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見なきゃ良かった…

さて、昼も近くなってようやく亜里が戻ってきたが随分としょんぼりしている。タエがどうしたのかと聞く。


「ヒロくん、最近の”マモノ”事情で今日付けで帰宅命令が出たのに、飛行機の予約が取れなくて…一ケ月も後にならないと戻れないって…。会社の自家用機は今は偉い人がアッチコッチに移動して事態の収拾に努めてるから使えないんですって。それで、会社の方でエアタクシーを取れないか打診中らしいんだけど…」


それなら国内なんだし新幹線で、と思うだろう?

それがこの世界の新幹線は現実世界のファーストクラス並みの料金なんだとさ。飛行機の方が安定・安心の交通手段で、会社や富裕層では 少人数用のエアタクシーや自家用機なんかも普通にあるそうだ。


で、新幹線の方は 事故に遭う等のリスクが高い為に 万が一に備えて装甲車並みの重装備だとか。有事の際には、そのままシェルターに出来る仕様だからって事でお高いらしい。

ちなみに、もちろん普通電車も走っているが早朝6時始発から夕方18時終電までしかない。レベル5が出た地域は翌朝が晴れてなければレベル5が消えるまで運休。新幹線も始発は運休で、これは飛行機も同じ。


…例えば現実世界で東京から北海道へ鈍行で行くとなったら、フェリーも含めて24時間はかかった気がする(違ってたらすまんね!)。昼間だけの移動なら3日はかかるんじゃないかね?リスクもあるし…夜行列車もないこの世界では、とてもじゃないが長距離を乗り継いで何とか…なんて 相当のんびり出来る旅行ならまだしも進んでやりたくはないわなぁ。想像するだけで尻がムズムズするわ。


あたしは亜里を居間に座らせ、お茶を淹れて渡す。

戻りが遅くなったのは電話自体が長かったのと、その話を聞いて動揺がすごかったから落ち着くまで家の掃除をしていたと説明する亜里。


「そりゃあ、残念だね…。じゃあ、旦那は一ケ月の間は向こうで休暇を取るのかい?」


「…ううん…。エアタクシーも無理なら、前日まで普通に働くって…」


「そうかい。ちゃんと仕事出来るなら良いじゃないか。そうか…遅くても、あと一月で戻ってくるのか。少し寂しいが、早く亜里ちゃんの子も見たいしねぇ」


むくれた顔の亜里に、茶目な笑顔で冗談を言ってやる。


「…いや…!もう、タエさんったら!」


思った通りの反応に笑うあたしに、「もう!もう!」と顔を赤くして抗議する亜里。まるで本当の家族みたいだね…と可笑しくなる。

そんなこんなで慌ただしく半日が終わり、夕飯も終えた二人は居間で寛いでいた。と、そこへ…


ウォウウゥーウウゥウウウー


と 大きく耳障りな音が鳴り響いた。


なるほど、これが警報か…。実に癇に障る音で、思わず耳を塞ぎ顔をしかめる。

20時半とレベル5発生地区である事を知らせるサイレンで、これが鳴った後は朝まで何の保証も出来ないから大人しくしとけ!というお知らせな訳だが…。亜里は緊張した面持ちで、ギクシャクと湯呑を片付けに行く。あたしがそのまま座っていると「タエさん…寝ましょ…?」と袖を引いてくるので、苦笑しながら亜里の頭を撫でて答えた。


「先に寝てなさい。すぐに行くから」


「…絶対に、すぐよ?今夜はレベル5なんだもん…怖くて…」


頷くあたしに念を押して寝室に向かう亜里。暫く時間を潰してから、そっと覗くと やはりもう眠っていた。向こうの亜里がどうなのかは分からないが、夢の中の亜里は随分と寝つきが良いようだ…。というか、この世界の仕様なんじゃないかね?住人は21時過ぎから朝まで起きないってのがさ。そうでなけりゃ馬鹿な奴らが外に出たがって惨劇だらけになっているはずだ。


亜里の子供のような寝顔に和んだあたしは、ラジオ体操を始める。それを不思議そうな表情で見ている小鉄に気付く。


「…これから運動するからね。準備運動だよ…」


「はあ?」と言いたげな顔になる小鉄に、何となく気恥ずかしさを覚えて思わず、言い訳してしまう。


「や…いや、だってな、年寄りってのはケガや故障をしやすいんだよ。だから、万全の準備をしておいて損は無いだろ?」


小鉄はピピピッと尻尾の先だけを揺らして「あ、そう…」な雰囲気になる。猫相手に微妙な空気を醸してしまった…と思いつつ コホン、と咳払いをして小鉄に言った。


「さて、小鉄。行くよ!」


「えぇ…?ばぁちゃん、ちょっと、まって。これから…」


ヒョイと持ち上げられて抗議する小鉄。


「あんたは、あたしのマスコットなんだよ!魔法少女には可愛いマスコットがセットになってるもんだろ?」


「ええぇ…」


耳を後ろに伏せて、途轍もなく嫌そうな声を出す小鉄。だが気にしない!


さて。一応 亜里に気付かれないように、辺りに灯りを漏らさないように そーっと外に出てみた。が、次の瞬間には素早く玄関の扉を閉めて 張り付いたような笑みを浮かべると小鉄に聞いた。


「…小鉄や…?あんなオバケと戦う魔法少女って聞いた事無いんだが…」


玄関を開けた目の前に見えた光景は、名状しがたいものだった。                            

それは冒頭で言った通り。ホントになあ、大事な事だからもう一度言うが!

ハッキリと言えるのは、本っ当にとんでもなく気持ち悪い!!という事なんだ!


「小鉄…あたし、もう目が覚めても良いよ…?つまんない日常に戻るだけだしね…?」


あまりな光景を目にした為に、もうおうちに帰る!な状態になっちまったが…小鉄が言うには…


「…むり。ばぁちゃん、ここで”マモノ”とたたかう。ぜんぶ、たおしたら、もどる」


「全部って…あんなにうじゃうじゃいるのをかい?」


「えーと…ぜんぶの、レベル5 たおせば、おわり」


「は…?」


全部のレベル5を倒さないと終われないって、どういう事?

これは夢なんだから…あたしが終わりって言えば終わるんじゃないのか?


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