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ドア開けたら戦国時代!?  作者: デンデンムシMK-2
第一章
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拗らせた武蔵。

 池田さんの部屋は物静かだった。というか誰も居なかった。


 「失礼します・・・って誰も居ないすか!?」


 「この部屋の主は今日は居ない。そして貴様を疑っていたがどうやら壁から現れるとは誠のようだな」


 「あっ、滝川様。どうも」


 「うむ。昨日はすまんかった。新手の人間の素性や素行を調べ上げるのがワシの仕事なのだ。後は皆が嫌がる汚れ仕事とかだな」


 「へぇ〜!裏の人間ですか!カッコイイじゃないすか!」

 

 「馬鹿にしておるのか?」


 「え!?いやいや馬鹿になんかしてないすよ!?純粋に裏稼業みたいな感じでカッコイイなと思っただけすよ!?」


 忍者のようでカッコいいな。確か甲賀出身の人だったよな?


 「ふん。どうだかな。遠乗りに出掛けられた。晩まで戻って来ぬであろう。その担いである物はなんだ?」


 「これはお土産です。ジュースにレトルトですがカレーとふりかけ、チョコバーと・・・あっ!!伊右衛門!!すいません台所に案内していただけませんか!?」


 ペチン


 「図に乗るでない!ワシは貴様の小姓ではない!あやめ!」


 「はっ!」


 え!?あやめってあのあやめさんか!?昨日の身のこなしとは違うんだけど!?しかも見るからに忍者・・・クノイチ!?って感じの服なんだけど!?


 「首尾は?」


 「はっ。線は細いですし、刀を持った事もないようです。前田様と早朝に鍛錬されておりましたが前田様も刀、短刀、槍に首を捻っておられました。弓に関しましては引く事すら叶わず・・・。身長は高いですが甲賀の子供でも一人で相手できるかと」


 あぁ〜・・・だから朝手拭い渡してくれたのか・・・そうだよな・・・何もなくオレに優しくしてくれるわけないもんな。調子に乗ればこれだよ・・・勝手に恋して勝手にオワタ・・・。


 しかも進んで昨日服脱がしてくれたのも調べるためだったのか・・・泣きそうだよ・・・。


 「なんじゃ?気色悪い顔をするでない!何故泣きそうな顔なのだ?」


 「い、いえ。すいません!何でもないっす。身の程を知れって事だと痛感致しました」


 「は?何を言っておるのだ?」


 「いや気にしないでください。むしろ思い出さないでください」


 「ふん。意味の分からん奴だ。あやめ!此奴を台所に連れてってやれ。伊右衛門殿の例のやつであろう」


 「御意」


 「・・・・・」


 「・・・・・」


 お互い無言である。オレは告白したわけではないが気分的にはフラれたような気分だ。


 ただやはり約束は果たそうと思う。たかだか100円ちょっとのチョコレートだけど。受け取ってくれなければ柴田さんに髭触らせてもらう事と交換しよう。


 「あやめさん・・・あの・・・昨日、今日はすいませんでした。これなんだけど・・・一応約束したので甘いお菓子でチョコレートです」


 「いえ。これを貰うわけには参りません。どうか・・・」


 あぁ〜・・・完璧オワタ。


 「そうですか・・・そうすよね」


 「い、いえそんな意味ではございませんので・・・それをいただいてしまえば滝川様に叱られてしまいますので」


 え!?何で!?ってかワンチャンまだある感じか!?もうどうなってもいいや!嫌われても恥ずかしいのはこの世界に居る時だけだし穴に入りたくなるくらい恥ずかしくなれば二度と来なければいいだけだ!


 「とりあえず貰うだけ貰ってください!滝川様には無理矢理渡されたとお伝えください!後・・・ばあちゃんの使い掛けですが指のあかぎれに効く薬です。使ってください。塗り込むだけでいいやつです」


 「そ、そ、そんな悪いです!私如き高価な薬をいただくわけには・・・」


 「いいから!いいから!貰ってください!お願いします!!」


 何故押し付けているのだろうか。女性にプレゼントを渡すのもこんなに難易度が高いものなのか!?素直に『わぁ〜!ありがとう』で終わらないものなのか!?


 「なんじゃ!騒々しい!って・・・武蔵殿か!!持ってきたのか!?うん?其方は確か滝川様の配下の・・・」


 「はい。草のあやめにございます」


 「草か。何か密命なのか?」


 「いえ。合田様を台所にと」


 「そうか。いくら滝川様の配下とて草の者がお館様の相伴衆に口答えはいかんぞ?」


 「すいません。伊右衛門さん?草草って、草ってなんですか?」


 「知らんのか?草とは乱波や透波者の事じゃ。身分が低い者の事を指すのだ。このあやめは草の身分だが滝川様の御配慮と働きに免じてお館様が登城を御許しになられた一人なのじゃ」


 「そうなんですね。ってか別に身分なんて関係なくないすか?それに草って差別のように聞こえるし今後そんな言い方やめてくださいね?」


 「な、なんじゃ!?そう言われてもそれが当たり前だからしょうがないであろう」


 なんか無性に腹が立った。けど元が陰キャだから我を押し通す事は言えない。チキン野郎だ。


 「とにかくオレの前ではやめてください。みんな一緒です!とりあえずこれがラーメンの麺です。専用の小麦なんかもありますが明日以降にしてください!金がないんですよ」


 「そうか!すまんすまん!これはいくらだ?500文で足りるか?持ち合わせがないから家に戻れば払えるが・・・」


 いや文って・・・お金が違うんすけど!?


 「伊右衛門さん・・・気持ちはありがたいのですがオレが居る世界で文と呼ばれるお金はもうないのです。円というお金なのです。だからこれはオレの奢りでかまいません」


 「あのう・・・」


 小声であやめさんが口を開き振り向く。


 「円がいくらか分かりませんし文がないとは聞きましたが私の持っているお金を渡しておきます。甘いお菓子?と薬のお代とは程遠いかとは思いますがこちらに来られている時の足しにお使いくださいまし」


 健気だよ。あぁ〜まさにそう思う。ばあちゃんの中古のアロエ軟膏。表面は乾燥しかけで効果があるか怪しいものにお金を出すなんて・・・。しかもチョコバー、一つしか渡してないのに・・・。


 「草の・・・いやすまん。透波者がよくもまぁそんなに貯め込んでいるな?」


 「里に妹がおりまして。そろそろ里に銭を渡しに行く予定でしたのでたまたま持ち合わせていただけにございます」


 いやいやそんな金貰えるわけないだろ!?妹さんに渡せよ!?なんならオレも何円か知らないけど信長さんから俸給じゃ!と言われ貰って金があるんだよ!持ってても意味ないから渡そうかな!?


 「とりあえずあやめさん?それは要りません。伊右衛門さんも要りませんので後はよろしくお願いします。一度部屋に戻ります」


 「そうか。何か食いたい物あれば言ってくれ!作ってやるからな!」


 「はい。ありがとうございます!失礼します」


 

 部屋に戻ったオレとあやめさん。昨日もらった壺?を初めて開ける。所謂、昔のお金だ。永楽通宝というやつだっけ?社会で習ったけど忘れてしまった・・・。しかも字が擦り減ってるのもあるし。


 「あやめさん?これいるだけ持ってってください」


 「は!?」


 いやいや『は!?』ってなんなんだよ!?ここは喜ぶところじゃねーの!?女は難しい・・・。ばあちゃんに聞いておけばよかった・・・。

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