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カナコと話す

「うん。でもね、ホントは ちがうところにしか いけないはずだったの。でも、ばぁちゃんに えらんでもらうとき、このせかいのカードもでてきた。ごくごく、れあな ぱたーんなの」


…れあなぱたーん…ね。舌っ足らずで可愛いな…。あ、違うだろ、あたし。


「そうなんだね…。どんな基準で選ばれているのかも気になる所だけど…。それに、あんたたちが何者なのかも、本当に気になるんだけど…」


問わず語りに言いながら、手の平に感じている小鉄の小さくて柔らかな頭を親指でそっと撫でる。


「まあ、小鉄の役に立ってるなら嬉しいよ。あたしはずっと小鉄に救われてきたからね。恩返し出来るなら何よりだ」


小鉄はあたしの手首を抱いたまま、嬉しそうに喉を鳴らす。


「…なあ、小鉄。あのナマコみたいなの、また見せては貰えないかな?」


もう一度、あの歌を聞かせてみたい。どんな反応があるのかを見たい。


「それは、むり。あのくうかんには、くろぶちのもってる かぎ ないと、はいれないの。おたがいに、かんりするところ ぶんたんしてる」


「小鉄…あんた…」


あたしは幾分かの呆れと、ちょっとした意地悪を込めた声で言う。


「…結構いろいろ教えてくれてるけど…良いのかい?」


一瞬、ピッとしっぽを膨らませたが くねくねと揺らして何となく誤魔化す小鉄。なんて愛おしいんだか。そこで、笑いを抑えきれなくなってしまい 更に軽いノリで言ってみた。


「そこまで言っちゃったんだから、いっその事ぜーんぶ白状しちゃわないかい?あんたたちの事とかもさ!」


「…ばぁちゃん…」


ムスーっと拗ねて見せる小鉄に思わず吹き出してしまった。おかげで残っていた痛みも薄らいでくれたよ。

あたしだって本気で聞いたわけじゃないけどね。うん…でも、半分くらい…もうちょっと…本気だったけど…。でもさ。聞き出したいのは山々だけどさ、小鉄が困るのも嫌だし…。結局、笑って撫で回して うやむやにしてしまった…。


あたしたちは暫く一緒にゴロゴロして、遅い昼飯を食べた。

小鉄曰く、暫くはナマコにくろぶちが付いているはずだから レベル5は出ないそうだ。早い所、決着を付けたいんだけどねぇ…。


と、言う事で!

何もない夜をボーッと過ごすのも勿体ないんで、あたしは何時ものように魔法少女に変身して夜の見回りに出た。”マモノ”の出ない日は町も平常運転で、さすがに出歩く者はいないが夜半近くまで灯りの漏れている家がある。そんな町中を上から見下ろしつつ移動して行くと、同じように変身して大きな木の天辺に座り ポケッとしているカナコを見つけた。

あたしが手を振ると気が付いて手招きしてきたんで、遠慮なく隣に座った。


「こんな所で、何考えてたんだい?」


「ん~。”マモノ”が居ない時は灯りが点いてるから、何か落ち着くなぁって」


いつものカナコからは想像できない、妙に沈んだ表情と声に思わず顔を覗き込んでしまった。あたしをチラッと見て、何も言わずに また街の灯りを見下ろすカナコ。


「…タエちゃんさ、命のロウソクの話って知ってる?」


ぼそっと呟くような突然の質問に、少し考えてから答える。


「あまり覚えていないんだが…。確か、生きているモノには それぞれ一本のロウソクが割り当てられていて ソレが燃え尽きると寿命になるって話だったと思ったけど…」


「そう、それ。あたしね、ずーっと、長い事ロウソクを見てたの。だから、今の状態に不安になると こうして灯りを見に来るの」


単なる比喩なのか、本当にそんな場所が存在しているのか…カナコの表情からは何も読めない。いつもの幼い感じとは異なり、年経た老人のような目をしている。

…って、あたしもそうなんだし。カナコだって実は年寄りなのかもだしね!なんて、何となく勝手に仲間認定してしまったり。


「…ゆっくりとね…細く小さくなって消える炎と…突然 掻き消される炎があって…。短いのも長いのもあった…。あたし…あたしたちは…アカネは…どっちなのかなって考え出したら怖くなってさ。それで…ここに来た…」


…本当に辛うじて、聞こえるか聞こえないかの声で話すカナコ。


「…アカネは、死んでないと思うよ。あの子は最後の最後に元からの望みを捨てたんだ。厳しいけど ずっと心の内に秘められていた 新たな希望を選んだからね」


カナコが不思議そうにあたしを見る。


「なんで、そう思うの…?」


「アカネの無茶ぶりな魔法に巻き込まれたからね!」


「なに、それ」


カナコが、泣きそうな笑顔で返してきた。あたしも笑って…まぁ、見えないけどさ…こういう時は、言葉よりも人の温もりの方が安心すると思ってカナコの頭を撫でる。ふにゃっと口元を緩めたカナコは、あたしに凭れて そのまま じっと町を見ている。

そうしている間に、一つ、また一つと灯りが消えていく。パッと見た灯りの数が10ほどになった時、カナコは「もう帰らなきゃ…」と あたしから離れてバイバイと手を振った。あたしも手を振って答えてから立ち上がる。


「…なんで、ミミが居なかったんだろうねぇ…。な、小鉄?」


何故かコッソリと隠れていた小鉄に問いかける。気が付いていないと思っていたのか、ピクンッと反応した小鉄が ゆっくりと顔を出した。


「…ばぁちゃんのいう、マスコットたちも それぞれに やること ぶんたん ある。ミミも きなこも うごけるときに うごく」


「ふうん…」


あたしは近付いてきた小鉄を抱き上げて、カナコが飛んで行った方を見やる。

カナコの目は、哀しみに溢れていて…ひどく切ない決意の様なモノも感じられた。


命のロウソク…


あの子は、ずっとあんな目で消えゆくロウソクの炎を見ていたんだろうか…。

何故か、カナコには妙なシンパシーを感じているのに気が付いて苦笑する。もしかしたら、本当にあたしと同じだったりして…なんて一瞬…ホンの一瞬思ったけどさ。カナコ、ウチに来ると変身解いてるよなぁ…って…はあ…。


「うし!まあいいや!帰ろうか!」


気持ちが落ち込んできたあたしは小鉄を肩に乗せると大きく飛んだ。風を切る音と冷たい夜気が気持ち良い。


「…ばぁちゃん…ずっと、いっしょに、いたいな…」


「…あたしもだよ!」


何故か、鼻の奥がツンとして涙が出そうになった…。きっと、この冷たい風のせい…。たぶん、ね…。


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