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ドア開けたら戦国時代!?  作者: デンデンムシMK-2
第一章
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奴は四天王最弱・・・

 オレが馬場信春を討ち取った事で戦が終わるわけではない。馬場信春とは武田四天王の1人と後世で言われてはいるが・・・・


 『クックックッ・・・奴は四天王最弱・・・』


 と、どこぞから声が聞こえる・・・わけなんてない。最弱どころか最強に近いんじゃないかなと思う。なんせ鉄砲と相対し、竹筒で前進してくる阿保だったからだ。


 まぁ、オレが言いたい事は武田軍にはまだまだ武将が残ってるという事だ。


 例の戦勝会が終わり、暫くは膠着するかと思いきや、次の日の日曜日にさっそく、犬居城、只来城、真田山城、飯田城と同時攻撃を受けていると伝令が入った。


 オレは連日の攻撃かと辟易として、あやめさんが綺麗に拭いてくれ、なにで色付けしたか分からないオレの甲冑を着ようとしたが、今回は援軍を出さないとの方針だ。


 「殿ッ!!!このままではお味方を見捨てになります!是非に後詰めを!!」


 「ならぬ。城の者達には危なくなれば退けと伝えてある。決戦はこの浜松城だ。城が取られるのは良い。だが人が居なくなれば徳川は終わりだ」


 「ですが!!それこそでございます!このままでは人が居なくなります!」


 「何度も言わせるな!ワシでも分かっておる!皆がワシを信じて居るならば城を枕に討死する事はない!ワシは何度も書状を送っておる!退く事こそ肝要とな」


 「徳川殿、心苦しいかと思うが堪えてくだされ。この佐久間、次こそ徳川殿を力尽くで止めなければなりませぬ。お館様にキツく言われておりますゆえ」


 「うむ。先の戦の事ならばこちらの勝ちと言えるだろうが、あんな事はそうそう起こらぬ。ここは耐えてみせまする」


 と、みんながみんな・・・いや失礼。佐久間さん以外は出陣したいと思っているようだが、このように今は耐える方針となった。


 オレはというと・・・


 「ケッ!こんな時でも未来で仕事かよ!?へい!へい!それなら俺も暫く浜松で休むとするか。また5日後か?」


 「しょうがないでしょ!?やっと見つけた仕事なんですよ!?それにそれなりに期待されてるんですよ!?」


 「ほほほ。その未来の仕事とやらが何か気になりますね」


 「なっ!?いつのまに!?」


 「ほほほ。あなたが合田殿の護衛だけではなく、合田殿の部屋に近付けられないように見張っている事くらいすぐに分かりましたよ?それに・・・側女の・・・いや、これは失礼。奥方でしたかな?あやめ嬢?その物騒な短刀を仕舞いなさい」


 「慶次さん、あやめさん、竹中様は大丈夫。多分この人に隠し事はできないと思う」


 このように、気配を消した竹中さんにとうとうバレてしまったわけだ。まぁ未来から来ているという事は織田軍はかなりの人が知っているはずだ。


 ただ、みんなが確信を持てていないとは思うが。オレが昼間に居ないのは信長さんからの秘密任務という程にしているのだ。


 まぁ普通は怪しむよな。だが、この時代の人は奇妙な事や、未来道具・・・例えば拡声器やライターなんかだ。これらを見せると高確率で『もののけか!?』や『南蛮の妖術か!?』と言ってくるのだ。


 それをオレが『マウンテンフジの山頂で会得した技』と言えば何故かみんな信じるのだ。しかも、マウンテンフジがどこにあるか?とかすら聞かれない。


 まぁ、それも織田軍に関しては信長さんが『武蔵の秘密を探る者は御公儀の秘密だ』と言っているからだ。


 まぁオレからすればその御公儀とは誰だよ!?と思うけど。


 そんなこんなで、1週間、2週間と過ぎた。


 現代の方は相変わらず、田植えの事、稲の事、水の張りなど色々オレも農業体験に来ている若い夫婦の人達に混じって、人間国宝さんから学んでいる。


 そして、この人間国宝さんが説明してくれている時、たまに話が逸れるのだが、その逸れた話で分かった事がある。


 『現在の日本の約3割のお米を占めているお米はコシヒカリ。若人夫婦、合田が植えた稲もコシヒカリだ。これを作った方は石墨慶一郎博士という方だ!覚えておくように!』


 オレはただなんとなく米を食べていただけだが、その米の品種の一つコシヒカリが石墨慶一郎博士という人が作ったという事を知らなかった。まぁそれがどうした?という事にはなるが、こんな仕事をしなければ気にもとめなかった事だ。


 そして、来年オレは戦国にこの石墨慶一郎氏が血と涙と情熱を注いで開発したコシヒカリの苗を持って行き、戦国に黄金色に輝く稲穂を実らせようと思っている。


 まぁ管轄は羽柴さんになるだろうと思うけど。だが、植え方や水の管理などは現代と同じように教えるつもりだ。だからオレも真面目に学んでいる。


 そして、池田マダムからは相変わらずあやめさんの事を聞かれる。


 『進展はあった?』『結婚はいつ?』『式はあげるの?』とかだ。


 オレはまだ少し早いですと伝えてはいるが・・・どうやら池田マダムにはかなりの好印象だったらしく、今度3人でお茶しようという話になった。


 断る理由はないため社交辞令の返事だけはしている。


 次は田中さんだ。田中さんは本当にみどりさんとくっつくみたいで色々準備してるとの事だ。


 まだ仕事を辞める話なんかはしていないみたいだが、この1年で腹を括ると・・・。


 「田中さんの人生なのでオレはとやかく言いませんが、まぁ頑張ってください」


 「そうだね。もう人生の半分は終わってるからね。僕はみどりさんと出会うために生まれてきたのかもしれないと・・・すら思うんだよ」


 「そ、そうっすか・・・まぁなにかあったら言ってください!」


 「ははは。それより12ゲージの弾使い切ったらしいね?そんなに激戦だったの?僕は戦はできないけど僕の方も力になるよ?」


 「それはもう・・・戦はしたくないので早くに信長さんに天下取ってもらうのが早いかと。その方が田中さんも安定して生活できますからね」


 「そうか。まぁ暫くは通い旦那ではないけど、三方ヶ原の戦いが終われば休みの日にドアを使わせてもらうからね。次の休みに弾は購入しておいてあげるよ」


 「みどりさんに会いたいと思いますがすいません。早く向こうのドアを岐阜に持って帰りたいのですが・・・」


 「いいよいいよ。とにかく死なないようにだけ気をつけるんだよ?さぁ!仕事に戻ろう!」


 やはり田中さんは田中さんで青春をしてるみたいだ。まぁ3日に1回手紙を書いているらしく、オレが間に立って受け渡しをしているのだ。まぁ飛脚の伝次郎さんにお願いしているんだけど。


 例の商いで悶着を解決してくれてから凄く仲良くやったのだ。岐阜から浜松の軍以外の届け物はこの伝次郎さんにお願いしているのだ。一往復、缶詰10個でいいと言ってくれたため、オレはいつも15個渡している。


 いろはちゃんに商い用の缶詰や歯ブラシ、石鹸を渡してもらうために、わざわざ家康さんにお願いして登城を許してもらっている1人だ。だが、そろそろお休みしてもらわないと、本格的な戦が始まるからな。


 そして、10月も終わりに近付いて来ている、10月最後の水曜日・・・10月27日水曜日の夜・・・


 「伝次郎さん?いつもすいません。これまたダンボールに入れてあるので、いろはちゃんにお願い致します。後、例の手紙です。これはみどりさんって人にお願い致します」


 「あいよ!」


 「それと、これを最後に暫く東には来ないようにお願いします!そろそろ武田軍の動きが気になるのでここらへんも危なくなるかと・・・」


 「なんでぃ!んな事で仕事をなくすわけにはいかねぇ〜!約束通り3日に1回は来るからあんちゃんは気にするな!」


 「いや、さすがに本当に死ぬかもしれないんすよ!?」


 「それこそだ!そこらへんで野垂れ死ぬ事はない!俺は美濃飛脚の伝次郎でぃ!必ず客の荷物は届ける!荷物を届けるまで死にはしねぇ〜!」


 たかが飛脚と思っていたが、確かにこの時代の飛脚の人は頭ぶっ飛んでる人が居るのも事実だ。なんせ東西南北どこへでも金次第で荷物を運ぶんだからな。筋肉隆々、足腰もヤバイ人達だからな。


 そこらへんの兵士より強いんじゃないかとすら思う。


 「とにかく、次は7日後の夜でいいので!」


 「あいよ!あんちゃんも頑張りな!じゃあこれは届けておくからな!」


 颯爽と夜道を戻って行く伝次郎さんを見てオレもこれから起こるであろう戦を頑張ろうと思う。

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