震えている。


 「我慢ならぬ!!ワシは辛抱強い方じゃと自負しておったがもう無理じゃ!出るぞ!夏目!留守居を任せる!夏目の隊2000は城を守れ!残りは着いてこい!」


 「と、徳川殿!?話が違うではないか!?」


 「織田軍 佐久間殿・・・ワシに過ぎたるものはいっぱいある。その1番が家臣じゃ。その家臣が命を持って武田を迎え撃とうとしている。ワシは皆から誇られる主でありたい。それが今回で最後になろうとも。織田軍はここに居てもよい。徳川軍だけででもどうにかする」


 初めて家康さんの心が分かった気がした。初めて本物の感情が見えた気がした。


 「チッ。タヌキめが!おい!平手!合田!水野!このまま浜松に閉じ籠もっていては後でお館様に叱責される。我等も着いて行くぞ」


 これに関しては予想外だ。史実では確かに佐久間も出ては行ってただろう。そして平手さんがやられてこの人は逃げる。まさか本当に出撃するとは思わなかった。だが、その理由が信長さんに怒られるからか・・・。この人はだめだ。


 「合田殿!やっとですな!南蛮武器で俺の後方を任せますよ!」


 「え!?南蛮武器すか!?いやいや平手様は武勇がお有りでしょう!?」


 「ははは。面白い事を言うお方だ。ヘェー ヘェー」


 「あれ?平手様は具合悪いのですか?」


 「あ、いやこれは小さき時より寒くなり始めた頃に息が苦しくなる病でしてね。お気になさらず。それより歳も近いでしょう?中々一緒になる事叶わず挨拶も遅れて申し訳ない。俺の事は汎秀と呼んでくだされ」


 喘息みたいに見えるな。夜にでも吸入器でも渡してあげようかな。


 「え!?諱ですよね!?」


 「ははは!本当に面白いお方だ!みんな合田殿の事も諱で呼んでいるでしょう?なのに合田殿は礼儀を尽くす方だ!初めてまともに話すが俺は合田殿を友と思っている!」


 オレは知っている。このオレとあまり歳の変わらない平手汎秀さんが三方ヶ原で死んでしまうことを・・・。調子の良い子に見えるが、ただなんとなく・・・里志君に似てる風がある。


 オレはあやめさんと慶次さんに耳打ちした。


 "平手さんは死なせませんよ。慶次さん?頼みますね"


 "ほう?武蔵の未来では堅物はここで死ぬのか?"


 "えぇ。間違いなく。歴史変えますよ"


 "了解。山先2本で手を打とう"


 あやめさんは無言で頷いてくれた。慶次さんは相変わらずだ。


 ポケットに入れている指輪が渡せるクリスマスを迎えたかった。日付が変わる前に終わればいいのにと思うけど・・・無理だろうな。まぁこれはまた今度だ。


 佐久間隊が出撃した後、オレと平手さん水野さんが続く。


 だがここでオレは重大な事を忘れていた。これがこの後少し後に命の危機に陥る事を・・・。

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