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ドア開けたら戦国時代!?  作者: デンデンムシMK-2
第一章
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突然の出陣

 更に状況は悪くなる。


 長篠城を手中に収めた山県昌景・・・。リアルタイムではなく、とある人が這々の体で浜松に来てその事が分かった。


 オレは里志君や有沙さんとのお勉強にてこの話を先日聞いたばかりだ。だが、見るに堪えない。


 必死で走って来たのだろうと思うこの人・・・鈴木重好さん・・・齢は現代の高校生くらいか。元々柿本城の若き城主らしい。泣きながらオレ達が居る大広間にて家康さんに土下座している。


 「申し訳ございません!柿本城・・・小屋山城を落とされてしまいました・・・本当は某も敵に一矢報いて果てるつもりでしたが、殿に状況を伝えないと・・・このままならば三河と浜松を繋げる本坂道が危のうございます」


 「分かった。鈴木・・・よう戻ってくれた」


 「いえ・・・近藤殿と叔父上が・・・今すぐ腹を斬れと御命令ください!某は城を捨ててしまった敗戦の将です・・・」


 「いや、命あってこそだ。またワシを支えてはくれぬか?城は奪い返せばよい。だがお主を亡くせば二度と戻ってはこぬ」


 オレはこの家康さんの言葉に信長さんとは違う大きさを感じてしまう。


 現代の感覚からすれば城を取られて切腹なんて意味が分からない。だが、ここは戦国。敗戦の将と言えば恥と言われる時代だ。それを家康さんはあまり表情を崩す事はないが暖かく迎えいれている。


 天下人とはこういうものなのかと思う。もしこれが家康さんの演技だとすればそれはそれで凄いと思う。信長さんにも羽柴さんに真似できない事だろうと思う。


 それからどんどん聞かされる山県昌景の活躍。


 オレ達が通った本坂道が本当に取られてしまう恐れがある。まぁオレは例のドアで帰れるがここを取られると今持って来てる米や野菜類が無くなると補給ができなくなるおそれがある。


 その事を警戒した家康さん。松平清善さんって人を浜名湖西にある宇津山城に最悪、連絡船だけでもと派遣した。


 

 さすがに織田家宿老の佐久間さんの命令を破る事はできない竹中さんとオレ達。当初の目標は高天神にも行き、多少武田軍を減らすと意気込んでいたが、とてもそんな雰囲気ではなくなった。


 竹中さんも色々思案しているようで、とにかく今はオレに対しても『大人しく機を待ちましょう』と言って1人になる事が多い。


 慶次さんは慶次さんで何を考えているのか分からないが、それでも平日夜、週末なんかは常にあやめさんと一緒にオレの横からは離れない。徳川家の誰か分からない人から声を掛けられようと必ず一歩前に出て一度は遮るようにしてくれている。


 そんな中、10月の第3週の週末、21日だ。


 とある人が来てから家康さんから内々に伝えられた。


 「高天神が落ちそうじゃ」


 と・・・・。


 事ここに至ってオレ達が高天神に向かったところで間に合わないとオレでも分かった。


 有沙さんが頑張って作った爆弾・・・どのように使われたかは分からないがそれでも止まらない武田軍・・・


 そして10月最後の週の水曜日に伝令の人が来て伝えた事がオレはどれ程やばい事なのか分からず聞いていた。


 徳川家の人達の顔を見てそれがかなりヤバい事だ。という事だけは分かった。


 「高天神城と掛川城の間の小笠山砦を取られた模様です。掛川城と久野城を抑える程度の兵を残し、武田本隊は更に進軍・・・見付に陣を・・・そして挟む様な形で久野城にーー」


 伝令役の人が最後まで言い切る前に家康さんは拳を床に振り抜いた。


 「これ以上城を取られるわけにはいかん!味方を捨て石かのように見過ごせん!」


 「殿ッ!!出陣でしょうか!?」


 「信成ッ!先行して武田軍を探れ!忠勝ッ!お主は見付の原まで歩を進めよ!」


 「「はっ!!」」


 「徳川殿?お館様はここ浜松城で耐えよと言われているのをお忘れか?」


 「佐久間殿!ここは徳川家の城。徳川家の領土じゃ!これ以上味方を見過ごせん!」


 「我等は動きませんぞ?」


 「構わん!徳川軍だけで動く!佐久間殿、織田軍は浜松の防衛をば!皆の者!出陣じゃ!」


 あのポーカーフェイスの家康さんが珍しく怒気を上げた。


 徳川家の人達が退出して残された織田家のオレ達。佐久間さんが溜め息を吐いた。


 「徳川軍だけで何ができる!兵を減らすだけと分からぬのか!ったく!」


 佐久間さんがそう言うと、平手さんは苦そうな顔をした。そして竹中さんは・・・


 「ほほほ。では我等は徳川殿の後詰めといきましょうか」


 「おい!竹中!勝手な行動は許さんぞ!」


 「ほほほ。佐久間殿、これを見てください。お館様からの書状ですぞ」


 なんぞあれ!?初めて見たぞ!?


 「グッ・・・特別遊撃隊じゃと!?そんなの聞いた事がない!」


 「そりゃもちろん、お館様も初めて出した部隊ですからね?どうせ我等は100も満たない部隊ですから戦局に障りはないでしょう?では、我等も動きますね」


 なにが何やら分かっていない。だから唖然としていたら慶次さんに、竹中さんに声を掛けられた。


 「おい!大将!出番だぞ!やっとオレ達の出陣だ!」


 「は!?え!?」


 「ほほほ。手柄を立てるところですよ?さぁ行きますよ」


 この戦が後世の史実に残る一言坂の戦いだとまだ気付いていない。

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